どうも、特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
みなさんは“ステマ”というものをご存知でしょうか?
Web上でのマーケティング用語としてよく使用されている“ステマ”なのですが、ピンとこない、意味が分からない、という方も多いのではないでしょうか?
【“ステマ”=ステルスマーケティング】とは、マーケティング手法のうち、それが宣伝であると消費者には悟られない手口で宣伝を行うことです。
よくあるWeb上でのステマ手口としては、以下の2パターンがメインになります。
(1)有名ブロガーや芸能人にブログ記事での宣伝を依頼する
(2)一般消費者になりすまし、口コミや体験談を投稿する
(1)のパターンは、ブログなどで複数の著名人がいっせいに“お気に入りの商品”を紹介し「ステルスマーケティングではないか」と指摘される例が往々にしてありました。
ステマは、バズマーケティングやバイラルマーケティングをごく自然に意図的に引き起こすことができる一方、それが宣伝行為であることを隠す手口であるため、一般的にはモラル違反であるとされています。当然、発覚した場合には、集中的非難を浴びる場合が多いのです。(1)の場合は著名人が名前を出して行っているため、効果も大きく、目立ちやすいという特徴があります。
(2)は少数の著名人ではなく、大勢の“一般消費者”が特定の商品やサービス、お店に対して意図的な評価を行う“口コミ操作”パターンです。この“口コミ操作”は実に巧妙で、中立的な立場で批評を装ったり、その商品と直接の利害関係を持たないファンのいち感想を装って行われます。
人海戦術的に行うため、Web上ではショッピングサイトや各企業のユーザー評価投稿欄、ブログでの体験談、口コミが掲載される情報サイトなどがターゲットとなります。
“口コミ操作”による被害――関西ブライダルさんの場合
今回取材を行ったのは、大阪をメインに結婚相談のサービスを提供している『関西ブライダル』さん。『関西ブライダル』さんは、この“口コミ操作”による被害を受けているというのだ。
筆者が特殊犯罪アナリストとしてテレビ出演した際、お世話になっている局関係者の方からご紹介を受けたのは、2018年暮れの頃。
さまざまな特殊犯罪の話を数々聞いてきた筆者ですが、ヒルトンホテルのラウンジで聞いたお話の内容は、まさに耳を疑うものでした。
ご挨拶ののち業務内容をしっかりと伺ったところ、真剣に結婚相談に取り組み、至極真っ当な商売をされていることが、代表と担当者の方の人柄からも伝わってきました。
<写真:関西ブライダル 森マネージャー>
真摯に結婚を望んでいる方々と真摯に向き合う関西ブライダルさんが今現在頭を抱えられている問題こそが、まさに悪質なステルスマーケティング被害。非常に苦悩されていることが、取材中の表情からもうかがえました。
関西ブライダルさんの被害を要約すると次の通り。
1.ある日、口コミサイト上で関西ブライダルと事業で強い繋がりのある結婚相談所について悪評が立ち始める
2.悪評の削除交渉を行うと、「口コミサイト掲載契約」を含めた30万円(初期費用30万円、月会費5万円~)の請求書が届く
3.強引な営業に困惑し、前述の契約を断る
4.その結婚相談所と懇意にしている関西ブライダルについても、口コミサイト上でいわれのない悪評が立ち始める
5.その因果関係について係争中
もし“悪評”と口コミサイトとの因果関係が認められれば、「悪評を書かれたくなければ、金を支払え!」と言われているようなものです。
その結婚相談所の口コミサイトを実際に確認すると、関西ブライダルさんへの罵詈雑言が並んでいて、とても読んでいられない状態でした。もちろん、該当するような内容に心当たりはありません。
裁判所、警察、産経新聞までもが動き出す事態に
関西ブライダルさんの被害状況を知り、裁判所からは再三の記事削除命令が出されます。それにもかかわらず、相手側はまったく悪質ステマ・口コミサイトを下げようとしない姿勢を固持します。
《実際の削除命令決定日時と加害者本人への仮処分決定日》
2016年12月21日:サーバー会社Aへの仮処分決定(大阪地方裁判所(平成28年(ヨ)第1162号))【サーバー1回目】
2017年4月5日:サーバー会社Bへの仮処分決定(東京地方裁判所(平成29年(ヨ)第657号))【サーバー2回目】
2017年5月30日:サーバー会社Aへの仮処分決定(大阪地方裁判所(平成29年(ヨ)第457号))【サーバー3回目】
2018年2月20日:本人に対しての仮処分決定(大阪地方裁判所(平成29年(ヨ)第1057号))
現在、関西ブライダルさんは布施警察署にサイバー犯罪の刑事事件として訴えを起こしています。
さらに産経新聞ニュースもこの事件の根の深さについて、次のような記事で触れました。
「虚偽書き込みで業務妨害」結婚相談所が口コミサイトを提訴
結婚相談所の口コミサイトに虚偽の内容で誹謗(ひぼう)中傷する書き込みを掲載され、業務を妨害されたなどとして、大阪府内で結婚相談所を運営する3社が、サイト運営者の同府の男性に対し、該当ページの削除とそれぞれ300万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしたことが25日、分かった。男性側は請求棄却を求め、争う方針を示している。
訴えを起こした原告は、同府東大阪市の関西ブライダル▽同府茨木市のハートフルマリアージュ▽大阪市中央区のトータルマリアージュサポート-の3社。訴状などによると、この口コミサイトは、全国の結婚相談所について、利用した感想や意見を誰でも書き込むことができるが、男性が確認し、承認したものが「口コミ」として公開される。
サイトに掲載された3社の口コミは、ほぼ全てがマイナスな評価の内容で、「サクラばっかり」「(従業員が)しつこくて、最低最悪」「他の相談所に比べると高い」などと書かれていたといい、原告側は「事実と異なる」と男性に削除を求めたが、現金を要求されたと主張。3社以外の一部の結婚相談所はマイナス評価の口コミがないことが判明したとして、「お金を支払っている相談所には好意的な口コミを掲載しているとみられる」とし、虚偽の口コミで名誉を毀損(きそん)されて利用者の信用を失い、売り上げ低下につながる業務妨害を受けたと訴えている。
原告のうちトータルマリアージュサポートは取材に、同サイトを閲覧して契約解除を申し出る客も多く出ているとして、「マイナス評価の投稿が事実であれば改善につなげたいが、明らかにそうではない内容がある」と話した。
一方、男性の代理人弁護士は「係争中なのでコメントできない」としている。
産経WEST(2017.11.26 07:12)
有名なステルスマーケティングの事件で言えば、食べログを悪用された事件や楽天モールでステマが猛威を振るい、ステマを行った大阪のシステム会社に楽天側が2億円の損害賠償を求める訴えを起こした事件などが過去に存在しました。
ただ事ではない、これらの許されざる行為について、ステマ業者の徹底取材を行っていこうと思います。
≫≫『ステマ業者へ突撃取材を試みた』へ続く
(C)写真AC
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 丸野裕行) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』