映像の解像度が高くなり、VRデバイスを使うことでユーザの操作に応じて360度見回すことのできる映像に対応するなど、目から入る情報は進化を続けている。この映像の進化を追うように発展しているのが耳からはいる「音」の技術だ。
映画館だけでなく、個人でも5.1chや7.1chのサラウンドシステムを使って様々な方向から音に包まれるような体験を実現することができるようになっている。だが、再生に使うサラウンドシステムがあっても2chで録音したデータを再生していてはその性能を十分に活かすことができない。
Lifelike Scenesがクラウドファンディングで資金を集めているイヤホンは、搭載されたマイクによって立体音響の録音が可能となっている。価格も抑えられており、個人で作成する映像にも気軽に3Dサウンドを付けることができそうだ。
Lifelike 3D
3D録音ヘッドセット
Indiegogoでクラウドファンディングキャンペーンを行って資金を集めているLifelike 3Dイヤホンは、開発チームによれば「世界初の3Dオーディオ録音ヘッドセット」とされている。
実際には他にも同様のコンセプトでデザインされた製品があるのだが、Hooke AudioのHooke Verseは239ドル(2.6万円)と価格が高めだ。Lifelike 3Dは数量限定ながら79ドル(8,730円)+送料から入手できる手頃さが魅力となっている。クラウドファンディング終了後の通常価格でも149ドル(1.7万円)と、Hooke Verseよりは安価だ。
Indiegogoのキャンペーンページに掲載された説明を見る限り、仕組みはHooke Verseと変わらずバイノーラル録音が可能なマイクを搭載したイヤホンになっているようだ。
Hooke Verseとの違いとしては、接続形態がある。あちらがBluetooth接続による無線での再生・録音に対応していたのに対してLifelike 3DはiPhoneまたはiPadとの有線接続が前提となっている。無線で便利に扱えない反面、端末から電源を確保できるのでイヤホンの充電は不要だ。
Lifelike 3Dの端子部はマイクロUSBのType-Bになっており、デジタルボックスを通してiPhoneのLightning形式に変換する方式を取っている。そのため、Hooke Verseのように一般的な360度カメラに接続することはできない。価格では優位に立っているが、対応機器の多さという点ではHooke Verseに軍配が上がる。
PCとの接続
iOSデバイスではなくPCと接続したいというユーザには、イヤホン本体と別にIndiegogoで提供されるPCアダプタを使う方法がある。
WindowsまたはMac OSを搭載するパソコンとUSBケーブルでの接続が可能になるので、録音した3Dデータを加工したい場合にはこちらを利用するのが良いだろう。
アダプタの価格は39ドル(4,300円)だ。イヤホン本体に比べて数が少なく、現時点では30個分しか枠が用意されていない。
録音用スタンド
PCアダプタ以外の関連製品として、3Dサウンドを録音するときに使えるイヤホンスタンドとLifelike 3Dイヤホン本体のセットも用意されている。個別販売はされていないが、セットの価格は149ドル(1.7万円)なのでスタンド単品ならば70ドル程度ということになる。
Lifelike 3Dを装着した自分自身が動くことでノイズが入るのが気になる場合や、自分の声を使ってささやき音声の作品を作りたいユーザなどにとっては便利だろう。
左右のイヤホンを人間の耳の距離に離しておけるだけでなく、耳(外耳)の形状が作られているので人間の耳で聞いたときに近い音を作ることができるはずだ。
こちらのセットもPCアダプタと同じく30個分しか用意されていないので、支援を考えているならば急いだほうが良いかもしれない。
出荷予定
この製品のコンセプトは2015年に誕生したものだ。
現在はIndiegogoで大量生産に向けた資金を集めている途中であり、9月14日時点で目標金額2万ドル(221万円)の78%を集めている。キャンペーン期間はまだ18日残されているため、目標を達成する可能性は高い。
また、キャンペーンはフレキシブルゴールを採用しているので目標金額に届かなかった場合でもキャンセルとはならない。
キャンペーンの終了後、製品は12月に発送を予定しているという。イヤホン本体だけでなく、PCアダプタやイヤホンスタンドも12月に発送の計画だ。
3Dサウンドがコンテンツを変える
ステレオヘッドホンへの対応
記事中に掲載した2つの動画はいずれも、Lifelike 3Dを使って録音された立体音響データを使ったものだ。スピーカーで聞いていても一般的なYouTubeの動画に比べて耳元で音がしているような感覚があるが、イヤホンやヘッドホンを使えばさらに音源との距離感まで感じられる。
バーチャルサラウンドヘッドホンを使えば擬似的に5.1chや7.1chを再現することもできるが、バーチャルサラウンドに対応するヘッドホンは非対応のものに比べて大型だったり、価格が高かったりといった欠点がある。
その点、バイノーラル録音された音声は一般的なステレオヘッドホンで再生できるので利用しやすい。
VRへの利用
立体音響技術が使われたこのイヤホンで録音すれば、VR映像の没入感も一層高いものになるはずだ。PCアダプタなしではiPhoneかiPadにしか接続できないという難点はあるものの、1万円以下でバイノーラル録音が可能なヘッドセットが購入できるのは画期的である。
これからバイノーラル録音を試してみたいiOSユーザにとっては、気軽に選べるデバイスとなりそうだ。機器の組み合わせによっては安価に3Dサウンド付きの360度映像を作ることができるため、同人映像作品や小規模な店舗のPR映像などへの利用にも適している。
参照元サイト名:Indiegogo
URL:https://www.indiegogo.com/projects/lifelike-world-s-first-3d-audio-recording-headset#/
参照元サイト名:Digital Trends
URL:https://www.digitaltrends.com/home-theater/scenes-lifelike-3d-audio-recording-headphones/
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