一目惚れとは、一目見ただけで恋心を抱く現象を指します。
漫画やドラマでは、運命的な出会いやロマンチックな瞬間を象徴する場面としてよく描かれますが、実際のところこれはどういった現象なのでしょうか。
普通であれば、相手に対する理解を深めていく中で、徐々に好きになるのが自然な流れですが、それらのステップを経ずに付き合うカップルにはどのような特徴があるのでしょうか。
蘭フローニンゲン大のフロリアン・ゾソク(Florian Zsok)氏らは、参加者に異性の写真を観察、あるいは実際に対面した後に好感度や親密度、相手にどのような感情を感じているか(情熱、親密さ、献身さ)、そして一目惚れしたかを評価させ、一目惚れの実態を検証しています。
研究の詳細は2017年11月17日付で心理学雑誌『Personals Relationship』に掲載されました。
本記事では、一目惚れの実態をはじめ、友人から付き合うことになったカップルと一目惚れカップルの違い、そしてその関係性は長期的に続くのかを解説します。
目次
- 一目惚れとはどのような現象なのか
- 実は意外と上手くいくことが多い一目惚れ
一目惚れとはどのような現象なのか
みなさんは「一目惚れ」に対してどのようなイメージを持っていますか。
漫画やドラマで表現されるような「運命的な出会い」や「ロマンチックな瞬間」などのポジティブなイメージを持つ一方で、「短期的な関係で終わりそう」などマイナスのイメージを持っている人もいるでしょう。
多くの人の予測と一致して、ほとんどの恋愛関係は友人関係から始まり、長期的な関係を経たうえで形成されます。
例えば、付き合うまでにどのような経緯を辿るのかを調べた研究としてカナダのヴィクトリア大学の研究があります。
その結果によると、約66%のカップルは友人関係から始まり、数カ月から数年の期間を経て恋愛に進むことが多く、平均してその期間は約22カ月かかることが分かっています。
この恋愛関係に進むかどうかで特に重要なのが、性格や顔などの「類似性」で、共通点が多い相手の方が魅力度が高いと評価しやすいこともわかっているようです。
なぜなら共通点が多い相手の方が、行動や思考パターンが似る可能性が高く、共感しやすいため、親密な関係に発展しやすいからです。
しかし、一目惚れから始まったカップルは、これらの過程を通らず、相手を一目見た時から相手に対する好感度が高い状態で始まります。
一体一目惚れとはどのような現象なのでしょうか。
蘭フローニンゲン大のフロリアン・ゾソク氏(Florian Zsok)らは、一目惚れの実態を調べるため、オンラインと対面の実験下で研究を行いました。
実験では、男女396名に異性の写真を観察、あるいは実際に対面した後に、相手にどのような感情を感じているか(情熱、親密さ、献身さ)、そして一目惚れしたかを評価してもらっています。
情熱、親密さ、献身さについて尋ねたのは、多くの恋愛研究で用いられている「愛情の三角理論(愛が3つの要素から成り立っているとする考え)」に基づいています。
「愛情の三角理論」は追試などで理論の妥当性と信頼性が確認されており、それぞれの要素の強弱で「イチャイチャカップル」などの人間関係の形を予測できます。
さて一目惚れをした人とそうでない人で、愛情や相手に対する魅力度の評価にどのような違いはあったのでしょうか。
実は意外と上手くいくことが多い一目惚れ
実験の結果、一目惚れをしたかどうかと関連があったのは、相手に対する情熱や親しみ、献身性の強さではなく、顔の良さと身体的な魅力度の高さだったのです。
具体的には、身体的な魅力度(5点満点)が1点上がると、一目惚れをする確率が約9倍高くなります。
つまり、一目惚れが起きるどうかかは、相手に対する情熱などの愛情を構成する要素とは関係がなく、相手のルックスによって決まっていると言えるでしょう。
また、一目惚れのしやすさには性差がありませんでした。
こうした結果を見ると、やはり一目惚れとは、ドラマや漫画のようなドラマチックな要素は薄いように感じられます。
このように相手の見た目に反応して、恋愛感情を抱いているだけなのだから、一目惚れから始まる恋愛関係は長続きしないと考える人も多いでしょう。
ところがこの疑問について調査した、蘭フローニンゲン大のディック・バレルズ氏(Dick Brelds)らの研究によると、一目惚れカップルが短期間で別れやすいという印象は間違っているという。
彼らは137組の夫婦または同棲中のカップルをランダムに選出し、結婚または同棲に至った経緯を尋ね、「一目惚れで恋人になったカップル」と「ある程度お互いに認知していて恋人になったカップル」と「長い友人関係を経て恋人になったカップル」に分類し、交際期間を比較しました。
すると調査の結果、一目惚れで付き合うようになったカップルは、他の経緯を経て恋人になった夫婦・カップルと比較して、特に別れやすい傾向はなかったのです。
なぜ単に見た目で惚れて付き合い出したカップルと、お互いをきちんと知り合う期間を持った上で付き合ったカップルで交際期間に差がでなかったのでしょうか?
これについては、見た目が意外と相手の趣味や性格を予測する際に、助けになっている可能性が示唆されます。
確かに趣味や性格は、ファッションにも影響を与えやすい傾向は考えられます。動きやすい格好を好む人は運動が好きだったり、この人オタクなんだろうなあと思う格好の人がいたり。
それは一種の偏見とも言えますが、多くの場合その印象は大きく間違ってはいないことが多いのでしょう。その点が一目惚れカップルの交際期間にも現れているのだと考えられます。
性格などの「類似性」は、相手との関係性を深め、恋愛関係に進むかに影響する重要な要素です。それをどういった手がかりから見つけるかは人それぞれです。見た目を手がかりにするのも決して間違った方法ではないでしょう。
見た目に惚れるというのは、なんだか軽薄な印象も受けてしまいます。しかし実際のところは、一目惚れもそんなに悪い恋愛の始まり方ではないのかもしれません。
参考文献
Can People Really Fall in Love at First Sight?
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/why-bad-looks-good/202201/can-people-really-fall-in-love-first-sight
Is Love at First Sight Real?
https://www.psychologytoday.com/us/blog/meet-catch-and-keep/201801/is-love-first-sight-real
元論文
What kind of love is love at first sight? An empirical investigation
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/pere.12218?campaign=wolearlyview
Love at first sight or friends first? Ties among partner personality trait similarity, relationship onset, relationship quality, and love
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0265407507079235
The Friends-to-Lovers Pathway to Romance: Prevalent, Preferred, and Overlooked by Science
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/19485506211026992
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしていました。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。
編集者
ナゾロジー 編集部