皆さんはどんな愛犬の仕草を可愛いと感じるでしょうか。首をかしげたようにキョトンとした表情で見つめてきたり、お腹を見せて撫でてとアピールしてきたりと、ワンちゃんはふとした仕草で飼い主の心を癒してくれます。
そんなワンちゃんたちがする、とってもかわいらしい仕草の一つが、「飼い主の手のひらにアゴを乗せてくる」ことです。なんか、全面的に心を許してくれている気がして、愛犬をとても愛おしく感じる瞬間です。
では、人間の体にアゴを乗せてくる時、愛犬はどんな気持ちを抱いているのでしょうか。今回の記事では、犬がアゴを乗せてくる理由について解説します。
犬がアゴを乗せてくる理由
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愛犬が近づいてきてアゴを乗せてくると、その姿がとっても可愛いので、しばらく動かずにずっと見ていたくなるものです。どんな動機で犬はアゴを乗せてくるのでしょうか。
犬には、特定の意図があって共通して行う仕草があります。これは、長い間群れで生活してきた犬が培った習性のようなものです。仲間と円滑にコミュニケーションを図るために、自分の気持ちを行動であらわしているのです。
こうした犬が行う生理的な行動のことを「カーミングシグナル」と呼びます。人間でも、言葉が通じない相手に対して、「ボディーランゲージ」を使って、自分の意図を伝えようとします。同じことを、言葉をしゃべらない犬たちも行っているのです。
人間には、犬たちが行う「カーミングシグナル」の意図を理解することは難しいですが、犬同士では明確な意図をもって行っているのです。
アゴを乗せるという動作は、この「カーミングシグナル」の一つと考えられています。では、犬がアゴを乗せる時の、5つの代表的な理由をご紹介します。
1.甘えたい気分
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犬は飼い主に甘えたいと感じた時に、アゴを乗っけてくることがあります。これは、「ご主人さまと一緒にいたい」と感じていることの証拠です。
犬は群れをなして生活してきた動物なので、一緒に生活している仲間と良いコミュニケーションをとろうと努力します。心を許している飼い主であれば、なおのこと自分から積極的に触れ合あおうとします。
アゴを乗せるという動作は、動物にとって無防備な状態を相手にさらすことを意味するので、相手に対する信頼を示す行動であり、頼って甘えたいと感じていることをあらわすものです。信頼できる関係だからこそできる行為なのです。
そんな時は、愛犬が示してくれた好意を受け入れて、やさしく愛犬の頭を撫でてあげたり、耳の後ろや首筋をマッサージしてあげるなど、こちらからも積極的にスキンシップを取り、愛犬をリラックスさせてあげましょう。
2.お腹がすいたとうったえている
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犬はしゃべることが出来ないので、何かおねだりしたい時にも、行動でアピールするしかありません。アゴを乗せる動作も、ワンちゃんがおねだりしたい時に用いる行為の一つです。
例えば、食事の時間が近くなって来ると、アゴを乗せてじっと見つめてくることがありますが、これは「ごはんはまだ?」と飼い主にアピールしているのです。
犬の体内時計はとても性格なので、規則正しくエサをあげていると、次第にごはんの時間を分かるようになります。でも、待ちきれなくておねだりしようとするのです。
また、人間がそばで食事をしていたり、おやつを食べていると、自分も何か欲しくなってしまい、アゴを乗せておねだりしてくることがあります。
しかし、人間用の食べ物は、犬の健康にとって良くない物も多いので、可愛さに負けてうっかり食べさせないよう注意が必要です。
あまりに頻繁にこの行動を愛犬がとる場合には、食事量が足りていない可能性があるので、給餌しているドックフードの栄養素や摂取カロリーを、再検討する必要があるかもしれません。
ですが、犬には肉食動物として獲物を捕獲していた時の本能が残っており、獲物を捕獲できない時期に備えて、食事できる時にお腹に入るだけ食べようとする習性があります。
そのため、おねだりされるままにエサをあげていると、食べすぎて肥満になったり、病気を患ったりする可能性があります。愛犬の可愛さに負けて甘やかさずに、間食の量はしっかり制限するようにしましょう。
3.上下関係をアピールしている
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犬は集団生活を円滑に行うために、上下関係を明確にしようとする生き物です。これは、犬の先祖とされているオオカミの習性を見れば明らかです。
オオカミの群れは、だれがグループのなかで上位なのかを明確にするために、必ず順位付けを行います。そして、この順位は厳密なものなので、食事をする時なども、必ず上位のオオカミから食べるなど、明確な群れのルールが存在します。
犬にもこうした傾向が残っているので、家族の中での自分の順位を意識して生活していると言われています。そして、犬がアゴを乗せる動作は、自分の方が上位であることを誇示する動作とされています。
こうした、上下関係を明確にしようとする時にアゴを乗せる動作の場合には、他の時とは異なり、無表情であることが多いようです。甘えたいと感じている時の潤んだような瞳ではなく、どちらかというと冷たい表情をしています。
この動作に対する反応には注意が必要です。自分より下だと思っている人に対して権威を誇示するために行っている動作なので、間違った反応をしてしまうと、愛犬のわがままを助長してしまう可能性があります。
可愛いと思って撫でてしまうと、自分が愛犬より下位の存在であることを認めてしまうことになります。愛犬の撫でてなどの要求には応じず、アゴを乗せることも許さないほうが良いでしょう。
4.分離不安を感じている
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アゴを乗せる動作は、飼い主に対する信頼の証であると説明しましたが、あまりにも頻繁にアゴを乗せてくる場合には、飼い主との関係性において「分離不安」に陥っている可能性があります。
分離不安とは、犬が飼い主といつも一緒にいるために、少しでも飼い主から離れると不安を感じてしまう症状のことを言います。本来、この症状は子犬を母犬から引き離すときに起きやすい症状です。
しかし、最近では、飼い主に対してこの症状が出てしまうワンちゃんも多くなりました。専業主婦の家庭で育てられていると、四六時中飼い主が一緒にいる生活をしているので、一人で行動することに慣れていません。
そのため、ちょっと飼い主の姿が見えなくなると、飼い主と離れていることへの不安から、パニック状態になってしまいます。
ちょっと外出しようとしただけで、後ろをついて回ったり、吠えたりします。また、帰宅したときに、噛みついて物を壊していたり、排泄ミスをわざと行うなどの問題行動をするワンちゃんもいます。
飼い主にアゴを乗せる動作は、飼い主に甘えたいという感情の表れなので、あまりに頻繁に愛犬がアゴを乗せてくる場合には、分離不安の症状が出始めていることを意味している可能性があります。
ちょっと甘えてくる頻度が多いと感じたら、少しずつ愛犬が一人で過ごす時間を増やしてあげて、自立できるように助けてあげましょう。急に接し方を変えると、愛犬がショックを受けてしまう可能性があるので、少しづつ変化させるのがポイントです。
5.安心している
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犬にとって、アゴは周囲の状況を察知するために、もっとも機敏に働いている体の部分です。犬は嗅覚が非常に優れていますし、視覚や聴覚をつかさどっている器官もアゴの近くにあります。
また、周囲の振動をすばやく察知するために用いている、骨伝導の感覚器官とも関連しています。そのため、犬にとってアゴはとても重要な役割を果たしているのです。
例えば、犬がアゴを地面につけて眠っていることがありますが、これは周囲を警戒している証拠です。地面から伝わる振動を、アゴの骨を通して感じ取ろうとしているのです。
それで、犬が人間にアゴを乗せてくるのは、愛犬が安心しているという証拠です。感覚器官をリラックスさせて、自分の身をゆだねても大丈夫だと感じているのです。