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子供への「科学者を描いて」から分かること


世界の技術を発展させ、今まさに社会を支えている科学者たちの存在は貴重です。

そして、そうした科学者を目指す子供たちの存在も、同じようにかけがえのないものです。

では、子供たちは「科学者」という存在を、一体どのように思い描いているのでしょうか。

その答えは、研究者たちが50年以上にわたって行ってきた、「科学者を描いてください」と子供に頼む課題によって明らかになってきました。

米国ラトガース大学(Rutgers University)の心理学教授、ヴァネッサ・ロビュー(Vanessa LoBue)氏は、子供の描く科学者像が、時代と年齢によってどう変わるのかを解説しています。

目次

  • 子どもたちに「科学者を描いて」と頼む理由とは?
  • 「女性の科学者」を描く子どもが増えている

子どもたちに「科学者を描いて」と頼む理由とは?

Draw a Scientist(科学者を描いてください)」という課題は、子供の絵の上手さや芸術的表現を評価するためのものではありません。

研究者が注目しているのは、子供が頭の中で自然に思い浮かべる「科学者とはどんな人か」というイメージです。

性別や外見、職業としての印象といった無意識の理解を、言葉ではなく絵という形で引き出すために考案された方法なのです。

とくに注目されてきたのが、科学者の性別です。

科学技術分野では長い間、男性が多数を占めてきました。

実際、1966年から1977年にかけて行われた初期研究の結果は、非常に偏ったものでした。

集められた絵のほぼすべてに描かれていたのは男性の科学者で、女性科学者を描いた子供は1%にも満たなかったのです。

この傾向は男の子だけでなく、女の子にも同様に見られました。

つまり、科学者と聞くと男性を思い浮かべる見方が、当時の子供たちの間に広く共有されていたことになります。

研究者たちは、この結果が単に「子供は男性を描きやすいから」ではないことも検証しました。

科学者と教師の両方を描かせると、科学者は男性、教師は女性として描かれる傾向が明確に分かれました。

この結果から、子供たちは職業ごとに性別イメージを描き分けており、幼いころから「科学者=男性がなるもの」という固定観念を持っていることが分かります。

しかし近年では、その傾向も変化してきています。

「女性の科学者」を描く子どもが増えている

2018年の研究では、約50年分の調査をまとめた大規模なメタ分析が報告されています。

この分析には78の研究と2万人以上の子供の描画データが含まれています。

全体としては、描かれた科学者の約73%が男性でした。

しかし時代の変化とともに、男性科学者を描く割合は着実に低下していることも分かりました。

とくに変化が顕著だったのは女子で、1983年には女子の99%が男性科学者を描いていたのに対し、近年ではその割合は約55%まで下がっています。

これは、科学者に対するイメージが徐々に多様化してきたことを示しています。

一方で、年齢に注目すると別の傾向が浮かび上がります。

7歳から8歳頃までの子供は、自分と同じ性別の科学者を描く傾向が強く見られます。

しかし年齢が上がるにつれて男性科学者の割合が再び増え、14歳から15歳では男女ともに男性が女性の約4倍描かれるようになります。

この変化の要因としてはは、「子供が成長するにつれて現実社会の構造をより意識するようになる」ことが挙げられます。

UNESCO Institute for Statisticsの推計として、2024年時点で女性は世界のSTEM(科学、技術、工学、数学の分野)の労働力の約28%にとどまっています。

一方、非STEM労働力では女性が約47%を占めており、その差は依然として大きいものです。

また、年齢が上がるほど、「白衣や眼鏡といった外見を描く」傾向が大きくなることも報告されています。

これらの研究が本当に示しているのは、子供が偏見に満ちているということではありません。

むしろ、子供は社会の姿を驚くほど正確に映し出す存在だという点です。

だからこそ、家庭や教育、メディアの中で、どのような科学者像が示されるのかが重要になります。

これからも、子供に「科学者を描いて」と頼んでみることは大切です。

子どもたちが描くその絵は,未来の科学を支える環境がどこまで整っているのかを映し出す、小さな鏡なのです。

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参考文献

Why the “Draw a Scientist”Test Matters
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-baby-scientist/202512/draw-a-scientist

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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