占いアプリ「あなたは今、仕事で悩みを抱えてますね」
あなた「うわ、超当たってる!」
…なんて経験、過去にしたことありませんか?
だとすると、あなたは「バーナム効果」のトリックにかかっているかもしれません。
バーナム効果とは、誰にでも当てはまるようなことを「自分にピッタリ当てはまる」と感じてしまう心理効果のことです。
では、なぜ私たちはバーナム効果にかかってしまいやすいのでしょう?
その原因の解説を含め、バーナム効果の具体例から日常生活に応用するためのテクニックまで見ていきましょう。
目次
- なぜ人は「バーナム効果」にかかりやすいのか?
- バーナム効果を「恋愛」や「仕事」に応用するテクニック
なぜ人は「バーナム効果」にかかりやすいのか?
バーナム効果は1940年代にアメリカの心理学者バートラム・フォアが検証したことで世に広まりました。
そのため、フォアラー効果とも呼ばれますが、一般的に定着している名称はバーナム効果の方です。
これは1956年にアメリカの心理学者ポール・ミールにより、興行師のP・T・バーナム(1810〜1891)が生前に残した「誰にでも当てはまる要点というものがある(We’ve got something for everyone)」との言葉にちなんで命名されたもの。
P・T・バーナムといえば、2017年の映画『グレイテスト・ショーマン』でヒュー・ジャックマンが演じたあのサーカス経営者です。
バーナムは人々を惹きつけるために、誰にでも当てはまるような言葉を巧みに使っていたといわれます。
バーナム効果は具体的にいうと、ほとんどの人に当てはまるような表現や説明にも関わらず、それが自分だけに向けられている言葉に感じられる心理現象のことです。
バーナム効果は日常の色々なシーンで多用されています。
最もよく引き合いに出されるのが「占い」です。
例えば、占い師や占いアプリから「あなたはおおむね元気に過ごせていますが、最近、仕事で悩みを抱えていますね」と指摘されると、「あぁ、多分あのことだな」と思うのではないでしょうか。
しかし、そもそも仕事で悩みがまったくない人の方が珍しく、大抵の人は悩みの1つや2つくらい常に抱えているものなので「うわ、当たってる」と感じてしまうのです。
占い師や占いアプリはこうしたバーナム効果で先手を打つことで、自分のアドバイスの信憑性を高めています。
これと同じことは血液型診断や星座占い、おみくじなどにも当てはまります。
では、なぜ私たちはこれほど簡単にバーナム効果にかかってしまいやすいのか?
実はその原因には、私たちの深層心理に根ざしている「確証バイアス」が大きく関わっています。
確証バイアスとは、自分の悩みや願望を肯定してくれるような情報ばかりに目が行き、自分にとって不都合な情報は無視する心理傾向のことです。
私たちは誰にでも、自分の人生を有意義で幸せなものにしたいという本能が働いています。
そのため、私たちは今抱えている悩みを指摘してくれたり、自分の性格や行動を肯定してくれるような言葉に対して、「これは私にピッタリ当てはまる」「やっぱり俺は間違っていなかったんだ」と思いたくなるものなのです。
ですから「A型のあなたは几帳面ですね〜」とか「O型のあなたはとてもおおらかですねぇ」といった物言いに気分を良くしてしまうわけです。
しかしバーナム効果は占い師や心理カウンセラーだけの特権ではありません。
使い方次第では、どなたでも仕事や恋愛にうまく活かすことができるのです。
バーナム効果を「恋愛」や「仕事」に応用するテクニック
バーナム効果は日常生活に応用することで、仕事やプライベートを充実させることができるテクニックです。
具体的には、バーナム効果を取り入れることで「コミュニケーションの円滑さ」が高められます。
例えば、初対面の人に「〇〇さんはスリム体型ですから、体の線が引き立つ服がよく似合いますね」などと褒めることで、相手の気分を高めて、距離感をぐっと縮めやすくなります。
この場合、ポイントは「〇〇さん」と相手の名前を主語にすることです。
先ほどの例文ですと、実際には世の中にスリム体型の人はごまんといるので、その服が似合う人はたくさんいるでしょう。
しかし名前や人称(「あなた」とか「キミ」も有効)を主語に持ってくることで、相手が「私だけのために話してくれている」と感じてよりバーナム効果が起きやすくなり、あなたへの信頼度も高まって、その後のコミュニケーションがスムーズになると期待できます。
これは恋愛面でも応用できるテクニックです。
「〇〇さんって、とっても純粋ですね」とか「〇〇さんは人の気持ちがよくわかる方ですね」というと、たとえそれが多くの人に当てはまることであっても、相手は「私ってやっぱり純粋なのかな」「俺って人を思いやることが上手いんだ」と思うようになります。
そして相手はその気づきを与えてくれたあなたに好感を持つようになるでしょう。
また仕事面では、あなたがチームのリーダーだとすると、部下に対して「きつい仕事なのに君はよく頑張ってくれているね」と話しかけると、部下は「この先輩は自分のことをよく観察してくれている」と、あなたへの信頼度も高まりますし、部下の仕事の生産性も高まると期待できます。
これは部下から上司に対してでも同じです。
「先輩って厳しさの中にも優しさがありますよね」などと言ってみると、上司が優しく声かけしてくれることが今まで以上に増えるかもしれません。
このようにバーナム効果はうまく応用することで、仕事やプライベートにおけるコミュニケーションを円滑にし、他者との親密さをより深められると考えられます。
ただしこれは何事にも言えることですが、バーナム効果の使い過ぎや悪用は厳禁です。
バーナム効果は誰にでも当てはまる漠然とした物言いをするため、使いすぎると「この人の言ってることって、いつも薄っぺらいな」とか「具体性がないな」と逆に信頼度を落とすことにつながりかねません。
また相手を巧みに騙すような悪用に使っていると、相手もあなたのやり口を疑い始めて、不信感や不快感を抱く可能性があります。
バーナム効果を使うときは正しく適度に、そして相手への思いやりを持つようにしましょう。
参考文献
Are You a Victim of the Barnum Effect? Understanding the Psychology of Generalizations
https://www.verywellmind.com/barnum-effect-7561323
Don’t Get Tricked by the Barnum Effect
https://health.clevelandclinic.org/barnum-effect
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部