海外メディアVRFcusは、VIVE Focusに関するHTC幹部の発言を報じた。
VIVE Focusは世界に届く
つい先日、HTCはスタンドアロン型VRヘッドセット「VIVE Focus」を正式発表したのだが、その発表時点ではリリース日および価格は明かされず、ただ「中国に向けてリリース」という情報だけ伝えられた。そのため、欧米には果たしていつリリースされるのか、憶測が飛び交った。
こうしたなか、同メディアはVIVEメディア&コミュニケーション部門ヴァイス・プレジデントのPatrick Seybold氏からの以上の件に関するコメントを入手した。そのコメントとは、以下のようなものだ。
わが社は、中国市場に向けて発表したVIVE FocusのようなVIVEとは異なったデバイスを、ユーザに届ける努力を続けています。
またわが社はGoogleと素晴らしいパートナーシップを保っていますが、(Googleが展開するVRプラットフォームである)Daydreamに対応したスタンドアロン型VRヘッドセットを欧米に向けてリリースすることはありません。
わが社はVIVE Focusに関するロードマップをつぶさにチェックしており、来年、欧米のユーザもVIVE Focusを入手できるということを共有したいと思います。
以上のコメントから、VIVE Focusが来年のおそらくは早い時期にアメリカとヨーロッパに向けてリリースされる、と理解して間違いないだろう。また、コメントには「日本」を連想させる言葉はないものも、欧米市場に同デバイスをリリース以上、来年中に日本に向けてもリリースされると考えてもよいだろう。というのも、欧米市場にはリリースする一方で、あえて日本市場を除外する政治的・経済的理由など何ひとつないからである。
VIVE Focusとは?
基本仕様
VIVE Focusとは、使用するためにスマホあるいはPCを必要としないまさにVRヘッドセット本体のみでVR体験が可能なデバイスのことである。その主な仕様は、わかっている限りでは以下の通りである。
- ・6自由度(xyz座標値と各座標軸の傾きを検知)のトラッキングに対応
- ・3自由度(xyz座標値を検知)のトラッキングに対応した専用コントローラーが付属
- ・HTC独自コンテンツプラットフォーム「Vive Wave」からコンテンツを購入
同ヘッドセットに対応したコンテンツは、DaydreamおよびGear VRに対応したコンテンツから容易に開発することができ、VIVEあるいはOculus Riftのようなハイエンド型VRヘッドセット対応コンテンツからの移植も機能を限定すれば可能である。
発表までの経緯
Patrick Seybold氏のコメントのなかで、Googleへの言及があったのだが、同ヘッドセットは正式発表に至るまでにやや複雑な経緯があった。
同ヘッドセットは、今年5月に開催されたGoogleの開発者カンファレンスで開発することを発表され、その段階では、Googleが展開するモバイル型VRヘッドセット・ブランドDaydreamに対応するとされていた。
しかし、HTCが同ヘッドセットを正式発表したタイミングで、GoogleのVR・AR部門を率いるClay Bavor氏が同ヘッドセットはDaydreamに対応しないとツイートしたのだ。このDaydream非対応に関しては、本記事で紹介したコメントで言及されるまで、HTCからとくに発表がなかった。
同ヘッドセットがDaydream非対応となり、HTCの独自プラットフォームで運営することになった背景には、同社がDaydreamという他社が管理するプラットフォームではなく、自社によるプラットフォームでの運営をより好ましい選択だと判断したことがうかがえる。
勃興が期待されるスタンドアロン型VRヘッドセット市場
スタンドアロン型VRヘッドセットは、HTCのほかにも名だたる企業が参入に名乗りを上げている。
Facebook(Oculus)
Facebook傘下のOculusは、2017年10月に開催された開発者カンファレンスOculus Connect 4において、スタンドアロン型VRヘッドセット「Oculus Go」を発表した。
同ヘッドセットの最大の特徴は、その低価格にある。価格が199ドル(2.2万円)と抑えられているのだ。
スマートフォンをはめるだけのCardboardゴーグルならば無料で配布されることすらあるが、VRヘッドセットは決して安価なおもちゃではない。比較的安価なモバイルVRでも、スマートフォン本体を含めれば10万円近い導入コストが必要になることを考えると、同ヘッドセットはその性能に比して圧倒的に安価だと思われるのである。
なお、同ヘッドセットのリリース時期は来年の早い時期だと考えられている。
上述したようにHTCはDaydreamに対応したスタンドアロン型VRヘッドセットをリリースしないが、Lenovoが同等の性能のVRヘッドセットを来年にはリリースするようだ。
LenovoがDaydream対応スタンドアロン型VRヘッドセットをリリースすることにも、やや複雑な事情がある。Lenovoは当初はHTCと提携して同ヘッドセットを開発していたのである。
つまり、HTCが同ヘッドセットの開発プロジェクトから途中離脱して、VIVE Focusを新たに開発したと見られるのである。そして、当初のDaydreamに対応したスタンドアロン型VRヘッドセット開発プロジェクトをLenovoが継続しているわけなのだ。
Samsung
Samsungは2017年10月18日と19日、アメリカ・サンフランシスコで同社主催の開発者会議「Samsung Developer Conference」において、スタンドアロン型VRヘッドセットを開発していることを明らかにした。
同会議で明らかになった計画によると、同社は現在Gear VRと(同社が開発したWindows MRヘッドセットである)Odysseyのあいだに位置するVRヘッドセットを開発中である、とのこと(上の画像参照)。同氏は開発中の製品名までは明かさなかったが、この製品は「Inside-out型トラッキングでかつ6自由度モーションコントローラー」を実装することになる、と明言した。
同氏が発言した「Inside-out型トラッキングでかつ6自由度モーションコントローラー」という仕様は、実質的に先日Oculus社が発表したスタンドアロン型VRヘッドセット「Oculus Go」と同等であると考えられる。
なお、同VRヘッドセットのリリース時期および価格は、現時点では不明である。
以上のように、各企業が開発するスタンドアロン型VRヘッドセットにはまだ不明点が多い。とは言え、価格を打ち出しているOculus Goが基本軸となって市場が形成されると推測される。スタンドアロン型VRヘッドセット市場の勃興は、VR元年以降最大のVR市場に対する起爆剤になるかもしれない。
ソース:VRFocus
https://www.vrfocus.com/2017/11/htc-comment-on-international-launch-of-the-vive-focus/
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