リーグ戦もいよいよ折り返しとなったJリーグ。ホーム&アウェイ方式で開催されるため、前半戦で一度対戦した相手と、会場を変えて再度相まみえることとなります。
筆者が応援するJ3リーグ「鹿児島ユナイテッドFC」は、8月5日に隣県宮崎に本拠地を構える「テゲバジャーロ宮崎」と、同県新富町にある「ユニリーバスタジアム新富」で激突。サポーター歴1年生の筆者は、今回初めてアウェイの地に足を踏み入れました。
■ 隣県同士の対戦は白熱の「南九州ダービー」
サッカーでは同県や隣県のクラブとの対戦は「ダービーマッチ」と呼ばれ、クラブやサポーターたちにとって文字通りの「絶対に負けられない戦い」。
鹿児島と宮崎においても当然、お互いが同一カテゴリー内で戦うライバル同士であり、この一戦は「南九州ダービー」「焼酎クラシコ」などと呼ばれています。
2023シーズンの南九州ダービーは今節が2回目で、一戦目は4月16日に鹿児島ユナイテッドFCの本拠地「白波スタジアム」に宮崎を迎え入れての対戦。結果は3-3の引き分けという、双方打ち合いの手に汗握る試合でした。
それからおよそ4か月。前回が引き分けだったからこそ、勝ち越しがかかった今節には余計に熱が入ります。筆者は普段は家庭の事情もあり、ホームゲームのみの観戦スタイルを取っているのですが、隣県であれば日帰りできること、そしてどうしても勝ちたい相手だったことから、初となるアウェイ参戦を決意しました。
■ 緑豊かな自然に囲まれた場所にあるユニリーバスタジアム新富
鹿児島市内から新富町までは、高速道路を使っておよそ2時間半の距離。鹿児島の路線バス事業者である「南国交通」が主催する観戦バスツアーに申し込み、現地に赴きました。宮崎市街地から少し離れた、自然豊かな場所にあるスタジアムの立地にまずびっくり。
バスを降り、周囲を見回しながら歩いていると、隣接の駐車場からは次々と鹿児島ユナイテッドFCのサポーターたちがスタジアムへ向かって行く様子が。中には顔なじみのサポーターもおりご挨拶。ダービーマッチに居ても立ってもいられない方は、やはり多かったようです。
入場ゲートで手続きをし、そのままコンコースを通って、チケットを取ったアウェイゴール裏席へ。椅子のない芝生席は初めての経験だったので、少し勝手がわからず戸惑いましたが、そこでまたまた知り合いにばったり。合流させてもらい、ゴールラインのほぼ真後ろというとても良い位置を確保することが出来ました。
■ 宮崎ならではのスタジアムグルメに舌鼓
次にやることは選手のバス待ちとスタジアムグルメのチェック。荷物を置いた後、ゲートで再入場券をもらい、バスの停車場所に向かいます。そこで筆者が目にしたのは、想像を遥かに超える数の鹿児島ユナイテッドFCサポーターたちでした。
スタジアムへ向かう途中や座席でもうすうす気付いてはいましたが、周囲はまさに人、人、人の山。そう、そこはもはやアウェイではなく、ホーム白波スタジアムのような雰囲気。サポーターたちも相当に気合いが入っています。
選手たちの到着を迎えた後は、続けてスタジアムグルメを購入します。鹿児島と比べて出店数はやや少なめでしたが、チキン南蛮や鶏の炭火焼といった宮崎名物が多数。
中でも筆者は、黒と赤の幕が目を引いた「一本気」の鶏めしと鶏餃子を購入。どちらもとてもおいしく、あっという間に完食してしまいました。さすが食文化が豊かな宮崎。そのクオリティは決して鹿児島にも引けを取りません。な……なかなかやるな……!
■ サッカー専用スタジアムの迫力!ピッチとの距離の近さにびっくり
試合開始一時間前には、選手たちがピッチで試合前のウォーミングアップを開始します。このユニリーバスタジアム新富は、いわゆるサッカー専用スタジアム。座席とピッチの距離が非常に近く、選手たちが間近で見られるのもひとつの特徴です。
鹿児島ユナイテッドFCのホーム白波スタジアムは陸上競技場であり、基本的に高所の座席からピッチを眺める形になるため、この距離感は初体験。まさに目と鼻の先で躍動する選手たちの姿、そしてボールを蹴る音やはっきりと聞こえる声に、試合開始前からテンション爆上がりです。
一方、ピッチとの距離が近い分、選手が蹴ったボールがダイレクトに飛んでくる可能性もあります。当時もあわやという場面がありましたが、筆者の前方にいた方が見事はじき返してくれました。観戦にも非常に高い集中力が必要です。
■ 試合は敗戦……選手との距離が近い分、余計に悔しい
さて、そうしている間に時刻は17時。いよいよキックオフの時間です。ゴール裏芝生席はもちろん、メインスタンドのアウェイ席も、鹿児島ユナイテッドFCサポーターで埋め尽くされ、選手を後押しする準備は万端でした。
しかし……結果は2-3で惜しくも敗戦。試合の詳細はここでは省略しますが、本当にあともう一歩、というところでわずかに力及ばず。筆者のアウェイ初参戦はほろ苦い結果となりました……。
もちろん勝負ごとに絶対はなく、たとえ多くのサポーターが駆け付けたからといって、勝利が保証されるわけではありません。しかし、優勝、昇格のためにはなんとしても勝ちたかった試合、そして何よりダービーマッチに敗北したことに、その場で呆然と立ち尽くす筆者。
試合後には選手や監督、スタッフたちが、サポーターの前に来て挨拶を行います。座席とピッチとの距離が近い分、選手たちの悔しそうな表情が良く見え、とてもやるせない気持ちになりましたが、最後まであきらめなかった選手たちを称えて、サポーターたちも最後のコールを行います。本当に悔しい、勝ちたかった。勝たせたかった。
■ まさかの宮崎サポからの「鹿児島ユナイテッド!」コール
選手たちがロッカールームへ下がり、失意のまま帰る準備をしていたその時。……なんとテゲバジャーロ宮崎の応援席側から、聞きなれた「鹿児島ユナイテッド!」のコールと手拍子が聞こえてきたではありませんか。
予想だにしていなかった事態にびっくり。初めはなにが起きたのか理解できませんでしたが、それにはきっと「激励」の意味が込められている、そう気付くのに時間はかかりませんでした。
試合が終わればノーサイド。鹿児島と宮崎はライバル関係にありますが、その誇り高きスポーツマンシップには思わず感服せざるを得ません。自らの行動で示して見せたテゲバジャーロ宮崎のサポーターたちに、試合の勝ち負け以上に大切なことを、改めて教えられた気がします。
■ 勝っても負けても健闘を称え合う。これこそスポーツ観戦のあるべき姿
結果的には敗戦に終わった初めてのアウェイ参戦でしたが、サポーター歴2年目を目前に、このダービーマッチを観戦できたことは自身にとっても大きな経験でした。勝っても負けても、選手たちやお互いの健闘を称え合う。これこそがスポーツ観戦のあるべき姿であると思います。
サッカーの応援、というともしかするとちょっとマイナスのイメージを持っている方もいるかもしれませんが、必ずしも全てがそうではありません。こんなにも素晴らしいサポーターだっているのです。
おかげで負の感情を残すこともなく、すっきりとした気持ちで帰路に就くことが出来ました。しかし、1敗は1敗。そこから目を背けるわけにはいきません。リーグ後半戦はまだまだ始まったばかり。これからも全力で選手の後押しをし、チームの行く末を信じて応援を続けたいと思います。
(山口弘剛)