以前当メディアでも紹介したことのある企業、Ultrahaptics。先の記事では26億円というかなり大きな金額を獲得し、その資金を元にVRやARといった分野への進出も考えているとの情報を伝えた。
このUltrahapticsの共同設立者であるTom CarterがThe Memoのインタビューに答えている。同社の技術は、物理的なボタンを使うインターフェイスを全く異なるものに変えてしまうかもしれない。
存在しないオブジェクト
Ultrahapticsの技術は、何もない空間にボタンのようなオブジェクトがあると感じさせることができるものだ。カーステレオのボリュームダイヤルやキッチンの調理器具の火力調節ボタンを触らなくても、その近くに手をかざすだけで操作が可能になる。
しかも、操作するとボタンを押したり、ダイヤルを回したりしたことを感じさせるフィードバックが得られる。もちろん実際に何かに触れているわけではなく、精密にコントロールされた超音波によってフィードバックが生み出されている。
ジェスチャーを使って機械を操作するのは、SF映画ではしばしば見られるシーンだ。Ultrahapticsは超音波をコントロールすることによってそれを現実のものにしている。利用できる場面として車の中やキッチンが挙げられてきたが、他にも多くの場面で使えるだろう。
もちろん、現実には存在しないVRやARのオブジェクトに触れる感覚を作り出すことにも使える。身体に触れるタイプのハプティックデバイスを身に着けなくても、VRオブジェクトに触れた感覚が得られる。
「Ultrahapticsは、何もないところに感覚を作り出すことができます。ボタンやスイッチの感覚を作ることはもちろん、現実には存在しない3Dオブジェクトに触れることも可能です」
Carterはこのように、機器の操作に使うという用途だけでなくVR/ARとの連携についても示唆する説明をしている。VRへの入力を行うインターフェイスとしても、フィードバックの方法としても、Ultrahapticsの技術は期待できるものだ。
新しい操作方法
VRインターフェイスへの応用以前にUltrahapticsが目指しているのは、物理的なボタンを使ったインターフェイスに取って代わることだ。確かにUltrahapticsのもたらす新しいインターフェイスには、ボタンを使った従来の操作法にはない利点がある。
「物理的な入力ボタンは静的なもので、機能を変更することができません。
例えば音楽プレイヤーの場合を想像してみてください。空間を横にスワイプして次の曲を再生、タップすれば一時停止、上下にスライドして音量を変更といった操作が可能になります」
音楽プレイヤーを物理的なボタンでコントロールするなら、次の曲へ進むためのボタン、再生ボタンと停止ボタン、そして音量のダイヤルを使うことになるだろう。だが、Ultrahapticsの技術を使えば独立したボタンを用意しなくても全ての操作を行える。
場所を取らず、柔軟に機能を変更でき、デバイスのデザインを制限しないのが同社のインターフェイスのメリットだ。
音声コントロールよりも優れている
同様に物理的なボタンを使ったインターフェイスに取って代わるかもしれないのが、音声による入力だ。スマートフォンやPCのデジタルアシスタントは、ユーザの頼みを聞いて適切な操作を代行してくれるようになっている。
音声認識にはまだ認識精度の問題があるが、決められた表現以外の言葉にも対応できるようになりつつある。キーボードによる文字入力の代わりに、話した言葉をテキスト化する入力方式も可能だ。
Catrerは音声入力による操作が優れていることを認めている。ある時刻にアラームをセットしたい、観光地への道案内を開始したいといった簡単な命令をする方法として音声によるコントロールは便利だ。
だが、少し複雑なことをしようと思うと音声だけでは正しく操作できないことが多い。指示だと認識されずにウェブで検索されてしまうこともあり、結局は自分でソフトウェアを操作した方が早かったりする。
そもそも、直接触れる方が会話よりも素早く簡単に意図を伝えられる状況もある。肩を叩いて相手の注意を引いたり、背中を叩いて励ましや賞賛の気持ちを伝えるときがそれだ。
Ultrahapticsの未来
Carterは既に、ハーマンやボッシュといった企業と連携してボタンレスな未来の機器の開発に取り組んでいる。
車載オーディオシステムは、フィードバックのないタッチパネルだと運転中に操作するのが難しい。しかし、Ultrahapticsの技術を使えば道路から目を離さずにボタンレスなシステムの操作が可能だと彼は説明する。そこにボタンがあるのと同じようにフィードバックが得られるからだ。
VRとの好相性
製品化が進んでいるわけではないが、Ultrahapticsの技術はVRとの相性が非常に良い。
一般的なハプティックデバイスと違って、身体を覆う手袋やスーツを身に付ける必要がないのが大きな利点だ。また、ユーザが得られる感覚は単にVRオブジェクトに触れる感覚だけではない。
「あなたの指先から稲妻が迸り、掌から火球が飛び出すのを感じることができます。
これは『あなたが自分のいる世界だと信じているもの』に、新しいレイヤーを追加するようなものです」
VRからのハプティックフィードバックを得られることで、VRゲームはより深くリアルな体験になる。ゲーム以外のVRコンテンツでも、フィードバックの存在はそこに居る感覚を強化してくれるはずだ。
Carterが指摘するように、ユーザはVR体験のためにわざわざ専用のハプティックスーツを着たいとは思っていない。特別な道具を身に着けなくてもVRを感じられるようになることで、ユーザの抵抗感を弱めることに繋がるだろう。
Ultrahapticsはこれまでに多くの資金を獲得しており、VRの世界でも注目されている。2018年には消費者向けの製品も登場するはずだ。また、2020年代の初頭には商用車が発売される。
Carterは全てのインターフェイスが変わるとは考えていないが、「様々な場所でUltrahapticsのインターフェイスを見るようになるだろう」とコメントしている。
参照元サイト名:The Memo
URL:https://www.thememo.com/2017/05/23/ultrahaptics-founder-tom-carter-interview-virtual-reality-controller-buttons/
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