posted by やなぎた
ACRS注入療法は「血液」から肌に効果的な成分を抽出して使用する方法
このACRS注入療法は、簡単にいえば自身からとった「血液」に含まれる、肌の再生に役立つ成分を再度注射するというもの。
血液には、ケガをした時に止血をする役割の「血小板」というものが沢山含まれているのですが、この血小板は止血をするだけではなく、ケガをした肌が治るのを促進するための成分を作り出すという役割ももっています。
血小板が肌の再生を促す事で、ケガをした部分の肌は再生が早くなり、早くケガが治るという流れができているのです。
ACRS注入療法は採取した血液の中に含まれる血小板が作る「肌の再生を促す」成分を特殊な方法で培養して抽出した液を作り、それを肌に注射する事で肌の再生を促進していくというものになります。
培養した「血液」に含まれる成分とは?
血液に含まれる血小板が肌の再生を促すとご紹介しましたが、具体的には下記のような成分がACRS注入療法に使用される培養液には豊富に含まれています。
成長因子「EGF」
EGFは日本語で「表皮細胞成長因子」と呼ばれるもので、文字通り「表皮=肌の角質層」の細胞の成長を促すものです。
EGFが表皮細胞を作り出す「基底層」と呼ばれる部分にくっつく事で、基底層の細胞が新しい表皮細胞を作りはじめて肌のターンオーバーが発生していきます。
EGFは20歳頃をピークとして徐々に体内での分泌量が低下していくため、これが肌荒れやシミくすみ、毛穴の開きなどの原因となります。EGFを外部から取り入れる事で肌の代謝が正常に促され、若く健康的な角質を取り戻す事が可能となるのです。
成長因子「FGF」
EGFと同じく成長因子のFGF。こちらは日本語で「線維芽細胞成長因子」と呼ばれるもので、線維芽細胞というのはあまり馴染みがないかと思いますが、肌のコラーゲンなど弾力を作る「繊維」を作り出す細胞です。
FGFが線維芽細胞にくっつく事で、コラーゲンやエラスチンといった肌の弾力を作り出す事から、シワやたるみといったエイジングサインをケアしていく事ができます。
FGFもEGFと同様に加齢によって分泌量が減少していくため、外部から注入する事でシワなどの改善が見込めます。
FGFは単体での注入治療もありますが、量が多すぎると肌が過剰に膨らんでしまうなどのトラブルも報告されています。しかし血液培養によって得られたACRS療法であればFGFだけが過度に注入されるリスクも少ないので安心感があるのではないでしょうか。
成長因子「KGF」
KGFは「ケラチナサイト成長因子」で、ケラチンという髪や爪などを作り出す細胞の働きを促進します。
頭髪に限らず、まつげや眉毛といった毛の成長も促す事ができます。
上記3種類の他にも、ACRS療法の薬剤には様々な細胞の働きを促す成長因子が豊富に含まれている事から、複合的に肌の再生を促していく事が期待できます!
ちなみに…「サイトカイン」や「エクソソーム」とは?
ACRS注入療法をはじめ、再生療法について聞いたことがある方は「サイトカイン」や「エクソソーム」といった言葉を耳にした事もあるかもしれません。
サイトカインとは体の細胞の、何らかの働きを促進するたんぱく質のうち、体の細胞から作られたものの総称で、各種成長因子(増殖因子)もサイトカインの一つです。
サイトカインには成長因子の他にも免疫をコントロールするものなども含め、色々な役割のものがあります。
細胞に働きかける物質はサイトカインの他には成長ホルモンなどがありますが、こちらは細胞ではなく脳が作り出す物質のため、サイトカインとは別物に分類されています。
そして「エクソソーム」というのは、このサイトカインなどが含まれたカプセル状の成分の事で、色々な種類のサイトカインが複合的に入り込んでいます。
つまり、エクソソームは色々なサイトカインが入ったカプセル。サイトカインは成長因子などの総称という関係性になります。
ACRS注入療法がこれまでの治療法と異なるのは「血小板」そのものは取り除く点
最新の治療としてご紹介するACRS注入療法ですが、実は血小板が作り出す成長因子を有効活用するという治療法はこれまでも行われていて、それがPRP療法と呼ばれるものです。
PRP療法とは、採取した血液から血小板を集めたものを注入するという手法のもので、こちらもやはり血小板が作り出す様々な成分が体の組織を再生させる効果が期待できます。
一方のACRS注入療法では専用の道具で血小板そのものは除去されてしまいます。血小板そのものは含まれないのですが、一定時間血液の細胞を培養する事で、血小板から放出されたエクソソーム(サイトカイン・成長因子)はそのまま残るため、これを利用して肌の再生を促していく治療を行うのです。
PRPが法律の兼ね合いで出来ないクリニックも、ACRSなら可能
なぜ同じようなアプローチの治療法があるのに新しくこの方法が開発されたのかというと、一つには実は法律の問題があります。
PRP療法は培養した血小板の細胞そのものを再注入するため、再生療法を取り扱うクリニックとしての法律(「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」)に基づいた認定を受けなければ、この治療を行う事はできません。
一方で、細胞そのものの注入はしないACRS注入療法であれば、この認定を受けなくても導入する事が可能であるため、クリニックに導入しやすいという点を含めて今注目を集めているんです。
血小板の細胞そのものを使用するPRPとどちらが効果的かなどは明確になっていませんが、クリニックに導入しやすいという事はそれだけ参入が増えて症例数も増加が見込めるという利点があります。症例が多いとそれだけより効果的な取り入れ方なども分かってくるので、今後の発展が期待できる治療法といえます。
一方で、PRPとは異なり設備の基準などが特に定められていない事から、実施するクリニックによっても効果のバラつきが大きくなってしまう可能性や、そもそも安全性などの面でリスクが存在するともいえます。
治療を受ける際は、この辺りのデメリットもしっかりと理解して判断する必要があるでしょう。
いずれにせよ、再生医療は次々により手軽な治療法も開発されてきていることは事実。いつまでも体をベストコンディションの頃に維持し続けられる日が近づいているかもしれませんね!