「最後の晩餐に何を食べたい?」と聞かれたら、「タラバガニの炭火焼!」と即答する人は筆者だけではないと思います。そんなカニ好きな人が燃えそう(萌えそう!?)な『カニノケンカ(Fight Crab)』というゲームが開発中だということをご存じでしょうか? 開発しているのは“Nussoft(ヌッソフト)”名義で活動する個人ゲーム開発者、大貫真史氏(以下、大貫氏)。
大貫氏は大学卒業後、コンシューマゲーム会社に5年ほど勤務し、趣味で開発した『エース・オブ・シーフード(ACE OF SEAFOOD)』のリリースを機に会社を退職。以降、本業として個人でゲーム開発をしている方です。大貫氏のゲームに共通する最大の特徴は、キャラクターが“海産物(シーフード)”という点です。そんなユニークな世界観のゲームを開発し続ける大貫氏に話を聞いてみました。
FightCrab(YouTube)
https://youtu.be/5v1wEvmaf80
―Nussoftのウェブサイトには「ビデオゲームを開発している個人」との記載がありました。ゲームを個人開発するメリット・デメリットを教えていただけますか?
大貫氏:基本、一人でゲーム部分を作っていますが、音楽や3Dモデルは個別に人に依頼して作ってもらったりもします。メリットは開発費がなくてもスタッフがいなくてもゲームが完成することです。デメリットは個人の癖が出すぎることと、大きい仕様のゲームは作りにくいということです。
―海産物(シーフード)に特化したゲームを開発しているのは、何か特別な理由でもあるのでしょうか? 他に海産物ゲームに特化した開発会社や個人開発者はいるものなのでしょうか?
大貫氏:彼らが身近な野生動物だということですかね。家畜化されていない海という野生の世界から運ばれ、私たちはそれを食べている。何時も触れているけど別の世界で生きているという距離感が、創作のテーマにしやすいと思ってます。あと見た目がかっこいいですね(重要)。他に海産物に特化した開発者は知らないです。多分そんなコミュニティもないんじゃないでしょうか。
―『カニノケンカ』を開発しようと思い立ったきっかけは?
大貫氏:シューティングゲームを作っていて“生き物の形”への表現力に限界を感じたことです。ゲームはどんな形の生き物でもHPや攻撃力・弾丸といった要素に分解・一般化してゲームシステムへ取り込んでしまいます。それは優れた点でもありますが、同時に“形”の意味を薄れさせてしまいます。今回は“カニの形”を活かしたかったので、最も体をつかう“格闘”をテーマに選びました。
―『カニノケンカ』の基本的なスペックを教えていただけますでしょうか?
大貫氏:数的な仕様はまだ決まってませんが、いくつかステージがあって、勝ち進むと自分のカニを鍛えることができます。筋力や体重や移動速度などが向上します。より強いカニに勝つために鍛えたり、武器をマスターしたりしていきます。
―『カニノケンカ』はいわゆる“カニの格ゲー”でしょうか?
大貫氏:「カニ」「格闘」「ゲーム」という言葉通りであればそうですが、いわゆるゲームジャンルとしての「格闘ゲーム」とは全然ちがうので、そう理解すると期待と違ったものが出てくると思います。手足を操作するという点では『リモートコントロールダンディ』っぽいですが、物理演算で試合が決するので最近の作品だと『Gang Beasts』にも近いかと。「格闘アクション」ぐらいが穏やかな分類ですね。
―「ゲームジャンルとしての“格ゲー”とは全然ちがう」ということですが、普通の「格闘ゲーム」と違うのは具体的にどういった点でしょうか?
大貫氏:一般的に格ゲーはサイドビューのアクションゲームでこういった三人称背後視点のものは格ゲーと呼ばない気がします。格ゲーではコマンドを入力すると、一定の攻撃動作が始まり、それが接触すると、一定のリアクション(やられ動作)と共に相手の体力を減らし体力が0になると勝敗が決します。
『カニノケンカ』の場合、接触は一定の結果をもたらさず、現実と同じように当たった場所に衝撃を与え速度や姿勢を変化させます (現実の例でいえば おきあがりこぼし という玩具は押す場所や強さによって違う動きをしますね)。勝敗は体力の減少ではなく、ひっくり返ったかどうか(地面に背中がついたか)という状態によるものなので、一概に打撃を競うものではないです。ルール的にはメンコや相撲に近いといえるでしょうか。
また、格ゲーは基本的に “パンチ”には“ガード”、“ガード”には“投げ”といった技同士の相性を常に意識しますが、『カニノケンカ』の場合、例えば
・相手の姿勢が傾いている方向に衝撃を与えればより相手を倒しやすい
・攻撃時の速度が速ければより強い衝撃を与えられる
・相手と腕が絡んでいると一緒に倒れてしまう
・相手の体の端を掴んだ方が回転させやすい(てこの原理)
など、現実世界と同じように物理的な因果関係が発生します。こういった現象は一つ一つ作りこまれたものではなく、物理的な運動の結果によるものなので、行動の正解は決まっていません。なのでプレイヤーは動かしながらカンをつかんでいくことになります。
―3月6日に英語タイトルの『YouTube』動画が公開されるやいなや、海外のゲーム系サイト複数に取り上げられています。
FIGHTCRAB is a game about CRABS that FIGHT, okay?
https://www.rockpapershotgun.com/2018/03/07/fightcrab-is-a-game-about-crabs-that-fight-okay/[リンク]
Crab Battles Get Turned Into A Real Video Game
https://kotaku.com/crab-battles-get-turned-into-a-real-video-game-1823618843[リンク]
大貫氏:海外のマーケットのことは全然わからないので、今の段階で外国人がこれ程喜んでいるのは謎でした。どうやら英語圏では「CrabBattle」や「GiantEnemyCrab」などの「戦うカニ」のネットミームが豊富なようで、そこが刺激されたようですね。
―『カニノケンカ』はPC向けということですが、『エース・オブ・シーフード』のようにPS4やNintendo Switchなど他のプラットフォームで発売する予定はありますか?また、発売時期や予定販売価格は?
大貫氏:マルチプラットフォームはコンシューマも勿論考えています。まだ詳細を話す時期ではないですが、来年の前半ぐらいを目標にしています。値段も1000円台だと思います。
―『カニノケンカ』のここを楽しんで欲しいという点は?
大貫氏:ケンカというのは物理現象であり体を動かすことだというのを思い出して自由に楽しんでほしいですね。昨今のゲーマーは数字の削り合いや相性のジャンケンに熱中しがちですが、このゲームでは全て物理的に処理されるので、速度や衝突、バランス等が重要です。実際にカニを動かしながら自分で技を発見し、戦いのコツをつかんでいくプリミティブ(原始的な)なケンカ体験を提供したいですね。
―さかなクンが大喜びしそうなゲームだと思うのですが、さかなクンとタイアップしたりといったコラボ企画などはあったりしますか?
大貫氏: さかなクンは尊敬していますが、暴力を扱っているので喜ぶかは分からないでしょう。あくまで暴力的で不真面目なゲームなので、こちらからバイオレンスと無縁な方を巻き込むのははばかられます。
―ありがとうございました。
ダウンロードゲーム市場にあふれかえる定型フォーマットに沿った“お約束”的なゲームに飽きてしまい、オンリーワン的な個性豊かなゲームに惹かれるという人であれば、大貫氏の海産物ゲームは要チェックでは。
『エース・オブ・シーフード』 紹介ムービー(YouTube)
https://youtu.be/SWNFuTNW8C4
『カニノケンカ』はリリース前ですが、『エース・オブ・シーフード』はNintendo eShop、PlayStation Store、STEAM、DMM、App Store、Google Playにてダウンロード可能です。詳細は以下のNussoft公式サイトでご確認ください。
Nussoft公式サイト
http://www.neoaq.net/
※画像:大貫真史氏提供
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