猫に生理はある?
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愛猫との暮らしの中で「猫には生理があるのだろうか?」なんて疑問を持つ飼い主さんもいるかと思います。人間の女性には妊娠するためになくてはならない現象ですが、体調の変化が伴うのでブルーな気持ちになるという方もおられるでしょう。
犬は生理があるので、猫にも生理はあるかどうかなんて疑う必要はないと思われるかもしれませんね。でも実は生理については犬と猫に違いが見られます。この記事では猫には生理があるのか、排卵のメカニズムはどのようなものなのか見ていくことにしましょう。
猫には生理がない
結論から言うと、猫には人間や犬にみられる定期的な生理出血は起こりません。意外に思うかもしれませんが、人間や犬のようにはないのです。これには猫の排卵メカニズムが関係します。猫の排卵のメカニズムとはどのようなものなのでしょうか。
猫の排卵メカニズム
猫は生理により排卵するのではなく、交尾による刺激で排卵する「交尾排卵」です。ですから、交尾がなければ当然のことですが排卵もしません。この理由により猫には生理がないのです。
人間からすると煩わしい生理に悩まされることがないので、なんだかうらやましいような気もしますね。また交尾排卵には生理によって血液を失わずに済み、そして効率よく子孫を残すことができるというメリットもあります。
とはいえもし生理と同じような出血がみられる場合には、注意が必要でしょう。何かしらの病気やトラブルの可能性がありますので、かかりつけの動物病院で早く診てもらうようにしてください。
猫が生理のような出血をするときに疑う病気
猫は生理が起こらないのに、生理に似たような出血が見られることがあります。陰部からの出血にはどのような病気が疑われるのでしょうか。
1.子宮内膜炎・子宮蓄膿症
子宮内膜炎とは、避妊手術していない猫が発情することで病原菌が子宮内に通りやすくなり、結果起こってしまう炎症です。子宮内膜炎が長引くことで膿が溜まると、子宮蓄膿症になってしまいます。
避妊手術をしていない5歳以降のメス猫に多く見られると言われている病気です。発情後期から妊娠中にかけてホルモンバランスの変化により免疫力が落ちたことや飼育環境が不衛生であることが感染の原因となるようです。
繁殖を計画していない猫の場合は避妊手術を行なうことによって、この病気を防ぐことができるでしょう。
2.子宮がん
子宮がんの原因ははっきりしていませんが、やはり若いうちに避妊手術を行なうことで発症する確率を低く抑えることは可能になります。おりものがだらだらと続き、そこに血が混じるといった症状や、嘔吐や下痢、食欲不振といった体の変化がみられるでしょう。
体調の異変に気付いたなら、すぐにかかりつけの動物病院で診てもらうようにしましょう。
3.尿路結石・膀胱炎
血尿など尿に関わる異常が見られ、ぐったりとして食欲がない場合に疑われる病気です。尿路結石は尿道が細いオス猫によく見られる病気と言われていますが、メス猫でも食事内容の偏りなどが原因で発症することあります。愛猫がトイレをした後に色をチェックすると良いでしょう。
血尿、食欲不振、多飲多尿、発熱などの症状がみられる場合もあります。体調の悪さを隠す傾向がある猫ですから、飼い主さんがなるべく早く異常に気がついてあげることが重要と言えるでしょう。雑種と比べて尿路結石がかかりやすいという種類の猫もいます。
猫の尿路には、心臓から膀胱を繋ぐ尿管の上部尿路と、膀胱と尿道を繋ぐ下部尿路があります。上部尿路である尿管に結石ができる尿管結石が、スコティッシュフォールドやアメリカンショートヘアー、ヒマラヤンなどの純血種がかかりやすいという調査結果があるそうです。
該当する種類の猫を飼っている場合には、特に日頃から愛猫の様子に注意して見守るようにしましょう。特に真っ赤な尿が出ているときはすぐに動物病院で診てもらうようにしてください。そのときに尿の状態や尿をしているときの様子など気になることをメモして、獣医師に伝えることができるでしょう。
猫が妊娠する確率
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猫が交尾によって排卵を誘発することがお伝えしましたが、発情期初日に1度交尾した場合は排卵率は60%です。発情期5日目では83%にまで高まり、3回交尾をした場合は100%になるそうです。ある研究データでは妊娠率は74%程度で、出産率は65%程度だという結果が出ているそうです。
しかも猫の繁殖期は1年に2回程度あるのが一般的です。「猫の発情期」と呼ばれる妊娠しやすい季節があり、メス猫の発情期は2~4月あたり、そして6~8月あたりとなっているので春先から夏に妊娠しやすくなります。妊娠期間も約2ヵ月と短いですから、1年に2回妊娠・出産することも可能と言えるでしょう。
2~3月の間に妊娠して、4月~5月のあたりにかけて出産と子育てをします。そして、6月~8月あたりにかけて再度妊娠して、9月~11月頃の秋の時期に出産と子育てをするのです。また1回の出産で複数匹の子猫を産むので、去勢・避妊手術をせずの放置した場合に、爆発的に増えていくのにも納得がいきますね。
基本的に猫は繁殖能力が高い生き物ですが、交尾したにも関わらず、妊娠には至らなかった猫というのもたまに存在します。そのような場合「偽妊娠」といって妊娠していないのに妊娠しているかのような行動を見せることを偽妊娠と言います。妊娠と同じような状態になり、妊娠初期のような症状が現われます。
猫が偽妊娠のときは、床にゴロンゴロンと転がったり、乳房の色や大きさが変化するなどの妊娠初期の症状が現われます。実際には妊娠していないので、1ヵ月過ぎたあたりでこのような行動をやめて元に戻ります。
猫の偽妊娠は、妊娠サイクルの中で上手く妊娠が成立しなかった場合や繁殖能力のないオス猫と交尾したことによって引き起こされるホルモン異常が原因とされています。あまりに頻繁に偽妊娠を繰り返す場合は、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
猫が妊娠したときの症状
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猫が妊娠したときに早い段階で気づいてあげられるように見分け方を把握しておくことができるでしょう。猫の妊娠中の体や体調の変化には次のようなものがあります。
1.妊娠初期にみられる変化
約2ヵ月の妊娠期間の中で、妊娠の兆候が現れだすのは妊娠3週間目ごろであり、妊娠3週間目ごろ乳首がピンク色になりやや膨らむという変化が表れます。そして、妊娠4週間目頃になるとつわりが始まり、食欲がなくなってしまいます。
2.床をゴロンゴロンと転がる
メス猫が床にゴロンゴロンとやたら転がる様子は、妊娠の予兆のひとつでもあります。メス猫は発情期で交尾して、妊娠期に入るとこのように普段とは違う行動を取ることがあるので、よく観察しておくようにしましょう。
3.食欲旺盛になる
妊娠した猫は、出産や子育てに向けてエネルギーをつけるために食欲旺盛になりやすいです。妊娠5週間目ごろ、つわりが終わると食欲が増えてよく食べます。猫の妊娠が分かったら、いつもよりもカロリー高めのフードに切り替えるなどして体力をつけてもらいましょう。
出産数日前になり、妊娠60日を過ぎたころから、そわそわとし食欲も減ります。猫の妊娠の期間は人間よりも短く、63~65日が標準的な妊娠期間です。妊娠中には、母猫にストレスがかからない食事と静かな環境が必要です。
出産の流れと準備
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交尾から約2ヵ月で出産に至るため、あっという間に分娩の時期がやってきます。そのときになって慌てないためにも出産の流れや出産時の対処法などを知り、準備を進めておくことにしましょう。
1.分娩の兆候
猫は分娩の24時間前くらいからほとんど食事をしなくなり、陣痛が始まると乳房や陰部をしきりに舐める、床を掘る仕草をする、出産場所を探す、むやみに鳴く、威嚇するなどの行動を見せます。また体温が1℃ほど下がります。分娩に備え、事前に清潔なタオルや毛布を敷いた段ボールなどを用意してあげましょう。
段ボールは四方が囲まれ、暗くて乾燥した場所に設置してあげるようにします。その際には、タオルや箱に猫の匂いを染み込ませておくならばスムーズに入ってくれるでしょう。猫の匂いが染みついたおもちゃを中に入れておくこともできるかもしれませんね。
2.出産
猫が一度に出産で産む子猫の数は平均3~5匹ですが、中には9~10匹産む猫もいます。通常は陣痛が始まってから30分くらいで第一子が生まれ、その後15~30分間隔で分娩を繰り返していきます。すべてが生まれるまで1~2時間程度かかります。分娩時間は個体差があり、12時間以上かかる場合もあります。なお、陣痛が始まってから1時間経っても生まれないときは、難産の可能性があるため獣医師の指示を仰ぎましょう。
出産時、子猫を包んでいる羊膜は自然と破れますが、破れないときは母猫がなめて破ります。胎盤は1匹につき一つずつあり、通常は子猫→胎盤→子猫→胎盤と出てきます。ただ、中には次の子猫が生まれる前に先に胎盤が出てくるというケースがあり、その場合、お腹の中に胎盤が残ると子宮感染の原因となるため、子猫の数と胎盤の数があっているかどうかを確認することが大切です。
子猫を包んでいた羊膜や胎盤は母猫が食べて処理します。へその緒も自分で噛み切るので、人間が手出しする必要はありません。まれに子猫の世話をしなかったり、初産のためきちんと子猫を舐めなかったりすることがあるので、そのときには手助けしてあげると良いでしょう。
対処方法としては、まず清潔なタオルやガーゼで子猫を拭いて、羊膜を剥がしてあげます。続いて、へその緒を木綿の糸で縛って止血して、消毒したハサミで切り離します。そこまでやってから、子猫は母猫のもとに戻して舐めてもらいましょう。清潔なタオルやガーゼ、木綿の糸、消毒液、ハサミを準備しておきましょう。