【人類を恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然、死んだ。この死体、どうする?】
2022年2月公開予定の映画『大怪獣のあとしまつ』は、従来あまり語られることのなかった、怪獣が死んだ「その後」のストーリーを描いた作品となっています。
あまりにも巨大な怪獣の死体を、そもそも処理するべきなのか? 処理するなら誰が? 一体どうやって……? そんな議論を繰り返す政府関係者、そして死体処理(あとしまつ)という極秘ミッションを任される特務隊所属の主人公・帯刀アラタ(山田涼介)。
さまざまな思惑に振り回されながら、はたしてアラタは無事に「大怪獣のあとしまつ」を成功できるのか――。これまでに無い切り口で語られる本作は、SNSを中心として、公開前から非常に大きな反響を呼んでいます。
スペシャリストがリアルに“あとしまつプラン”を考えてみた
大怪獣の皮膚模型を囲んでスペシャリストが集結!
映画本編では首相直轄組織である「特務隊」や政府管轄の「国防軍」がさまざまな策を講じますが、今回は特別編として一般人である私たちも『大怪獣のあとしまつ』に挑戦したいと思います。
我こそはと立ち上がったのは地理・無駄・狩猟・大喜利といった、癖の強い専門家たち。それぞれの知見を結集したら、一体どのような結末を迎えるでしょうか?
ここに、もうひとつの『大怪獣のあとしまつ』が幕を開ける――!
<登場人物>
・地理人(ちりじん) 「空想地図の専門家」
株式会社地理人研究所 代表。7歳から実在しない都市の地図「空想地図」を30年以上描き続ける、空想地図作家。作家活動の傍ら、テレビドラマやゲーム地理監修や地図制作にも携わるなど、幅広い活躍を見せる。
・藤原 麻里菜(ふじわら まりな) 「無駄づくりの専門家」
コンテンツクリエイター、文筆家。不必要なものを作り上げる「無駄づくり」のプロフェッショナル。これまで200個以上の「無駄づくり」を世に生み出し、SNSの総フォロワー数は45万人を超える。
・佐野 琢哉(さの たくや) 「狩猟&調理の専門家」
山梨県でジビエ居酒屋「さの屋」を経営。猟師の資格を取得しており、自らの手で鹿や猪の狩猟から血抜き、解体、調理まで1人でこなす。生き物の取扱い方法、美味しい食べ方のスペシャリスト。今回はリモートでの参加。
・店長(てんちょう) 「大喜利の専門家」
WEBライター。学生時代から大喜利を始め、大喜利の全国大会「天下一武道会」では準優勝の経験あり。大喜利のやり過ぎで、大学を2回留年した。本記事では司会を務める。
国有地に倒れていてラッキー!?
店長:本日はよろしくお願いします。まずは、前提をおさらいしましょう。今回のテーマである大怪獣は「貴重な環境資源であり今後の「希望」に繋がってほしい」という思いから「希望」と名付けられています。
店長:このように「希望」は一級河川の上で、横たわるようにして死んでいます。全長は380m、これは東京ドームの約1.5倍の長さで、人間が歩くと5分かかります。また、倒れた状態での高さは155m。通天閣の約1.5倍の高さです。紛れもなく「超」がつくほどのビッグサイズであると言えます。
みなさんにはこれをどのように「あとしまつ」するのが良いか、思う存分議論していただきます。
地理:ほぉ……。
藤原:デカいですね。
佐野:なるほど。
※4人とも映画『大怪獣のあとしまつ』については予告編の情報など、最低限の知識しか持っていない状態です。
店長:まず私の意見ですが、ずっと川の上で死なれてても正直困りますよね。近隣住民たちは避難しているので、一刻も早く住んでいた場所に戻りたいと思うのが筋でしょう。とりあえず内陸に運んで、燃やすなり埋めるなりするのが良いのではないでしょうか?
地理:いや、これだけ大きなものを運ぶのは難しいですよ。そもそも大怪獣が歩いてこの場所にたどり着いたのなら、その道中は大変なことになっているはずです。
藤原:予告編では高層ビルが燃えてましたし、どうやら大怪獣は都心から移動してきたようですね。
店長:じゃあ、都心やインフラは壊滅状態かもしれないな……。
地理:ちなみに、これって日本の利根川近辺にそっくりですけど日本ではないんですよね?
店長:そうですね、「日本に似たパラレルワールド」という設定です。
(河川周辺の土地について語る地理人さん)
地理:なるほど。だとしても大きな川沿いは古くから物流の要なので、古くから栄えた町も多いはずです。日本でいう成田空港も、おそらく大怪獣が踏み潰してるでしょうし。国内最大の空港がボコボコにされて、大混乱が起きているでしょうね。
佐野:となると、海外からの物資もすぐには届かないだろうね。
藤原:そんな状態で、こんな大きなものをどう運んでいいものやら……。
店長:うーーん。
地理:でも、一級河川の上で倒れていたのはラッキーでしたね。
店長:と言いますと?
地理:私有地じゃないってことです。誰かの土地の上にこいつが倒れちゃうと、どうにもできない。日本でいう利根川の辺りって、田畑や農家がとても多いんです。それなのに、こんなわけの分からないものの体液が土に入ったら、作物も育たなくなるかもしれませんよね。そうなると補償の問題になって、かなり揉めると思います。
店長:なるほど……!
※住民たちからの声も想定済み
地理:河川敷なら国有地なので、そういう問題は出てきません。洪水を見越して、宅地にすることも出来ないんです。元々何も作れない土地なので、大怪獣を破棄するにはベストスポットと言えるかもしれませんね。
店長:えーーーーーーー! このまま放置するのが良いってことですか!?
藤原:さすがに地域住民は納得しないでしょうし、大怪獣の体液が河口に流れたら漁業に影響が出るかもしれませんね。
地理:たしかに、それはそれで補償問題になっちゃうか……難しいな。
(ここでジビエ猟師、佐野さんが口を開く)
佐野:この大きさのものを運ぶなら、小さな肉に解体して運ぶしかないよ。大怪獣といっても、中の肉はたぶん切れると思う。
店長:え、怪獣って切れるんですか!
佐野:うん、肉はね! でも、問題は表皮だね。ゾウやキリンみたいな大型動物でも、ナイフが皮を通りさえすれば解体することは出来る。それは怪獣でも同じだと思うよ。でも、この大怪獣はさすがに刃が皮膚を通らなそうだね……。どうすれば良いだろう。
店長:これだけ大きいとなると、刃物じゃなくて機械などが必要かもしれませんね。
地理:そういえば大怪獣が倒れてる海側は、日本なら工業地帯が広がってますね。
<大怪獣を小さく切り、ダンプカーで運搬する>
佐野:あ、工業地帯が近いならいろんな道具がありそうだね! 使えそうなものを使っちゃおう! レーザーメスとか、石を水圧で切るような機械があれば、大怪獣の皮でも切れるかも。ダンプカーで運べるくらい、小さな肉にしちゃいたいね。
藤原:骨は相当太いと思いますけど、それも切れますか?
佐野:いや、骨は切らなくて平気。イノシシやシカを解体する時も、骨は関節を外すだけだよ。肉は剥がしちゃえばいいからね。
店長:さすが、本職の猟師……!
大怪獣の内臓を引っ張り出そう
とはいえ、まだまだ課題は多い。
地理:いずれにせよ、この怪獣の除去には年単位の時間がかかるでしょうね。with大怪獣のニューノーマル(新しい常態)を意識しなきゃ。
佐野:それなら、まず内臓だけは引っ張りだしたほうがいいね。鹿にしても猪にしても、内臓は先に取り除いちゃうんですよ。死臭がすごいから。
藤原:死臭って嗅いだことないんですけど、そんなに強いんですか?
佐野:強いなんてもんじゃないよ! どっかで死んでたら、森の中で20~30m離れてても分かる。
店長:おげげ。
佐野:死臭って普通は嗅いだことがないから、最初は「変な臭いがする」って感じると思う。近付いてはじめて「うわ、臭い!」ってなるよ。鹿や猪でそれだから、大怪獣にもなると尋常じゃないだろうね。ただ、これも川の上で死んでるのはラッキーだね!
※「川の上」は猟師の佐野さんも注目している模様。
店長:猟師の視点から見てもラッキーなんですか?
佐野:そうそう、川で死んでるなら腐敗はそんなに早くないと思うよ。獲物の体温が下がるから。
地理:大怪獣のことを「獲物」って呼ぶのも、なかなかですね。
佐野:実際に、仕留めた獲物を川に浸けておく猟師もいるからね! 内臓を取り除けば微生物による発酵が抑えられて、さらに体温が下がりやすくなるし。肉を剥がすのは、その後かな。
藤原:気温や湿度によっても、腐敗のスピードが変わりそうですね。映画の登場人物の服装を見るに、春か秋ぐらいかと。
佐野:秋から冬にかけてなら、1か月は腐らないと思うよ。その間に、最低でも胃袋から下は取り除きたいな。肺と心臓は「中身」が発酵したりしないから、後回しでも大丈夫。
地理:先に「中身」を取り出して、輸送してしまうのが良さそうですね。
佐野:良いね。まず胃袋にどうにか穴を空けて、発酵したガスによる胃袋の膨張を防ぐ。そこから機械を差し込んで、ピストン輸送する。このサイズ感なら、20日間程度で胃袋を空にできるんじゃないかな。
大怪獣の蒸し焼き
佐野:そもそも、この大怪獣って毛は生えてないよね? じゃあ皮を剥がずに、そのまま蒸し焼きにしても良いかも。
店長:ビジュアル的には、丸ごと火葬しちゃうような感じですかね。
佐野:そうそう、食べられるくらい柔らかくなるまで蒸しちゃう。深さ70mぐらいの穴を重機で掘って、ダッチオーブンみたいにこいつを突っ込むのよ。あとはキャンプファイヤーみたいに大きな火を焚いて、体の上からも藁とかで火を焚く。
藤原:それ、私も良いと思います! 移動させるよりは効率的な感じがします。
(効率の良さを語る無駄づくりの専門家、藤原さん)
地理:河川敷だと建物がなく、堤防で仕切られているので周辺地域に延焼しないので、安全だと思います。
佐野:ゾウみたいな皮膚だと仮定すれば、表面の皮膚だけ炭みたいに焦げて、肉は焼ける。火が通れば肉は柔らかくなるから、あとはチェーンソーで切れるかもね!
店長:そこまでいくと、かなり処理しやすそうですね! ちなみに蒸し焼きにした肉を食べるとして、佐野さんならどう調理しますか?
佐野:きっとこの怪獣は赤身だろうから、竜田揚げとか美味しいんじゃないかな。
店長:普通に美味しそうかも。何人前ぐらい作れそうですか?
<1,000万食分の「大怪獣の竜田揚げ」>
佐野:やってみないと分からないけど都民全員、1口は食べれるんじゃないかな。1,000万人分の竜田揚げができるね。
藤原:「怪獣の肉です」って言われたら、どんなにマズくても1回は食べたいですよね。
店長:美味しければ、大怪獣が何度来ても「また来た! 嬉しい!」ってなるかもですね。
地理:そうかぁ……?
(ここで、ある問題が発覚。)
佐野:あ、でも川の中に倒れてたら火が付けられないかも。
地理:え! それは困りましたね、焼いて埋めるのだけが望みだったのに。
藤原:竜田揚げが食べられないのは問題ですね。
<傷口から電気を流し、大怪獣の肉を柔らかくする>
佐野:怪獣の死体には傷口があるから、そこから鉄の棒をいっぱい刺して電気を流せば、肉が焼けるかも。イメージとしては、角煮がホロホロと崩れる感じ。
地理:工場地帯が近いのは、ここでもメリットになりそうですね。電気を持ってくるのは、困らないはずです。
佐野:たしかに!
店長:ちなみに川に電気流れて、感電したりしないですか?
佐野:川自体に電極があるわけじゃないから大丈夫!大怪獣の体に金属の部分があれば放電しちゃうけど、どうやらそういう生物でもなさそうだし。実際、猪もバッテリーからバチッと電気を流して、失神させたりするよ。
大怪獣の臭いのシーシャBar
大詰めが近付き、議論はさらに白熱してゆく。
藤原:大怪獣のお肉はみんなで食べるとして、跡地は観光地に出来ないですかね。「大怪獣跡パーク」みたいな名前を付けて。骨は残っちゃいますし、補強して見学できるような公園にしたい。
地理:負の記憶だから、骨も排除してくれっていう住民の声もあるでしょうけど。「人間のちっぽけさを考える哲学的な公園」みたいにするのもありですね。入場料は……物好きな人向けの価格としたら、4,000円とかですかね。
店長:珍スポットとして、変わったもの好きな人に来てもらいましょう。
佐野:大怪獣の全長が380mなら、背骨1本で長さ100mはあるんじゃないかな。ドーンと公園の中央に飾ったらかっこいいかも!
店長:大怪獣の骨格標本! 見たい!
佐野:ちなみに骨を一番キレイに取る方法は、煮ることなんだよね。沸かしたお湯に薬品を入れて煮ると、たんぱく質が溶けて骨格だけ残るの。もしも骨をキレイな状態で残したいなら、重機を使わないほうがいい。
地理:そういう意味でも、やっぱり電極で焼いて肉を剥がすのが良さそうですね。
藤原:そういえばさっき、臭いの話が出ましたよね。くさいにおいって敬遠されがちですけど、1回は嗅いでみたいんですよね。どうせ公園にするなら、そのくさいにおいを嗅げるようなアトラクションも考えたいですね。
店長:臭いを嗅ぐアトラクション……?
藤原:たとえば耳鼻科にある吸引機みたいな装置を作って、直接嗅ぐのはどうでしょうか。怪獣の臭いを再現したオイルも作って、それを嗅げるシーシャBarを作りたいです。
地理:げー!! 近付きたくないぐらいくさいんですよ。そんなの直接嗅いだら死ぬんじゃないですか。
佐野:ドMだね!
<大怪獣の骨や皮を使った、家具や装飾品たち>
佐野:それなら大怪獣の骨とか皮で、シーシャBarの椅子とかテーブルも作れそうだね。想像も付かないぐらいデカい骨だろうから、削り出したら50人掛けぐらいの椅子になるんじゃない。
地理:大きさ的に、大怪獣の歯はそのまま椅子にできそうですね。
佐野:それ、かっこいい! あと、一番取り合いになるのは爪だろうね。熊の爪って魔除けになるとかで、すごい人気あるのよ。大怪獣の爪も、チョーカーにして魔除けになるとか、なにかしら効用をつければ売れそう!
店長:どんどんビジネスの構想が膨らんできましたね。
藤原:海外の人たちも、怪獣で作ったアクセサリーの売上が一部支援に繋がるなら買いやすそうです。あと、大怪獣の臭いの香水も作りたいですね。ドンキとかで「あの怪獣の臭い」ってネーミングで売りたい。
佐野:それを付けたおじさんが「今夜は怪獣になっちゃうぞ~^^」とか言ったりして。
店長:平和だけど嫌な世界線だな。
藤原:遠くて来れない人のために、都内や他の地方都市にもシーシャBarを出したいですね。あと、せっかくなら大怪獣の皮も有効活用したいな。
佐野:大怪獣の皮はごつごつしてるから、壁に貼れば登れるんじゃないかな?
<においはシーシャBar、皮はボルダリングジムとして再利用>
地理:シーシャBarだけじゃなくて、ボルダリングジムも簡単に作れそうです。
(ここまで出た意見を総ざらいする)
店長:では最後に、ここまでの議論を整理してみましょうか。まとめると、
これが我々流の「大怪獣のあとしまつ」だ!
店長:まずは矢倉を組み、傷口からピストン輸送で「中身」を運び出して、内臓を取り除く。次に電流が流れる棒を内側に数百本ぶっ刺して、電気の力で肉を焼いて骨から剥がす。お肉は竜田揚げが美味しそうで、1,000万人くらいに食べてもらう。残った骨は加工して家具にしたり、アクセサリーとして販売。大怪獣の臭いはオイルで再現して、いつでも嗅げるシーシャBarをオープンする。最後に、余った皮もボルダリングジムとして有効活用する。
店長:といったところでしょうか。
佐野:良いね!
藤原:最高!
地理:いやあ、見事解決ですね。
終わりに
こうして、大白熱のなか幕を閉じた「大怪獣のあとしまつ」特別会議。後日、藤原さんから1本の動画が送られてきました。
動画:【大怪獣のあとしまつ】対談企画 無駄づくり発明家・藤原 麻里菜さんのくさシーシャ
https://youtu.be/Wi6JiJ19UeA
何故か分かりませんが、めちゃくちゃ嬉しそうな藤原さん。こんな風に大怪獣のにおいを嗅いで、みんなで笑い合える世界になると良いですね。
さて、今回はこのような結末を迎えた『大怪獣のあとしまつ』。はたして本編では、どのような展開となったのでしょうか?
気になる方は2022年2月4日(金)から映画『大怪獣のあとしまつ』が全国ロードショーされます。
暴れ狂う大怪獣に、逃げ惑う人々。突如、ヒーローが現れて世界を救う――。
それは、子供の頃に誰もが憧れた、特撮映画でお決まりの展開。しかし、倒された怪獣の死体処理は、果たしてどうなっていたのか……?
そんな 「誰もが知る“巨大怪獣”の、誰も知らない“死んだ後”の物語」を史上初めて描いた、映画『大怪獣のあとしまつ』。主演にはHey! Say! JUMPの山田涼介さん、ヒロインに土屋太鳳さんを迎え、監督・脚本を「時効警察」シリーズなどで知られる三木聡氏が務めます。さらに怪獣造形を手掛けたのは、「平成ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズなどで知られる若狭新一氏。
今まで誰も見たことのない“空想特撮エンターテイメント”が誕生しました! ぜひ、劇場でご覧ください!
・映画『大怪獣のあとしまつ』本予告
https://youtu.be/B-mP3KydZ_4
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(執筆:店長、企画:面白法人カヤック・合同会社 別視点)