大ヒット上映中の『マトリックス レザレクションズ』。世界は未だにマトリックスに支配されたままだったのか? そして、ネオはマトリックスから人類を救う救世主ではなかったのか? 全世界待望の新作が話題沸騰中です。
1999年に公開された『マトリックス』から、映画の全てのシリーズで、キアヌ・リーブス演じるネオ(トーマス・A・アンダーソン)の日本語吹替を担当しているのが声優の小山力也さん。小山さんに『マトリックス』への想い、新作への感想などお話を伺いました。
ーー全ての作品でネオの日本語吹替を担当している小山力也さんにとって、『マトリックス』とはどんな存在ですか?
『マトリックス』は、僕が初めて劇場版の大作をやらせていただいた作品です。吹替のお仕事としては、『ER緊急救命室』というドラマぐらいしかほとんど経験がないところから始まって、たまたま大作である『マトリックス』という作品に呼んでいただいたので、「本当に自分でいいのか」という驚きと不安と喜びの感情がありました。またこうやって20年以上の時を経て新作をやらせていただいて、自分のキャリアとしては絶対に忘れられない作品です。僕の人生とリンクしている作品なので、また演じることが出来て本当にありがたいなと思っています。
ーー20年以上ぶりに新作が作られることも驚きですが、一作目を今観ても素晴らしいと思います。今も作品を見返すことはありますか?
時々観ます。まだ家はVHSが観られますからね(笑)。今でも新しさを感じますし、驚きばかりです。これから先何十年後に観ても、たぶん色あせないだろうなと感じる作品です。そういった作品に関わることができたので、その驚きと喜びは大きいですね。
ーー当時、映画という枠を越えて大変な社会現象になりましたが、小山さん自身も反響を感じていらっしゃいましたか?
業界の中では「小山さんがやっているんだ」みたいな感じで言われることもあって、「そうなんです、すみません」と言っていましたね(笑)。 映画自体が映像やアクションの素晴らしさに加えて、人間ドラマとしての良さがありましたし、問題提起が非常に大きかったですから、それも含めていろいろなご意見、ご感想を頂戴しました。
ーーネオというキャラクターについて、改めてどんな人物だなと思いますか?
素直な裏表のない、子供のような人だと思います。そのネオの子供みたいな不安が、自分自身のキャリアの少ない不安と重なって、良かったなと勝手に思っています。 キアヌさん自身もいろいろな作品で役柄を演じていらっしゃいますけど、外面を作りこんだりすることなく、自然に演じていらっしゃいますし、キアヌさん自身のピュアな魅力がとてもよく出ていますよね。そこが面白くもあり、可愛らしくもあり、微笑ましくもあり、素敵だなと思います。
ーー当時のアフレコを振り返って、印象的だったことはありますでしょうか。
よく覚えています。ディレクターさんはミキサー出身の方で、今もとても活躍なさっている方です。彼はものすごく音にこだわりがあって、丁寧に必要最小限の言葉で細かくアドバイスをいただきました。
あとは、トリニティー役の日野由利加さんの方が僕よりもキャリアが豊富なんですが、当時は励まし合ってやりましたね。主に僕が励まされていてばかりでしたけどね(笑)。自分なりに表現の拙いところにちょっと戸惑ったりすることはあって、「もっとこうできるのに」と思ったりもしましたけど、ディレクターさんからのアドバイスや日野さんからの励ましをもらって頑張ってやっていました。
ーーそれから22年の月日を経て、またネオを演じることになるとは、小山さんも驚かれたのではないでしょうか。
ビックリしました。最初はタイトルも知らされず「キアヌ・リーブスの長編映画で、キャスト候補に挙がっています」と聞かされていただけでした。そうやってお話をいただいても決まるまでは、あまり過度に期待をしないようにしているんです。昔は今よりも、もっとたくさんゴールデンタイムで映画作品のオンエアがありましたから「吹替は誰がやるんだろう?」とか、「お前にだけはやらせない」とか、色々なやり取りがありました(笑)。
そういうことがあって、あまり過度に期待しないようにしていたんですけど、後から「作品は『マトリックス』みたいです」とこっそり聞いて、「本当?! それは他の仕事のスケジュールを何とかしてね!」と伝えました(笑)。
ーーキアヌ・リーブス自身に変化があったと思いますが、小山さんご自身も役者として変化がありましたか?
色々な作品をやらせていただいて、「俳優さんを大事にしよう」という気持ちが深くなりました。人間ですから、我欲はあるんですが、一回一回の出会いを大事にしようということと、一回一回その俳優さんを見つめようということ。そうすると、その俳優さんを好きになりますし、好きになると、リハーサルの作業も楽しくなってきます。
ーー『マトリックス レザレクション』への率直な感想を教えていただけますでしょうか。
人間を信じなくてはいけないんだなと思いました。そういう意味もこめて、タイトルに「レザレクション(復活・再生)ズ」が入っているのかなと思うのですが、不安の多い未来に対して、「信じること」がテーマとして強く出ていると感じました。そういう意味では、この作品はエンターテインメントではあるんですが、それを越えたところで人の心に長く残るものであると思いました。
機械が仲間になっている所が印象的で、機械同士が戦うようになっているという設定も、とてもリアリティーを持って感じられますし、機械が敵になったり味方になったりすることはこれから現実に起こり得るような気がしますね。
ーー今回の作品では新キャラクターが登場しますが、その中で気になるキャラクターがいれば教えてください。
ニューリーダーのバッグスはとても魅力的ですね。彼女は強いし、かわいいし、賢いし、とても魅力的だなと思っています。「彼女にだったら、任せてみたい」と思いました。キアヌ自身も年を取って、僕も人生後半戦に入って、今回の映画では若いリーダーが活躍していますよね。新しいリーダーが登場するのは良いなと感じました。
ーーおっしゃっていただいた様に、キアヌもネオも年齢を重ね、迷いや苦しみや繊細な部分がよく表現されていたなと感じました。
『マトリックス レボリューションズ』で一区切りついたと思っていたら、現在進行形なんだというその驚きと焦りと不安はありますし、そこから再生するまでにかかる時間と人の繋がりを信じることができるまでの時間と葛藤とがありますよね。 作品はこれだけフィクションの世界であるにも関わらず、そういった人間の心の移り変わりが非常にリアルですので、そこにとても惹かれましたし、キアヌさんもそれを大事に演じていらっしゃると思いました。だからあえて、そんなにカッコ良く演じていません。
肉体は必ず老いていくものですし、どんなにカッコ良く決めようと思っていても、虚飾ははがれていくようなところがありますから、そういうところもあえてキアヌさんは素直に出していらっしゃる気がしますので、その辺が魅力に繋がっていると思います。
ーーキアヌ・リーブスの吹替をする時に意識していることはありますか?
キアヌさんの喜怒哀楽と、その時の瞬間の表情、そういうものを大事に、それをこちらで汚い日本語で潰さないようにということを考えます。本作で言えば、トリニティーを見た時の顔のアップの表情のちょっとした変化とか、自然なお芝居が上手な方なので。まるで子供のように思わず自然に出てしまった表情というか、そういう素直な部分を大切にしています。
ーー『マトリックス』は映画界に革命を起こしましたが、小山さんの声優生活において、革命的だった出来事はありますか?
昔、大先輩の滝口順平さんと収録をご一緒させていただいた時に、そのパワーにすごく驚かされ、感動したことをよく覚えています。大ベテランでいらっしゃるのに、いつもたくさんの作品をチェックされていて「あれを観たよ」と話しかけてくださったり。収録も、ディレクターのカットがかかっても止まらないんですね。ずっと演じ続けている。終わりと言われて終わるのではなく、自分の演技を止めることなく続けられていたあのパワフルなお姿を今でもとても尊敬しています。
ーー今日は素敵なお話をたくさんありがとうございました!
『マトリックス レザレクションズ』
大ヒット上映中!
原題:『THE MATRIX RESURRECTIONS』
監督:ラナ・ウォシャウスキー
出演:キアヌ・リーブス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット・スミス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、
プリヤンカ・チョープラー・ジョナス、ニール・パトリック・ハリス、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ、クリスティーナ・リッチ
オフィシャルサイト:matrix-movie.jp オフィシャルTwitter:@matrix_movieJP #マトリックス
本予告:https://youtu.be/8PwqzRR3Oo0
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