多くの人が「スマホを触っていて、気づいたら何時間も経っていた」「寝る前に画面をスクロールする手が止まらず寝不足」なんてことを経験したことがあるはず。
最近では、デジタルネイティブであるZ世代の人々でさえ、このようなスマホ依存に危機感を覚え、特定のアプリやスマホの使用を制限しています。
こうした背景を下に、最近海外では「ガラケー」に再び注目が集まっています。
ガラケーといっても、単に過去のガラケーをそのまま使用するわけではありません。
最新の技術力を用いつつ、不必要な機能をあえて制限した「高性能なガラケー」の需要が少しずつ高まっているのです。
これを用いることで、現代人が陥りがちなスマホ依存から脱却できるかもしれません。
目次
- 広がる「スマホ依存」 デジタルネイティブなZ世代も悩んでいる
- スマホ依存対策には最新の「高性能ガラケー」がおすすめ
広がる「スマホ依存」 デジタルネイティブなZ世代も悩んでいる
スマホが登場して以来、私たちは瞬く間に、スマホのとりこになりました。
多くの人は、SNSや動画、その他のアプリに夢中であり、毎日何時間もスマホを触っています。
このことは、単に私たちが時間を無駄に使ってしまうだけの問題ではありません。
近年では、そのような長時間のスマホの使用が、私たちの脳や精神に悪影響を及ぼしていることが分かっています。
例えば、いくつかの研究は、スマホの普及と使用が、10代や比較的若い成人の不安や抑うつ症状、孤独感を増加させていると報告してきました。
また2022年、ハーバード大学の研究者は、ソーシャルメディアの使用が、「中毒性物質で活性化されるのと同じ脳領域」を刺激していると報告しました。
特に子供たちにおけるソーシャルメディアの過度な使用は、精神衛生の悪化と結びついています。
そしてこのような悪影響は、スマホ依存になっている多くの人は実感しているでしょう。
私たちは、ついついスマホの画面のスクロールに多くの時間を費やしますが、それによって幸せになるどころか、後悔したり憂鬱な気持ちになったりすることが少なくないのです。
また、ソーシャルメディアを使用する中で、「理想の自分を作り上げてネット上にアップしなければいけない」という強いプレッシャーを感じる人もいます。
同時に、自分よりもはるかに華やかに見える「他人の人生」と「自分の人生」を比較し、現実に満足できず、絶望する人も少なくありません。
こうした背景にあって、スマホ依存から抜け出すための取り組みに注目が集まっています。
それは、デジタルネイティブであるZ世代の人々でも同様であり、ある企業の調査では、Z世代の約46%が、何らかの方法で、スクリーンタイム(アプリやデバイスを使った時間)を削減しようとしています。
例えば、ソーシャルメディアの使用時間に制限を設けるアプリをインストールする人がいます。
また、誘惑の多いスマホをやめて、ガラケーに変更する人もいます。
多くの人に見放されてきた「ガラケー」に、再び注目が集まっているのです。
スマホ依存対策には最新の「高性能ガラケー」がおすすめ
スマホ依存対策として、近年、ガラケーに再び注目が集まっています。
「ガラケー」という名称は、スマホ以前からある携帯端末「フィーチャーフォン」を指す日本独自の俗称であり、「ガラパゴス化した携帯電話機」という意味から来ています。
英語圏ではフィーチャーフォンのことを、ダムフォン(dumb phone)と呼んでいます。
「dumb」は、「バカ。まぬけ。時代遅れ。退屈」などを表現する言葉であり、ダムフォンは、スマートフォンとは対照的な「退屈な電話」という意味があります。
(ダムフォンとガラケーでは若干ニュアンスが異なりますが、本記事ではこのタイプの携帯電話については日本で一般的な「ガラケー」に統一して表記します)
このためガラケーは古臭い携帯電話というイメージを抱いてしまいますが、最近は、スマホで利用可能な基本的な機能は全て備わっている「高性能なガラケー」が登場しています。
そのようなガラケーには、通話・SMSなどの基本的なコミュニケーションツール、カメラや音楽プレイヤー、カレンダー、メモ機能など、日常生活に必要な機能が備わっています。
昔のガラケーとは異なり、これら基本ツールでは最新の通信・処理速度が保証されているため、ユーザーをイライラさせることはありません。
一方で、SNS(Instagram、X・Twitter、Facebookなど)に関連したアプリのインストールが制限されているものがほとんどです。
また動画視聴や高解像度のゲームなど、マルチメディアに関する機能も基本的に非対応か、かなり制限されたものとなっています。
さらに、綺麗な写真を取るためのカメラはついているものの、それらの写真や動画を編集したり、シェアしたりする機能が搭載されていないケースもあります。
(カメラ自体が制限されている場合もあります)
実際、こうした最新のガラケーは、子供を持つ親からの高い需要があるようです。
アメリカのある販売員は、「子供に初めての携帯電話を与えたい親はたくさんいますが、インターネットには夢中になってほしくないようです」と述べています。
また、子供がスマホ依存になることを避けるためには、親自身がスマホ依存から抜け出す必要があります。
そのため5歳の子を持つある母親は、スマホからガラケーに変更し、「この携帯電話は、私自身の習慣を見直すのに役立ちました。息子と過ごす時間がいっそう充実したのです」と語っています。
別の例として、カナダに住む16歳の少年の行動も挙げられます。
Z世代である彼は、あえて通話やマップなどの限られた機能しかない携帯電話に変更し、そのメリットを次のように語っています。
「友達はスマホに1日4~5時間使っています。僕も買い替える前は同じくらい使っていました。でも今は、携帯電話に使う時間は1日たったの20分です」
こうした例が示すように、最新のガラケーを購入することは、デジタル機器と正しい距離を保つのに役立ちます。
デジタル機器をすべて避けて世の中とのかかわりを無くしたり、デジタル機器に依存して中毒になったりと、どちらか一方に極端に偏るのではなく、上手にデジタル機器との関係を築くことができるのです。
こうしたメリットに多くの人が気づきはじめた結果、例えば携帯電話メーカーHMD Globalは、アメリカでの売り上げが2022年に増加し、毎月数万台販売したと報告しています。
またある専門家は、「少なくとも今後5年間で、ガラケーの年間販売数が5%増加する可能性がある」と述べています。
そして一部の企業は、こうした変化を受け、「人々が自分の生活の質を高めるテクノロジー」として最新のガラケーの開発に力を入れています。
スマホに比べてできることが少ないために馬鹿にされていたガラケーが、逆にスマホよりできることが少ない点を再評価されるというのは興味深い時代の変化ですね。
今後は、便利で多機能なスマホではなく、現代技術の必要なところだけを組み込んだ最新のガラケーの需要が高まっていくことでしょう。
もし私たちがスマホ依存で悩んだり疲れたりしているなら、思い切って最新のガラケーに変更するのもアリかもしれません。
参考文献
Why Gen Z are buying “dumbphones” to limit screen time
https://www.zmescience.com/science/news-science/gen-z-are-buying-dumbphones-to-limit-screen-time/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部