どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です!
元SMAPメンバーで相変わらずテレビで引っ張りだこの草彅剛さんが、ヴィンテージジーンズのコレクターであるのは有名な話。1本数十万円のレアなジーンズを数本持つという彼、さすが売れっ子アイドルです。
古着というと、何度も着倒された中古のボロキレ(失礼!)と思えなくもない僕なのですが、そこには厳しい評価基準があるといいます。
特にデニムに関しては年代、型式、色の落ち具合、タグの種類など、その厳密な取り扱いはまさに骨董品。
そんな古着業界は宝探しのようなものと言われますが、その宝の山を掘り当てれば、二束三文で買い付けたジーンズも目玉が飛び出すような値を付けた逸品にバケるのだとか。
ボロ儲けして笑いが止まらないときがあるものの、その実、消費者にはわからない苦労があるそうです。
今回は、本場アメリカに渡航して古着を大量に買い付けに行く古着ディーラーの高橋大吾さん(仮名/43歳)にその苦労と巻き込まれた事件のお話をお聞きしたいと思います。
叔父の影響で古着屋になる
丸野(以下、丸)「よろしくお願いします。古着ディーラーになったキッカケを教えてください」
高橋さん「叔父が古着屋をやっていまして。こう言ってはなんですが、叔父は自分の父親よりカッコいいって思わせる人だったんです。自分もやってみたいということを叔父に相談すると、“ウチの仕事を手伝って、仕入れの方法を勉強しろ、給料で開業資金を貯めろ”と言われました。それがキッカケです」
丸「なるほど。オシャレな叔父さんが……」
高橋さん「それからは、一緒にアメリカの買い付けに同行して、交渉の方法を学びました。事前にデニムのことは本なんかで予習しました。リーバイス501の歴史やヒップポケット、パッチ、ボタンフライ、タブのこだわりなんかは見極められましたね。初めて行った仕入れは、LAのローズボールで開催されていたスワップミート(フリマ)です。10万点以上の出展があるこの催しにはアメリカ全土からディーラーが集まります」
生まれて初めてアメリカの怖さを知る
丸「すごいですね~!」
高橋さん「普通なら商売としてブースを借りているディーラーは値引き交渉には辛いんですが、叔父はコネクションをしっかりと持っているらしく、リーバイス501“66”やポイントの高い505の中にまみれた革パッチのレアな501XXなんかが入った大きな紙袋をゲットしていました。そんなお宝が数十ドルなんてクソみたいな金額で売買されるんですから、魅力ありますよ」
丸「僕は全然知らない世界ですね。失礼ですが、高橋さん、英語は?」
高橋さん「英才教育で、英語力はあるので大丈夫です。でもアメリカに渡って3日後、恐ろしい目に遭いましたね。トイレに小をしにいったときです。スワップミートでおどけて風船を配っていたピエロが、後ろから襲ってきたんです。怖くなって、払いのけたんですが、よく見れば手に刃渡りの短いダガーナイフを握ってました。“可愛いね、おじさんに任していれば大丈夫だから”なんて言ってるんで、“なんじゃ、ゴオオォォラ~! 殺すぞ!”といって思いっきり蹴飛ばしてトイレを出ましたね」
丸「こ、怖いですね……」
教会でのバザーで恐怖
高橋さん「それからは何度か叔父の仕入れに同行して、慣れたころには自分で仕入れに向かうようになりました。でも、単独での4度目の仕入れのときにかなりビビる出来事が……。仕入れのときにはいろいろなところを覗いてリサーチすることが大切なんですが、押さえておきたいのはやっぱりバザーなんですよね。ニューヨークの街の中心部を大きく離れれば、貧困層が多く住むスラムがあります。道路は凸凹、タグの落書きがそこら中にあって、商店の窓には鉄格子がしてあります。路上駐車している車なんて一台も止まっていない場所、そこがスラム街」
丸「へ~、そうやって見分けるんですか」
高橋さん「スラムには信仰に熱心な人々も多いので、教会でのバザーはかなり賑わいます。僕が足を運んだ教会では、これまたレアな507XX パッチ付きセカンドモデルのGジャンを見つけました。買い付け価格25ドルで、日本に持ち帰れば20万円の儲けになります」
丸「す、すごい!」
高橋さん「そのうえ、そこの神父が食事まで用意してくれたんです。ポテトのマッシュに満足したあと、教会の中を散策してみました。僕の家は仏教徒なので教会というものが新鮮でした。キッチン、トイレ、バスルーム、そして神父のプライベートルーム。偶然鍵が開いていたので、覗いてみると、壁を彩る小さな干し首、木杭に吊り下げられた気持ちの悪い蝋人形、アルファベットの入ったおかしな方形など毒々しいアイテムが犇(ひし)めいているんです」
丸「ヤバいじゃないですか!」
高橋さん「そしたら、背後に神父が立っていて、“なぜ見たんだ! 《アブラメリンの黒魔術》を見られると、1ヵ月間は呪術を使えないんだ!”とにじり寄ってきて……。猛ダッシュで逃げました。まさか神父が黒魔術を使うなんて思わないじゃないですか。めちゃくちゃ怖かったですよ」
丸「そりゃ怖いですよ!」
散々な目に遭ってもレア物は手に入れたい
高橋さん「頭にハンドガンを押しつけられたり、ネオナチの集会に誘われたり、ドライビングシアターで行われるゲイの乱交パーティーに連れて行かれそうになったり……。散々です。極めつけは渡航18回目のときです。場所は、LAでは最も危険だといわれているサードストリートとセントラルアベニューの間のエリア。ディーラー業界の人間なら二の足を踏む場所です」
丸「よく行きますね……」
高橋さん「狙うは、501XXの中でも超レアな1900年代~1950年中期モデルでした。それが手に入るのなら、危険は覚悟していました。ひょっとすると博物館級の代物もあるかもしれません。ポリスオフィサーとポリスカーが常にウロついている場所は、犯罪多発地帯になります。すると間髪入れずに地元のヤンキーたちが駆け寄ってきて、“おまえ中国人か? ジャップか? とりあえず有り金全部置いてどっかへ行っちまえ”と……。それはできない、と断って走って逃げると、頭に衝撃が……」
丸「どうなったんですか?」
高橋さん「気がつけば、倉庫のような場所に閉じ込められていまして……。そしたら膿んでいるような臭いが鼻を突いて、女の声が聞こえるんです。“抱いて……、抱いて……、ウチで子供が待ってるの……”と。時々差し込んでくるネオンサインの灯りで確認してみると、歯茎から血を流している具合の悪そうな黒人の女がこっちを見ているんです。僕は売春窟に閉じ込められていたらしく、彼女は性病か何かでもう売り物にならなくなった女性で……」
丸「ヤバい! ヤバい!」
高橋さん「でも幸いなことに、警察が踏み込んできてくれて、なんとか帰ってこられました」
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いかがでしたか? かなりデンジャラスな古着ディーラーのお仕事。
高橋さんの月収は「数百万ある」らしいのですが、それでもやはり、命には代えられないと思うのです。
収入以上に発掘の魅力がある事を、感じずにはいられませんでした。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)
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