子犬の引き渡し時期はいつでもいいの?
otsphoto/shutterstock.com
生まれたばかりの子犬はとてもかわいいですよね。できるだけ早いうちに家に迎えたいと思っている人も多いかもしれませんね。しかしちょっと待ってください。子犬をすぐに母犬から引き離してしまっても大丈夫なのでしょうか?人間の赤ちゃんと同じように子犬も母犬の助けを必要としています。すぐに引き離してしまうとかわいそうな気もしますが、実際はどうなんでしょうか。
今回は子犬の引き渡しに最適な時期はいつなのかについて調べてみました。引き渡し時期に関する注意点、家に迎え入れた時の注意点についても解説するのでぜひ参考にしてくださいね。
子犬の引き渡し時期は早すぎるとダメ
子犬をできるだけ早く迎えたいと思っていても、「生後まだ49日を経過していないので引き渡しができない」と表記しているブリーダーサイトを見たことがあるかもしれません。子犬は生まれてすぐに引き取ってもらうことはできません。
なぜ早すぎるとダメかと言うと、それは子犬が母犬の助けを必要としているからです。生まれてすぐの子犬は母乳を飲んで大きく育っていきます。特に最初の1週間くらいは初乳と呼ばれる栄養満点の母乳を必要としています。初乳を飲むことによって病気になりにくい体が作られます。
もちろん母犬が死んでしまったり育児放棄をしたりして人間が育てなければならないこともありますが、初乳を飲んだ個体とそうでない個体では体の強さが違ってくることがあります。最初の1週間は絶対に子犬を母犬から離してはいけないことがわかります。
それに、生まれたばかりの子犬は自分で排泄ができないため、母犬がペロペロ舐めて排泄を促してあげます。体温調整もできないので、母犬や兄弟犬に寄り添って眠ることによって暖かい環境を確保しているんです。無防備な状態で生まれてきた子犬は母犬の助けによって生き延びることができるので、人間が引き離してはいけません。
幼少期は家族犬からいろいろと学んでいる
だんだんと成長して目が見えるようになり、耳が聞こえるようになると子犬の行動範囲が広がります。周りのものに興味を示すようにもなるでしょう。それでも子犬はまだまだ母犬の母乳を必要としています。さらに兄弟犬とじゃれあったりして遊ぶようになります。ただ遊んでいるように見えますが、実はすでに母犬や兄弟犬から多くのことを学んでいるんですよ。
例えば兄弟犬と遊びながらお互いに噛みつきあったりします。痛ければキャンキャン鳴くわけで、どのくらいの強さで噛むと痛いのかを学びます。母犬に強くかみつくと噛みつき返されて怒られることもあります。強く噛んではいけないことを遊びながら学んでいるんです。甘噛みができないまま育ってしまうと後で飼い主が大変なことになりますね。
感受性が育まれるのも最初の数か月です。母犬や兄弟犬と接するだけでなく、周りのものに興味を示すようになってニオイを嗅いだり触ってみたりするようになります。今まで知らなかった未知の世界を体全体で感じるようになり、この経験が成長する段階でとても大切なものになります。
これらの時期は「犬の社会化期」と呼ばれています。生後だいたい3か月くらいの間がその時期にあたりますが、この時期を十分に経験することなく新しい飼い主に引き渡されると、性格に問題のある犬に育ってしまう可能性があります。例えば警戒心が強すぎて無駄吠えが治らなかったり、攻撃的な性格に育ったりすることがあるようです。
また自分を犬だと自覚せず、人間とはうまくやっていけるのに他の犬とはうまくやっていけなくなることもあります。ちなみに我が家のチワワは3週間で事情があって母犬から引き離されてしまいましたが、まさにその通りで、外に連れ出しても他の犬と遊ぼうとしません。人間には嬉しそうに近づくのですが。犬らしさを失ってしまったようです。
社会化期を健全に過ごすことができなかった犬が性格に問題を抱えると後でしつけることが難しくなります。犬らしさも失って正常に交尾をすることすらできなくなると意見する専門家もいるくらいです。これらの理由から、引き渡し時期が早すぎるのはダメだということがわかります。
子犬の引き渡し時期が遅すぎてもダメ
母犬や兄弟犬たちとできるだけ長く暮らしてから引き渡すのがベストではありますが、引き渡し時期が遅すぎると新しい飼い主に慣れるのに時間がかかるというデメリットがあります。母犬の影響をたっぷり受けて育つことになるので、人間に警戒心を抱くようになることもあります。そうなると無駄吠えをしたり攻撃的なったりすることがあるでしょう。
自分の家で生まれた子犬であれば、母犬も一緒に生活しているのでゆっくりと家族に慣れ親しんでもらうことができますが、ブリーダーやペットショップでの購入の場合は引き渡されるまで接することができません。子犬のかわいい時期を一緒に過ごしたいですし、はやく新しい環境に慣れてほしいと思うでしょう。そのためには最適に引き渡し時期を見極める必要があります。
社会化期を母犬と過ごすことは大切ですが、必要以上に引き渡しの時期をのばすと、新しい飼い主さんになれるのに時間がかかって苦労することがあります。子犬の成長スピードは早いので、迎え入れた時には随分と大きく育っていたということもあるでしょう。
法律で定められた子犬の引き渡し時期
Voltgroup/shutterstock.com
ペットショップなどで販売されている子犬は、ショーケースに入れられるもっと前に母犬から引き離されたということになります。引き渡し時期が早すぎるために性格に問題を抱えたり、問題行動を起こしたりする犬が出てくることは以前から指摘されていることでした。
生後間もなく引き渡された犬は精神的に未熟だったり、ストレスに弱かったり、しつけがうまくいかなくて無駄吠えや噛み癖が治らないという問題を抱えることが多くあり、最終的には飼い主の手に負えなくなって捨てられたり保健所に預けられたりするようになりました。これらの問題を防ぐためにも引き渡し時期を決めることが必要になりました。
海外では子犬を販売できる月齢が法律で決められていることがありましたが、日本ではついに2013年9月1日に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」が施行されることになりました。改定された動物愛護法によると、生後56日を経過しない子犬の販売、販売のための展示や引き渡しが禁止されるということです。
とはいってもいきなりは無理なので平成28年8月までは生後45日、その後は新たに法律で定めるまで49日ということになりました。さらに、実際に子犬を見ないと購入できないこと、子犬に関する説明をきちんとしなければならないことも法律で定められ、子犬の売買が今までよりも慎重に行われるようになりました。
子犬の引き渡しの最適な時期はいつ?
動物愛護法では生後45日、49日、それから56日という数字が出されましたが、子犬と新しい飼い主の立場から考えるといつ頃の引き渡しが最適なのでしょうか。最適な時期に関しては人によって意見が分かれるようで、ブリーダーの間でも様々な意見が飛び交っています。
生後3か月の間は子犬にとって大切な社会化期だということを述べましたが、この3か月が一つの目安になると考えることができるでしょう。そして動物愛護法では生後56日、つまり約2か月がひとつの目安になっていることがわかります。ですから生後2か月~3か月の間が子犬の引き渡しの最適な時期だと考えることができます。
もしもブリーダーが近くにあって許可してくれるのであれば、引き渡し日の前に定期的に訪ねてみるといいでしょう。母犬と一緒にいながら新しい飼い主に少しずつ慣れてもらうことができるかもしれませんよ。子犬の成長具合を観察しながらブリーダーと一緒に引き渡し時期を決めることができるでしょう。
その間にブリーダーがトイレのしつけをしてくれたりします。信頼できるブリーダーは犬のことを心から愛しているので、いろいろな役立つアドバイスをもらうことができるでしょう。子犬を最適な時期に迎え入れることができれば、自信をもってしつけなどの訓練を施すことができるでしょう。
子犬の引き渡し時期は2か月~3か月くらいが最適だといいましたが、ブリーダーによっては3か月または4か月以上しないと引き渡さないというところがあります。その場合はブリーダーの考え方などを説明してもらうようにしましょう。話をよく聞くなら、そのブリーダーが「きちんと犬を訓練して精神的に安定した子に育ててあげたい」という責任感を持っているかどうかが分かります。そういうブリーダーから引き渡された犬なら安心です。