デジタルで描きだした空間が現実のように感じられる…というVRの特徴を、最大限活かせる分野のひとつが、遠隔操作だ。
たとえばラジコンをイメージしてほしい。
自分で車や自転車を、意図した通りに運転するのはさほど難しくないが、ラジコンを意図した通りに操作するのは、何度かチャレンジして慣れてからでないと難しい。
…というのも、自分の視点とラジコンから見た視点が異なるため、操作に違和感が発生してしまうためだ。
そこで役に立つのが、VR。
VRを使うことで、遠隔地の状況を自分の現実として感じることができ、遠隔操作に伴う違和感を大幅に減少できるのだ。
この記事では、VRを使った遠隔操作の事例についてご紹介したい。
VRによって遠隔操作が進化すると、どんなメリットがあるのか!?
VRを使うことで、遠隔操作の違和感が大幅に減少できるというメリットはわかった。
でも、より精密な遠隔操作が可能になることで、どんなメリットがあるというのだろう?
そのひとつは、人間が入ることが難しい場所での作業が可能になるということだ。
たとえば、我々日本人にとって忘れがたい東日本大震災の原発事故。
あの時、強い放射能にさらされるため、人では近づけない…という状況が発生した。
こうした災害時、VRによる遠隔操作が可能な重機やロボットがあれば、より円滑に災害への対処が行えることになる。
大成建設による重機の遠隔操縦システム「T-iROBO Remote Viewer」
大成建設株式会社による「T-iROBO Remote Viewer」は、ヘッドマウントディスプレイを用いることで、重機の遠隔操縦を可能とするシステム。
遠隔地から、実際に搭乗している感覚で操縦が可能となる。
まさしく、災害対応や高放射線状況下での作業を想定したシステムとなっており、人が立ち入れないような状況においても、復旧工事を行うことが可能となる。
ヘッドマウントディスプレイの動きに連動してカメラが動き、二眼カメラによって映像が立体的に捉えられるため、現場の状況を的確に把握し、より精密な作業が可能だ。
VRで手術支援ロボット「ダヴィンチ」による内視鏡手術のトレーニング
遠隔というと、相当距離が離れているように感じられるが、たとえ数メートル先であっても遠隔操作を行う必要があるというケースも存在する。
それが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による内視鏡手術だ。
腹部に小さな穴をあけ、そこから小型CCDカメラと手術器具を挿入して行う内視鏡手術。
通常の手術と異なり、メスで患部を露出させる必要がないため、患者さんの負担は少ない。
手術支援ロボット「ダヴィンチ」による内視鏡手術は、3Dカメラによって体内の状況を立体的に捉え、3本のロボットアームを用いて手術を行う。
非常に高度なテクノロジーだが、執刀医に、ロボットアームの操縦という従来の手術と異なる感覚が要求されてしまう課題が存在している。
ここでは、VRが「ダヴィンチ」による内視鏡手術の練習用として用いられている。
実際の手術に臨む前に、バーチャルに訓練を重ねて遠隔操作に慣れよう…という使い方だ。
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ドローンレースで活用されるVR
シリアスな事例が続いたので、続いては娯楽ジャンルの遠隔操作を。
ドローンの操縦技術を競うドローンレースにおいても、VRは導入されている。
ドローンにカメラを搭載して、映像をヘッドマウントディスプレイで確認。
これによってドローンの視点で状況を把握することが可能となる。
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遠隔操縦の行きつく先!?テレイグジスタンス
最後は、遠隔操縦の究極といってもよい技術、遠隔存在感「テレイグジスタンス」だ。
「テレイグジスタンス」は、ロボットを遠隔から操縦することで、遠隔地に自分の分身が存在するかのように行動できる…という技術。
日本ではTelexistence株式会社が研究開発を進めており、KDDI株式会社からの出資も受けているという状況だ。
遠隔操縦が発展すれば満員電車ともサヨナラできるかも!?
災害への対応や手術といったシリアスで重要な用途に用いられる遠隔操縦。
ただ、この技術が普及すれば、そうした用途以外にも、フツーの仕事に用いられる日がくるだろう。
はたらき方の多様化が進む今、在宅ワークを認める企業が多い。
とはいえ、現時点で在宅ワークが可能なのは、書類やデータの作成やプログラミング、チャットでのプレゼンテーション…といった在宅でもPCがあればこなせてしまう、一部の業務に限られてしまう。
しかし、これから先、遠隔操縦が進化していくことで、より多くの業態が在宅ワーク可能になるハズ。
そうなれば、満員電車に悩まされる毎日ともサヨナラできそうだ!
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