はじめに
あなたは、住み替えや相続で、お持ちの不動産を売却しようなどと考えてはいませんか?
もしそうであれば、できるだけ高い価格で売却したいですよね。何かしらの事情ですぐに売却しなければならないという事情でない限り、数か月とか半年とか少し時間に余裕があるなら、どのようにすれば高く売れるかについての手法をご紹介します。この内容については、2回に分けてお話したいと思います。今回は前編として、査定と契約の種類について説明いたします。
1.まずは、査定から
(1)査定の種類
まずは、売却しようとしている物件がどのくらいの価値があるかを知る必要があります。
査定は通常は不動産会社(不動産業は、不動産の売買の仲介などの宅地建物取引業のほか賃貸や管理などの業務も含むので、ここでは、不動産取引の業務を行う業者として以下、「宅地建物取引業者」ということがあります。)が無料でやってくれると思いますので、宅地建物取引業者に依頼をしてみましょう。
より正確な情報を得るには、実際に部屋を見てもらう「訪問査定」なのですが、まずは、市場や立地条件などから判断する「机上査定」をするとから始めてもよいかと思います。机上査定で、売却しようとしている所有物件のおおよその価格を知るのです。そして、実際にすぐ売却するのか、もう少し時期をずらしたり、様子をみたりするのか等の判断をしてもよいかと思います。ただ、机上査定だけでは、目安しかわかりません。実際に、売却を進めるということとなったら、「訪問査定」をしてもらって、より正確な査定額を知る必要があると思います。
なお、査定は、複数個所からとっておいた方が、動向などはわかるかと思います。なお、宅地建物取引業者から査定をとると、宅地建物取引業者の営業から連絡が来るようになる点は、将来的に仲介を依頼することになるということで、仕方ないと思ってください。
(2)一番良い査定額がいい査定とは限らない
査定額を一番いい価格で出してくる宅地建物取引業者が、必ずしもいい宅地建物取引業者とは限りません。高すぎる査定は疑うべきです。もし、あなたがマンションなら、同じマンションで販売していないかをWeb上などで確認してみましょう、そうすれば、大体の相場は把握できるものと思います。それから、坪単価で、大幅に上回っている場合は、自分に仲介してもらうための戦略であると考えられます。。高くすれば、売主はこの業者に頼もうという気になるというという心理を利用しようとしているだけかもしれません。
また、逆に何か月も前や、数年前の過去の事例をもとに、それのみの根拠で査定額を決める営業マンにも注意が必要です。不動産価格は、変動するものですから、過去の事例でそれから数年経過したので価格はこのくらいというのは、正しい査定ができていない可能性が高いです。
ここで、相場の参考になる情報を提供しましょう。宅地建物取引業者は、価格設定にあたって、不動産流通機構のREINS(レインズ)というものを利用しています。これは、後ほど出てきますが、宅地建物取引業者が、取引が成立した場合に、成約価格を登録することになっているデータベースなのです。しかしながら、この宅地建物取引業者の利用しているデータベースには、宅地建物取引業者でないと、アクセス権限が与えられません。
しかしながら、このレインズの情報の一部が、Web上で公開されています。これが「REINS Market Information(レインズ・マーケット・インフォメーション)」です。
REINS Market Information:http://www.contract.reins.or.jp/
宅地建物取引業者の広告等では、売主が売りたい価格が出ているだけなので、実際に取引された価格はわかりませんが、このレインズ・マーケット・インフォメーションを利用すると、成約価格を知ることができるため、査定の価格が妥当か、また、売出価格を提示する際に参考になります。
このサイトでは、実際に成約した時期も記載があるので、相場観がわかるのです。
また、今回の査定は、売却のためなので、宅地建物取引主任者などが行うこととなると思いますので、眺望、方角、築年数等のポイントを付けていると思いますので、それも見せてもらうといいと思います。
なお、査定価格は、宅地建物取引業者と担当者によって変わります。したがって、提示される査定価格はあくまでも売出価格の参考と考えてください。
2.仲介契約の種類
査定で、不動産物件の価格がだいたい分かったところで、それでは、実際に宅地建物取引業者に仲介を依頼する場合にどのような契約をしたらよいのでしょうか。
(1)媒介契約の種類
それでは、媒介契約にはどのような契約があるのでしょうか。媒介契約には、「①一般媒介契約」、「②専任媒介契約」、「③専属専任媒介契約」の3つがあります。
①一般媒介契約
複数の不動産会社に同時に依頼できる契約。売主自身が買主を探してくる自己発見取引ももちろん可能。ただし、不動産会社からの状況の報告義務はなし。不動産取引に慣れている方が利用する契約方式。
②専任媒介契約
1社の不動産会社にのみ仲介業務を依頼できる契約。専任媒介の場合は、売主が自分で見つけてきた買主の自己発見取引について、仲介会社を入れないで仲介手数料を支払わずに直接取引が可能。この契約の場合は、売主に対して、2週間に1回の売却活動の報告義務がある。
③専属専任媒介契約
1社の不動産会社にのみ依頼できる契約。専属専任媒介の場合は、専任媒介と異なり、自己発見取引については、直接的に契約ができず、必ず仲介会社を通さなければならない、そのため、自己発見取引についても、仲介手数料が発生する。この契約の場合は、売主に対して、1週間に1回の売却活動報告義務がある。
(2)一般媒介契約と専任媒介契約の比較
上記の①一般媒介契約は、自由度が高く、複数の会社に依頼できるため、広告の数も増え、売却情報を目にする機会も増えて拡散力があることは確かです。そのため、一見メリットが大きいように思えます。しかしながら、各不動産会社との調整は売主側で行わなければならず、内覧等の調整も売主側が調整しなければならず、負担は大きくなります。また、複数の不動産会社に依頼をする関係から、各不動産会社のモチベーションがあまり高くならない傾向にあるようです。そのうえで、自分の会社に買主の見込客が来ると、とにかく他の不動産会社にとられないようにしようと、価格を低くしてでも売ろうとするため、高く売るにはあまり向かない傾向にあります。
これに対して、専任媒介契約(及び専属専任媒介契約)の場合、窓口が一元化でき、内覧の調整などは、依頼した不動産会社が行ってくれます。また、1社なので、売主側が高く売却しようとしていれば、その意向に従い、高く売却する方向にモチベーションが向かう傾向になります。
専任媒介契約(又は専属専任媒介契約)は、不動産会社にもメリットがあるので、通常は、不動産会社は専任媒介契約か専属専任媒介契約を結ぶことを進めると思います。
(3)媒介契約を結ばないのは
宅地建物取引業者に仲介を依頼しないと安価でよいと感じるかもしれません。ただ、すでに売却する相手が決まっているなどの特別な事情がない限り、広告なども自分で出さなければ、売却したい物件を他人に広く認知させることは困難です。た、この物件売却と同時期に、不動産の購入や家の新築などを進める場合、売却ばかりに時間や手間を取っているわけにもいきません。また、必要な手続きや必要な手配、引き渡し後のトラブル対策なども仲介業者が行うので、媒介契約を結んだ方が無難ですね。
(4)両手仲介に注意
売主と買主が同じ業者の場合は、いわゆる両手仲介となります。これに対して、売主と買主が異なる場合を片手仲介といいます。片手仲介なら、仲介手数料がそれぞれの会社に入ることになるので、それぞれでできるだけ高く販売しようとする傾向になります。
両手仲介の場合、片手仲介の2倍の仲介手数料が1社に入ってくることになるため、高く売ることよりも、価格が安くても、売買契約を成立させることを優先させようとします。
そのため、売主が高く売ろうという意向に対して、不動産会社の意向が逆行することがあります。
さらに、情報が社外に出てくることなく進められるため、1社の社内での中の話でクローズするため、正確な情報を入手しにくく、情報操作がされやすいというデメリットもあります
不動産業者側の言いなりにならないよう監視が必要です。不動産会社のトークに騙されないようにしなければなりません。
信頼できる業者であれば、もちろん「専属専任媒介契約」でいいのですが、少し牽制する意味で、買主側を売主が連れてこられる「専任媒介契約」とすることもおすすめです。
できれば、片手仲介が成立するような取引が、一番健全になるかと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
まずは、査定の方法と、仲介の契約について説明してみました。
不動産の売却をしようとしたら、まずは査定で売出価格の適正価格を知ることかと思います。
また、仲介契約で仲介を業者に依頼するにしても、売主側がコントロールできる体制を整えないと、業者のコントロール下で、業者の担当者の業績ばかりが優先され、売主側の立場になった売買が成立しないおそれがあるわけです。
次回は、不動産業者の選定や、売出価格の設定から売却活動などについてお話したいと思います。
(前編はここまで)