猫のしっぽが短い理由とは?
James Jeong/shutterstock.com
日本の野良猫はしっぽが短い子が多いですが、海外では珍しいそうです。しっぽが短い子を発見して、あえてそれを猫種として繁殖させたこともあるとか。
それにしてもどうしてしっぽが短い猫が産まれてくるようになったのでしょうか?もともと猫のしっぽは長いのが普通でした。野生の猫を観察してみるとしっぽは長いですよね。ライオンのしっぽも長いのが普通です。
ここでは猫のしっぽが短い理由について取り上げます。猫のしっぽと遺伝の関係、そして日本では迷信が関係していることについて解説します。加えてしっぽが短い猫種、しっぽが短い猫の特徴についてもまとめます。
ではまず、しっぽが短い猫が産まれてくるようになった理由を取り上げてみましょう。
遺伝が関係している
猫の短いしっぽは突然変異によるものだと言われています。そして遺伝によってしっぽの長さが子猫に受け継がれていくようになりました。
短いしっぽは優性遺伝子、長いしっぽは劣性遺伝子なので、短いしっぽの子猫が産まれやすいと言われています。長いしっぽと短いしっぽの両親からは、短いしっぽの子猫が産まれてきやすいということです。
とはいえ短いしっぽは突然変異によるものなので、繁殖が進むとだんだんとしっぽの短い猫は少なくなっていくはずだそうです。なるほど、そうでないとすべての猫のしっぽが短くなってしまいますよね。海外では短いしっぽの猫が珍しがられるということなので納得です。
それにしても日本ではしっぽの短い猫が多いですが、それには何かほかの理由があるのでしょうか?
日本では迷信が関係している
日本に短いしっぽの猫が多いのは、迷信が関係していると言われています。これは江戸時代の「猫又」という伝説が関係しているようです。
猫又とは猫の妖怪のことです。猫が歳をとると、やがて長いしっぽが二股に分かれて恐ろしい妖怪になるという言い伝えです。記録によると猫は10年も生きると人間の言葉を理解できるようになり、それから4~5年すると不思議な妖力を持つようになるそうです。
江戸時代の浮世絵にも猫又が描かれるようになり、しっぽの長い猫は猫又になりやすいと信じる人が増えました。猫又になられては困るので、しっぽの短い猫が重宝されるようになり、あえてしっぽの短い猫を繁殖するようになったと考えられています。なるほど日本で短いしっぽの猫が多いのは、猫又の迷信から始まったようです。
しっぽが短い猫種5選
Ievgeniia Miroshnichenko/shutterstock.com
突然変異や遺伝によってしっぽが短い猫が誕生するようになりましたが、これを特徴として、あえて猫種として繁殖することが行われるようにもなりました。では、しっぽが短い猫種を5つ見ていきましょう。
アメリカンボブテイル
1960年代に発見されたしっぽの短い猫を基礎にして作出されたのが、アメリカンボブテイルです。アメリカではしっぽの短い猫が珍しかったため、注目されるようになったのでしょう。その後も産まれてきた子猫の中にしっぽが短い、または曲がった子がいました。長毛の猫との交配によってさらに繁殖が続けられるようになりました。
近親交配が原因で遺伝的疾患を抱える子猫が増えたため、一時はアメリカンボブテイルの繁殖が困難になりましたが、異種交配により健康を取り戻すことができました。アメリカンボブテイルの短いしっぽは優性遺伝です。しっぽの形は様々なものが許容されていますが、極端に短いものは好まれていません。1989年にアメリカンボブテイルとして正式に公認されるようになりました。
アメリカンボブテイルは好奇心旺盛で、ネズミハンターとしての能力に優れていますが、性格は基本的におとなしく辛抱強い猫種です。アメリカではアニマルセラピーに使われることもあり、「猫界のゴールデンレトリバー」と呼ばれることもあるそうです。
ジャパニーズボブテイル
ボブテイルにアメリカンがあるならジャパニーズもあるんです。しっぽの短い日本猫に魅せられたアメリカ人女性は、ちょうどアメリカンボブテイルの繁殖が行われるようになった1960年代に、日本猫をアメリカに連れて行きました。この猫が基礎となって繁殖が行われ、1976年にジャパニーズボブテイルとして公認されるようになりました。
ジャパニーズボブテイルの特徴的なウサギに似たしっぽは、劣性遺伝によるものだとされています。
日本猫が基礎となっていますが、アメリカ人がしっぽの短いことと三毛であることにこだわって繁殖させたため、本来の日本猫とは異なると意見する人もいます。アメリカ人がイメージする日本猫になってしまったとか、日本猫以上に日本っぽい猫だと表現されることもあるようです。
ジャパニーズボブテイルは順応性があり、物分かりの良い性格をしていると言われています。三毛はもちろん、赤白、白黒の毛色は人気が高いようです。また、白が強い三毛からオッドアイの子が産まれてくる確率が高く人気です。筋肉質でしっかりとした体つきをしていますが、太りやすいので食事や運動のコントロールが必要です。
クリルアイランドボブテイル
クリリアンボブテイルとも呼ばれるクリルアイランドボブテイルはロシア原産の猫種です。短いしっぽは突然変異によるものだとされていて、遺伝的にもジャパニーズボブテイルに似ています。しかしジャパニーズボブテイルとの関連性は証明されていません。
千島列島で200年ほど前から存在を確認されていた猫種ですが、やがてロシアに持ち込まれるようになり繁殖されました。旧ソ連のもとであまり知られることなく繁殖されていましたが、開放的な雰囲気が生まれるようになると、クリルアイランドボブテイルも世界中で知られるようになりました。
クリルアイランドボブテイルは極寒の地でもたくましく活動できるような豊かな被毛を持ち、筋肉質でがっちりとした体つきをしています。跳躍力にも優れていて狩りの名手です。性格は独立心が強く物静かですが、飼い主に対する愛情や人懐っこい一面も持ち合わせています。
マンクス
しっぽが短いというよりはしっぽがない猫として知られているのがマンクスです。イギリス本土とアイルランドの間に位置するマン島で突然変異により誕生したと言われています。小さな島の中で近親交配が多かったため猫種として固定されたようです。しっぽがないことは人々の想像を掻き立て、様々な説が産まれていますが、いずれも根拠はありません。
しっぽがないとして知られているマンクスですが、実は短いしっぽを持つ個体も多くいます。しっぽの形によってタイプわけがなされていますが、全くないものをランピー、短いしっぽがねじれているものをスタンピー、ボブテイルよりも短いしっぽはロンギーと呼ばれています。
しっぽが全くないランピーは劣性遺伝子によるものですが、ランピー同士の掛け合わせは致死性を持っていて危険だとされています。そのためにランピー同士の交配は基本的に禁じられているようです。遺伝的疾患が多い猫種でもあるので飼育や繁殖には細心の注意が必要です。
キムリック
キムリックはマンクスと長毛種の猫を交配させることによって誕生した猫種です。もともとイギリスでもマンクスの長毛タイプが産まれることがありましたが、ほとんど相手にされませんでした。しかしカナダの繁殖家が長毛のマンクスをあえて繁殖するようになり、固定化させました。そのためキムリックはカナダ原産だとされています。
マンクスの長毛タイプだと言われるように、しっぽもマンクスと同じです。完全にしっぽがないものはランピーと呼ばれていますが、しっぽの短いものはスタンピー、ロンギーなどと呼ばれています。しっぽが全くない猫種はこのキムリックとマンクスだけだとされています。ちなみにイギリスではキムリックを猫種として認めていないようです。