角質層は頑丈に固められている
人の肌の最も表面にある「角質層」。
この部分は角質細胞という「死んだ細胞」と、角質細胞を繋ぎとめる「細胞間脂質」というもので埋め尽くされています。
角質層は表皮の中でも非常に薄く、その厚さは0.02㎜程。表皮が0.2mm程の厚さでキッチン用品のラップに近いと表現されますが、角質層はその10分の1の厚さしかありません。
しかし、この角質層は非常に頑丈。
角質細胞と細胞間脂質はよくレンガとセメントに例えられますが、細胞間脂質によってガッチリと固められた角質細胞はそう簡単には剥がれ落ちず、ある程度の力で擦ってみてもすぐに垢となって剥がれ落ちないのはこのおかげです。
もし角質層の繋がりが弱かったら少し擦っただけで角質層が削れてしまい、肌のバリア機能が無くなってしまいます。
角質層は酵素の働きで自然と剥がれ落ちる
そんな頑丈に固められた角質層ですが、いつまでもくっついた状態でいたら肌がどんどん分厚くなってしまいますよね。
そうならないために、ある程度の厚さになったところで一番表面の角質を剥がす機能を、肌にある酵素(トリプシンやリパーゼなど)が担っています。
角質層の細胞が一定以上の厚さになると、酵素の働きによって接着剤である細胞間脂質や、レンガである角質細胞が分解され、くっついていた角質細胞が垢となって剥がれ落ちるのです。
角質を剥がす酵素は乾燥によって働きが鈍くなる
そんな角質を剥がして一定の厚さに肌を保っている酵素ですが、酵素が働くためには十分な水分が必要という特徴があります。
つまり、乾燥した状態では酵素の働きが弱くなり、角質層が厚くなってしまうのです。
これは肌が乾燥している状態だとバリア機能が低下するため、一定のバリア機能を保つために肌が剥離されてしまうのを防ぐためでもあります。
加齢によっても酵素の働きが弱くなる
また、乾燥だけではなく加齢によっても酵素の働きが低下し、角質が厚くなっていきます。
これは加齢によって新しい肌の細胞が作られるスピードが遅くなるため、その分古い角質を剥がす働きも遅くして肌の機能を一定に保っているという事が理由として考えられます。
酵素の働きが鈍いなら強制的に剥がすべき?
乾燥や加齢によって酵素の働きが鈍くなり、角質細胞が剥がれ落ちにくくなるという変化が発生すると、厚くなった角質がくすみとなったり、角栓が出来やすくなってニキビの原因となったりします。
そのため、角質が剥がれなくなって厚くなったら「ピーリング」などによって古い角質を除去するというケア方法がよく紹介されますが、これは必ずしも正解とはいえません。
というのも、確かに厚くなった角質を除去する事で一時的に肌トラブルは解消できるのですが、そもそも角質が厚くなってしまった根本の原因「乾燥」や「加齢」といった状態は何も解決していません。
この状態で角質だけを薄く削ってしまうと、肌のバリア機能が低下しているため肌はダメージを受けやすくなり、余計に肌トラブルが引き起こされやすい状態になってしまう可能性が高いのです。
潤いが足りないために酵素の機能が鈍っているのであればしっかりと保湿ケアをすれば自然と肌は薄くなりますし、加齢など体質の変化によって肌の状態が変化しているのであれば、食生活や睡眠など生活習慣を整えて肌の代謝を高める事が重要となりますので、まずはこういった根本からのケアを見直すべきでしょう。
角質を剥がれやすくする3つの方法
とはいえ、ニキビなどのトラブルについては厚くなった角質を除去して早期に解消する事も必要です。
そんな時に利用できる、厚くなった角質を剥がれやすくする3つの方法についてご紹介します。
酵素洗顔料を利用する
一つ目の方法は、酵素が配合された洗顔料を利用する方法です。
酵素の働きが鈍くなっているのであれば、酵素を追加してしまえば良いという単純な方法ではありますが、古い角質を除去するためにはとても有効です。
但し、角質が剥がれ過ぎて肌のバリア機能が低下してしまう可能性もあるため、角質が本当に厚くなっていてくすみなどが特に気になる場合に利用する程度にした方が良いでしょう。
ピーリングによって酸で溶かす
二つ目の方法は、ケミカルピーリングのように酸で溶かしてしまう方法。
酵素の働きなどは関係なく、強制的に肌表面の角質層を除去する事が出来ます。
問題点として、肌の仕組みを根本的に無視しているので、刺激は相当強い方法だと言えます。
トレチノイン(ビタミンA誘導体)でターンオーバーを促進する
トレチノインという外用薬はニキビのケアなどによく用いられる薬で、肌に塗る事でターンオーバーを強力に促進する作用があります。
塗ると新しい角質がどんどん作られ、また古い角質が剥がれていくので、短期間で肌を入れ替えたい時には有効です。
非常に強い作用があるため、基本的に局所的な使用となります。
スクラブや強い摩擦は肌のバランスが崩れやすい
表面の角質を強制的に除去する方法としては、上記以外にもスクラブを用いたケアや垢すりのように強い摩擦を行うものがあります。
そもそも必要な角質を強制的に除去する事自体があまり推奨できないケア方法ですが、スクラブや強い摩擦によるケアは、角質を物理的に傷つける方法であるため、角質が剥がされた場所と残った場所がバラバラになり、角質層が凸凹の状態になってしまいやすいという難点があります。
角質層が凸凹の状態になると、触った際にざらつきを感じる肌となりやすいだけではなく、保湿能力があるところと無い所が出てくるなど肌のバランスが崩れるため、適切なケアも行いにくくなります。
肌の機能を高めて「自然と剥がれる」状態を作る事がベスト
以上のように、角質を強制的に剥がしながらターンオーバーを促す方法は色々とありますが、あくまでもこういったケアは応急処置。
スキンケアで重要な事は肌のそもそもの状態を健康的にするという事なので、保湿や生活習慣の改善による肌のバリア機能の向上や、その結果として自然と剥がれていく肌質を手に入れていく事が大切です。