二部作連続公開で完結となる映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』(絶賛上映中!)より、リン/グリード役の渡邊圭祐さんの撮り下ろしインタビューをお届けします。
連載開始20周年新プロジェクトとして発表された実写完結編二部作は、エドとアル兄弟の物語を、原作の最終話まで映像化することにこだわった国家錬金術師の抹殺を誓う男スカーとの対決を描く『復讐者スカー』と、国家を揺るがす巨大な陰謀に導かれ物語の壮大なラストを描く『最後の錬成』(6月24日より上映中!)で完結を迎えます。
『復讐者スカー』からリン役を演じ、『最後の錬成』ではホムンクルスのグリードも演じ分けた渡邊圭祐さんに撮影エピソードや共演者の印象などお話を伺いました。
――ご自身も原作ファンでリン推しとのことですが、リン役のお話をいただいたときのお気持ちは?
渡邊:それはもう単純に「いいんですか!?」となりました。「もちろんやらせていただきます」と言って他のキャストの方を見たときに、もう一回「いいんですか!?」と言ってしまいましたました(笑)。あまりにも自分の小さい頃から見ている方たちばかりだったので。もちろん1作目に出演されているキャストさんは知っていましたけど、「いいんですか!?」という感覚が強かったです。
――錚々たる方々過ぎる、というのはありますよね(笑)。
渡邊:ここに名前を連ねるのか、という喜びみたいなものがありました。やっぱりまだどうしても素人臭さみたいな感覚は抜けないので。
――そうなのですね! では撮影現場でも「うわあ!」と物怖じしてしまうようなことはあったのでしょうか。それこそ、舘ひろしさんと対峙するシーンも多かったので。
渡邊:舘さんは、発するエネルギーというか、オーラがもうすごくて。あんまり「うわ、誰々だ!」となるほうではないんですけど、舘さんはなってしまいました、気圧されました。
撮影現場って初めましての人がたくさん居て、僕は誰かと喋っていないと不安になってしまうタイプなんですけど、舘さんは必要最低限しかお話しにならないので、そこもまたいいな、と思いながら。僕は僕で空回りしていた気がします(笑)。
――舘さんに話しかけに行ったりはされていないんですか?
渡邊:あまりしていないです。僕はもう眺めていよう、と思って(笑)。
――改めて、完成した作品をご覧になった印象は?
渡邊:面白かったです。<復讐者スカー>よりも、最後に向けてそれぞれ全員のエピソードが最後に向かっていく感じがすごく現れていたし、全員の決意みたいなものがしっかりと見て取れたので良かったなと思いました。
――撮影していたときと印象が変わった部分や、こうなったんだ!という驚きなどはありましたか?
渡邊:<復讐者スカー>のときにやっていたリンという役から、今作ではホムンクルスのグリードに変わって、エドたちの物語にあまり関与していなかったというのもあり、シンプルに現場で見ていなかった部分が多かったので、内野聖陽さんがやられていた何役もの映像など、「面白いな」と思いながら観させていただきました。
――原作もお好きだということですが、実写の映像で物語ラストまで描かれたものを観ていかがですか?
渡邊:やっぱり実写化っていいな、と思いました。もちろん反対派の方もいらっしゃると思うんですけど、漫画からアニメになって、そして生身の人間がやるからこそ出る生々しさだったり、そういうところの良さが実写にはあると思うので。それぞれのキャラクターの感情がちゃんと動いていく様がしっかりと見られたので面白かったです。
――人が演じるからこその表情や熱量がありますよね。完成映像をご覧になって、撮影当時の気持ちなど蘇りましたか?
渡邊:今作はグリードをメインに演じていたのですが、懐かしい気持ちになりました。<復讐者スカー>を観たときとはまた違った、「グリード楽しかったな!」という気持ちも蘇りましたね。
――グリードを演じてみて、楽しかったところ、難しかったところは?
渡邊:僕はまだ、純粋にいろんな役をできることが楽しいなと思える段階なので、この1つの作品で2役できるという喜びはもちろんありました。舘さんと対峙するシーンがあるというのが<復讐者スカー>から一貫してあったのですが、前作ではリンとして刀を交える構図だったのが、グリードになった今作では完全に素手での戦闘になるので、そこの間合いの測り方は難しかったです。殴りに行くわけでもなく、貫きに行っているので、殴っているときよりも相手の懐に入っていなければいけない。その分、奥に奥にとなって、そうすれば自ずと危険も多くなるので難しかったです。
――実際にヒヤッとする、少し危険を感じる場面もあったのですか?
渡邊:安全対策が第一の現場でした(笑)。でも、ブラッドレイに僕が背負投されて橋から落ちるというシーンを撮影するときに、背景はCGではあるんですけど実際にぶら下がって、舘さんが僕の下にいらっしゃって、みたいな感じで。もちろん片腕で舘さんを支えるなんてことは僕は出来ないので、舘さんは何かに乗った状態だったんですけど、そのシーンが一番大変でした。僕の肩が外れるんじゃないかな、とヒヤッとした部分ですね(笑)。
――ほぼグリーンバックの撮影で、ご自分でテンションや気持ちを世界観に持っていくためにやっていたことはありますか?
渡邊:元々原作がすごく好きというのもありましたし、主演の山田涼介くんも同い年で。おそらく同い年の人とメインで共演する経験が初めてだったので、純粋に撮影自体は楽しくモチベーションは保つことが出来ました。でも、撮影期間も長かったので、そのモチベーションを維持するために、毎回撮るシーンやその前後を前日にはきちんとアニメや漫画で見返したりしていました。そうやってリンやグリードの気持ちを前日から維持しようと心がけていました。
――現場では、山田さんとダンスの動画を観て一緒に踊られたとか?
渡邊:僕がやらされていたというだけです(笑)。去年の誕生日のときに連絡をくれたんですけど、「変わらずダンスを踊るナベちゃんでいてね」とメッセージが来ました。
――渡邊さんは元々ダンスはお得意なのですか?
渡邊:全然出来ないです。当時すごく流行っている曲があって、その煽りを受けて踊らされました(笑)。
――<復讐者スカー>では本郷奏多さんとも共演シーンが多かったですが、本郷さんのインタビューで渡邊さんと同郷という会話をした気がすると仰っていました。
渡邊:そうですね、宮城県の話をさせてもらいました。お互い仙台市出身ということで。でも、本郷さんは早めに宮城から離れていらっしゃるようなので、そこまで話は広がっていなかったです(笑)。
――同じようなことを本郷さんも仰っていました(笑)。
渡邊:僕が仙台に住みすぎているというのもあるんですけど、大学に入ってようやくお酒を飲みだしたりして広がりが見えてくると思うので。
――本郷さんの印象は?
渡邊:独特な空気を持っている方だなと思いました。自分のペースもしっかりとあって。でも、話すとすごいユニークな方ですし、面白い人だなという印象です。だから、仲良くなろうと思って、たぶん僕はめちゃくちゃイジっていたんですよ。
――え!?
渡邊:薄くですけどね? 薄くイジっていたら、それがバレて「俺のことめちゃくちゃイジってるよね?」って真顔で言われたのがちょっと怖かったのは覚えています(笑)。
――山田さんや本郷さんと共演されて影響を受けた部分はありますか? 見ていてすごいと感じた部分など。
渡邊:もちろん本郷さんはエンヴィーでしかないし、山田さんはエドでしかない。それはやっぱり素晴らしいなと思いました。控室とかではなく、撮影現場でカメラの前に立ったときの温度の持って行き方みたいなものは勉強になったなと思います。
――原作ファンということでご自身が思うキャラクター像はあったと思いますが、振る舞いなどで心がけたことは?
渡邊:リンの部分では、すごく抜けてはいるんですけど、王の資質を持った人でもあるので、そういった品は出るように心がけてはいました。
――グリードでは表情もガラッと変わったと感じましたが、グリードで意識した部分は?
渡邊:なるべくリンとの差も出るように、体勢を低く居ようとしました。下から目線がいくように意識していた気がします。
――リンとグリードはどちらも意思が強いキャラクターだと思いますが、共感できる部分はありましたか?
渡邊:リンもグリードも目的のために手段は選ばないところは、共感というよりは大事な感覚だなと思いました。もちろん、全部を捨てて行動するというのが許される時代ではないと思うので、そことの折り合いをつけながら、その感覚は自分の中に持っていなくてはいけない競争心だな、と共感していました。
――自分と似ているというよりは憧れのような?
渡邊:憧れの感覚のほうが強いですね。先日、人生で初めて手相を見ていただいたんですけど、見た瞬間に「協調性の塊だね」と言われて、わりとそこの競争心などの感覚が欠如しているのかなと思うので、それが今欲しいなと思っています。ゆとり世代なので(笑)。
――実際にご自身でも協調性の塊だと思うことが多いですか?
渡邊:結構多いですね。人に合わせがちなところはどうしてもあって、仲良くなればなるほど我を出す瞬間が減ってくるので、そこで我を突き通す意思みたいなものももっと顕著に表していかなきゃなと思っています。
――撮影現場にトレーニングマシーンが置いてあったそうですが、渡邊さんも使われたのでしょうか?
渡邊:これは言い訳じゃないんですけど(笑)、僕は極度の汗っかきなのと、グリードのときは顔に特徴的なメイクもしていたので汗で流れるといけないかな、と思って僕は使うのは控えていました。誰でも使って良い状況ではあったんですけど、筋肉に真摯な方が多かったので。
特に今作を観ていただくと、山田くんとかは「こんなに肩に筋肉あるの!?」というくらい、すごいので。それに心が打ち砕かれて自分を追いやる意思を削がれたと思っていただければ(笑)。
――渡邊さんもアクションシーンがたくさんありましたが、体を鍛えたりされたのですか?
渡邊:基本的に肌が出ている役ではあったので、撮影時のエピソードとして話せればいいかなと思って、一応鍛えたんです。体重も10kgくらいは上げたんですけど、周りがすごすぎて僕のことは言うのをやめました(笑)。
――原作ファンということで、ハガレンの世界観に入って撮影現場で感じたことは?
渡邊:撮影のときはどちらかというと役に必死というか、自分の責務を全うするじゃないですけど、そっちの感覚のほうが強かったので、仕上がったものを観て「おお!ハガレンじゃん!」という、その世界観に自分が居る喜びはありました。
――実写ハガレンはキャスティング面でも素晴らしすぎて、キャラ再現度の高さに感動しました。
渡邊:それぞれとてもハマっているというか、“ハマらせている”という言い方がきっと正しいと思うんですけど、素晴らしいなと原作ファンから見ても思いました。
――原作ファンとして観ていて、良かったと感じたキャラや、注目して観てほしいキャラは?
渡邊:<最後の錬成>だと完全に僕は内野聖陽さんです。3役をやられていて、度肝を抜かれたというか、改めてとんでもない方だなと。
あとは山田くんの筋肉。肩の筋肉ですかね!
――あれはすごすぎて、山田さんの実際の筋肉なのか、それともCGでそう見せているのか?と考えてしまいました。
渡邊:直接見ていてすごかったです。でも映像を観たら僕も「CGかな?」と思うくらいでした。けれど、たぶんあれは山田くん自身の体だと思います、相当追い込んでいたので。
――山田さんは現場で皆さんと話さずにトレーニングされていた感じですか?
渡邊:いや、全然! どちらかというと、山田くんは現場でトレーニングしていないほうだと思います。話しながらもずっと腕はダンベルを持ち上げたりしていた気はしますけど、筋肉が見えるシーンの直前に一時的なパンプアップを求めてやっていたんだと思います。現場ではそんなにやる時間もないので、皆さん本腰を入れてトレーニングをやっているわけではないんですけど、撮影直前にちょっとでも膨らまして出るという目的でやっていました。
――では、グリードが司るのは<強欲>ですが、渡邊さんご自身が今手に入れたいモノを教えてください!
渡邊:海沿いのマイホームですね。なんかそういう生活いいなと思って。できれば仙台で。
――本当に仙台お好きなんですね。
渡邊:地元ラバーなので。
――夢が叶うことを願っています! 素敵なお話をありがとうございました!
[撮影:周二郎]
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作品情報
国家錬金術師ばかりを狙った連続殺人事件が起きる中央(セントラル)を訪れたエドとアル。犯人は正体不明ながら、額に十字傷を持つことから”傷の男(スカー)”と呼ばれていた。兄弟も命を狙われ応戦するものの、圧倒的な強さの前に機械鎧(オートメイル)を破壊され、絶体絶命となる。果たして二人はこの危機を乗り越え、元の身体を取り戻すことができるのだろうか。隠されたこの国の秘密と”約束の日”、そしてエドとアルの父親の過去。幾重にも重なる謎と真実が解き明かされ、物語は圧巻のフィナーレへ。最後に兄弟が出した答えとは…?
原作の最終話まで描き切った”完結編”―伝説は二部作で完結する。
『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』
原作:「鋼の錬金術師」荒川 弘(「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
監督:曽利文彦 脚本:曽利文彦 宮本武史
出演:山田涼介 本田 翼 ディーン・フジオカ
蓮佛美沙子 本郷奏多 / 黒島結菜 渡邊圭祐
寺田 心 内山信二 大貫勇輔 ロン・モンロウ 水石亜飛夢
奥貫 薫 高橋 努 堀内敬子 丸山智己 遼河はるひ 平岡祐太
山田裕貴 麿 赤兒 大和田伸也
舘ひろし(特別出演)
藤木直人 / 山本耕史 / 筧 利夫
杉本哲太 栗山千明 風吹ジュン
佐藤隆太 仲間由紀恵 ・ 新田真剣佑
内野聖陽
製作:映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会 企画・制作プロダクション:OXYBOT 配給:ワーナー・ブラザース映画
オフィシャルサイト:hagarenmovie.jp オフィシャルTwitter:@hagarenmovie #ハガレン完結編
(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会