人間には使いやすい手、いわゆる利き手があることがほとんどです。
そして人間は多くが右利きで、左利きは非常に少なく、世界人口の約10%ほどとも言われています。
実は人間以外の多くの動物にも「利き手」が存在しますが、その左右の割合はさまざまです。
さらに動物も人間と同様、性別や性格によって利き手が異なることが報告されています。
そこで今回はイヌの利き手の割合と利き手からわかるイヌの性格についてご紹介します。
目次
- イヌの利き手は人間ほど偏りがない
- イヌの利き手でわかること
イヌの利き手は人間ほど偏りがない
イヌにも個体によって利き手、つまり「使いやすい前足」が存在します。
しかし、人間とは違いイヌの右利き、左利きの割合には大きな偏りはなく、両利きの割合も比較的多いようです。
また、人間は「お箸を使うのもボールを投げるのも右」といったようにどのような行動に対しても利き手が一貫している割合が大きい傾向にあります。
一方、イヌは階段を上るときなどは決まった利き手から上るものの、おもちゃで遊ぶときにはそのときによって使う手が違い利き手があいまいになるそうです。
イヌの場合は行動によって利き手が変わるのですね。
オスとメスで左右の割合が異なる
またアメリカ・リンカーン大学のカースティ・ラヴェラック(Kirsty Laverack)氏らの研究グループが行った大規模な調査ではイヌの利き手の傾向に性別が関わっていることが明らかになりました。
イヌの利き手の傾向は性別を無視するとほぼ同じ割合(右:58.3%、左:41.7%)ですが、性別で分けると右利きの割合がオス56.1%、メス60.7%となっていました。
つまり、メスとオスで比べると、オスの方が左利きの割合が大きいことになります。
この「オスの方が左利きの割合が大きくなる」という傾向は人間やネコなど他の動物でも見られるものであり、アンドロゲンという男性ホルモンが右脳の発達を抑制することに起因するとされています。
このように右利き、左利きは脳の発達と深い関係があります。
逆に言えば、利き手を知ることで脳の発達を知ることができ、それに不随する様々なことを知ることができるのです。
イヌの利き手からわかることはどのようなものがあるのでしょうか?
イヌの利き手でわかること
前述した通り、利き手によって右脳、左脳どちらの脳を多く使っているかがわかります。
体の動きを司る筋肉は右脳が左側、左脳が右側をコントロールしているため、右利きなら左脳、左利きなら右脳が発達しているということです。
脳が右と左で分かれているのはもちろん人だけではなく、同じ脊椎動物であるイヌも同様ですので、イヌの利き手からも右脳と左脳の発達による違いが出てくることは予想できます。
利き手でわかるイヌの性格
人間の場合、右脳は直観的な思考、左脳は論理的な思考を司ると言われています。
このため、右脳が発達している左利きは天才気質な芸術家肌、左脳が発達している右利きは努力家の学者肌なんて言われたりしますね。
イヌの場合は、どうやら左利きの方が「用心深い」傾向にあるようです。
カナダ・クイーンズ大学のデボラ・L・ウェルズ(Deborah L Wells)氏らの研究によると、イヌにおやつの場所を事前に教え、もう一度繰り返した際に、右利きのイヌは躊躇なく短時間でおやつに向かったのに対し、左利きのイヌはおやつにたどり着くまで時間がかかりました。
何度も道のりがあっているか確認しながら進む様子は右利きのイヌとは異なっており「ネガティブなことを想像する」あるいは「用心深い」性格だと結論付けられています。
人間の場合だと、直観的な左利きの人の方が躊躇なくすすみそうなので、意外な結果です。
両利きとそれ以外では特徴が異なる
また、イヌの場合、利き手がない「両利き」のイヌも多いのですが、右か左の利き手があるイヌと両利きのイヌを比べてもその性格に差がありました。
同大学のシャニス・バーナード(Shanis Barnard)氏らが行った研究では右利き、左利き、両利きのイヌに対し、社交性・攻撃性などの性格特性を調査しました。
その結果、イヌの利き手の左右差では有意な差が見られませんでしたが、両利きのイヌは利き手があるイヌよりも攻撃性や恐怖心が強いことがわかりました。
利き手チェックでイヌのストレスが減らせるかも
このようにイヌの利き手がわかればそのイヌの考え方の傾向や性格特性を知ることができます。
利き手によって性格が違うのですからもちろん様々な適正があり、例えば盲導犬は右利きの方が訓練の成功率が高いそうです。
また左利きのイヌはストレスへの耐性が低く、救助犬などのストレスが多い職業には向かないのだとか。
職業犬でなくても、性格特性がわかれば効果的なトレーニング方法などを知ることができます。
イヌの利き手や左右性を知り、それぞれのイヌに合うトレーニングを行っていけるといいですね。
参考文献
Are dogs left- or right-handed? What the science says https://theconversation.com/are-dogs-left-or-right-handed-what-the-science-says-196978元論文
Stability of motor bias in the domestic dog, Canis familiaris https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0376635717304837 The effect of sex and age on paw use within a large sample of dogs (Canis familiaris) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S016815912100085X Cognitive bias and paw preference in the domestic dog (Canis familiaris). https://doi.org/10.1037/com0000080 Association between lateral bias and personality traits in the domestic dog (Canis familiaris). https://doi.org/10.1037/com0000074