有名人をかたる「投資詐欺」や「サポート詐欺」などが猛威を振るっており、国もそんな状況に対してようやく重い腰を上げはじめました。
一方、かつて数多く見かけた「ワンクリック詐欺」は、すっかりと影をひそめてしまいました。今はどうなっているのでしょうか?
「詐欺の手口は忘れた頃に復活する」というのは筆者の持論。今ではワンクリック詐欺を知らない人も増えたことかと思います。そこで現在もワンクリック詐欺はあるのか否か、調べてみました。
■ ワンクリック詐欺とは
そもそも「ワンクリック詐欺」とは、その名の通り、たったワンクリックで、高額な請求をされてしまうと言う一時期流行った詐欺の手口です。
主に怪しいアダルトサイトや出会い系などに仕込まれていることが多く、閲覧していると突然請求画面が出てきてしまい、利用者を驚かせます。
しかしながら、ただ請求画面が出てくるだけで、実は本当に請求されたというわけではありません。強制的な文章で人を驚かせ、「振り込まなければ」と焦らせ、お金を騙し取る手口なのです。
仕組みとしては、現在大流行中の「サポート詐欺」の流れとほぼ同じです。
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▼サポート詐欺
送られてきたメールにあるURLもしくは、WEBサイトを見ているときにページや広告などをクリック。
↓
クリックすると突然、警告が表示される(警告音が鳴ることもある)。利用者を驚かせ、画面にある電話番号に連絡するよう促される。かけると金銭を請求される。
▼ワンクリック詐欺
送られてきたメールにあるURLもしくは、WEBサイトを見ているときにページや広告などをクリック。
↓
クリックするといきなり、有料サービスの会員登録完了を告げられる。もしくは、高額が記された請求画面が表示される。
その後は書かれている連絡先に連絡するよう強く促される。
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「サポート詐欺」か「ワンクリック詐欺」かの違いだけで、やっていることは似ているのでパターンさえつかめば、もし見かけたとしても騙される確率はぐっと減ります。
「○○に至急連絡してください」という文言があったとしても、素直に従ってはいけません。サポート詐欺もワンクリック詐欺も、対応の基本は「無視」です。
ちなみにサポート詐欺の場合は、警告画面が固定されてしまい「離脱できない」と勘違いするかもしれませんが、普通にブラウザを閉じるか強制終了、スマホの場合はアプリを終了させれば簡単に離脱できます。
■ 久しぶりに見たワンクリック詐欺
さて、近ごろでは「投資詐欺」や「サポート詐欺」などに押されて、「ワンクリック詐欺」は全くと言っていいほど見かけなくなっています。しかし、まだどこかに現役で残っているのではないか?と思い探してみたところ……。ありました。
クリック詐欺サイトを探してアダルトサイトを巡回すること約2時間。突然現れました。ババーン!
登録料金300,000円、うひゃー。
色々と「懐かしいな」と思う反面、まだこんなサイトがあるのかと、呆れてしまいます。しかもちょっとだけ、かつての「ワンクリック詐欺」から進化しておりました。それは今の時代に合わせた「スマホ対応」です。
■ スマホ対応が主流
スマホ対応として、どこを押しても簡単に電話をかけるような仕組みになっていました。これでは、単なる「ワンクリック詐欺」の被害だけでなく、このような悪徳業者に簡単に電話番号を渡してしまうハメになる。
裁判を起こすという内容も記載されております。スマホで見るとまた印象が異なります。見た印象の圧力が強いというか……もしかしたら、スマホの方が慌ててしまうかもしれません。
また、支払いは「本日中」と記されています。焦らせますねぇ……。
本日中に払うことができない、どうしよう……となるかもしれません。すぐ電話に繋がる仕組みもあり、より慌てて何も考えられなくなるかもしれませんが、もし電話アプリが起動したら秒で電話を切ってください。そのまま繋がってしまうと、相手の思う壺。
重ねてとなりますが、ワンクリック詐欺の基本の対策は「無視」。こちらから連絡さえしなければ、相手からは直接接触してこられません。実はむこうは何の情報ももっていないからです。
画面には、こちら側のユーザーエージェント情報(端末情報など)が出る場合もありますが、それはどのサイトでもわかる情報。そこからいきなり住所や名前、電話番号を特定さえることはありません。
ちなみに、もし電話をかけてしまうと、高額な請求を求められるのは勿論のこと、直接脅しをかけてくる可能性があります。仮にお金は払わずなんとかなったとしても、かけた以上は電話番号という個人情報だけはとられてしまいます。そうなると、カモリスト入りは避けられません。
また、ワンクリック詐欺サイトによっては、「会員登録完了画面」が出る前に、高額な料金(20万~40万)がかかることなどを、長文の中でしれっと記している場合もありますが、その場合でも「電子消費者契約に関する民法の特例」として救済対象となります。
総務省ではこの点について、「ワンクリック詐欺に注意」というページの中で次のように解説。「解約手続きや、連絡などはせずに無視しましょう」と呼びかけています。
「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」では、「電子消費者契約に関する民法の特例」として、消費者がコンピュータの操作ミスなどで、契約する意志がなく申し込んだ場合における救済措置がとられています。間違ってクリックした場合や、意図せずこうしたWebサイトを閲覧して、料金を請求された場合は、解約手続きや、連絡などはせずに無視しましょう。
(総務省HP「ワンクリック詐欺に注意」より引用)
とにかく突然「高額な料金を表示した会員登録画面」がでてきたら、絶対にスルー。これが大切です。それでも不安な場合には、消費者庁が開設している「消費者ホットライン(番号:188/いやや)」か、まわりのインターネットに詳しい人にでも相談してみてください。
ということで、まだまだ「ワンクリック詐欺」は生き残っていました。ただし、圧倒的に数が少なくほとんど出会う機会はないといっていいでしょう。遭遇する機会があるのはアダルトサイトの巡回者。そこに狙いを定めているのかもしれません。
とはいえ、先述の通り詐欺の手口は少しずつ形をかえてでも繰り返し流行ります。このワンクリック詐欺も、いつかゾンビのように蘇り、大流行することがあるかもしれません。そんな「いつか」に備えて、対応策を知っておいていただけると、調べたかいがあるというものです。
今回は古いタイプの詐欺の手口を紹介しましたが、詐欺の手口は驚くほど速いスピードでアップデートされています。手口が知られると、即座に対応といった感じ。
編集部ではこの1年、ネット詐欺に関し特に力を入れて紹介してきましたが、その対応の早さに驚きました。先月まで主流だったものが、手口が知られると、少し内容変更したものに変化。
つまり、「ワンクリック詐欺」や「投資詐欺」など、知られた詐欺だけに注意をしておけば良いというわけではないことを、肝に銘じておく必要があると言えるでしょう。
(たまちゃん)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By たまちゃん | 配信元URL:https://otakei.otakuma.net/archives/2024042301.html