犬がらっきょうを食べるとどうなる?
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カレーなどの付け合わせとして有名な「らっきょう」は、人間にとっては健康に役立つ有益な食材ですが、実はワンちゃんに与えると死亡する恐れのあるほど危険な食材です。
ワンちゃんは人間が食べているものを欲しがって「おねだり」することがありますが、万が一うっかり「らっきょう」を食べさせてしまうと、深刻な健康被害を引き起こしてしまう危険があります。
では、「らっきょう」とはどんな食材なのでしょうか。らっきょうにはどんな成分が含まれていて、ワンちゃんの体にどんな影響を与えるのかについて解説していきたいと思います。
また、「らっきょう」を含んだ食材を食べた時にワンちゃんがどんな病気をする可能性があるのか、間違って「らっきょう」を愛犬が食べてしまった場合、どのように対処すべきなのかについても解説します。
「らっきょう」とは
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「らっきょう」は、ユリ科ネギ属に分類される野菜です。別名「畑の薬」とも呼ばれるほど薬効が高く、古代の医学書にもたびたび名前が上がる食材です。
中国のヒマヤラ地方が原産とされています。日本に渡来したのは平安時代とされ、 一般的に食用として消費されるようになったのは江戸時代からだと考えられています 。
「らっきょう」に含まれている成分について
「らっきょう」には、人間の健康に欠かせない有益な成分がたくさん含まれています。例えば「らっきょう」に含まれている「硫化アリル化合物」は、発がん物質を解毒する作用を持つ、酵素の活性化を促す働きがあります。
また、活性酸素を除去する効果も認められています。加えて「らっきょう」の中に含まれている「フラボノイド」には、がん細胞を攻撃して死滅させる「アポトーシス」という酵素の働きを促進する効果も認められています。
そのため、人間が「らっきょう」を食べると、ガンを予防したり、症状の進行を抑制したりする効果があると期待されています。
犬にとって危険ならっきょうの成分とは
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このように、人間にとっては健康に役立つ食材である「らっきょう」ですが、ワンちゃんにとっては、通称「ネギ中毒」と呼ばれる中毒症状を引き起こす可能性がある危険な食材です。
特に犬にとって危険とされる「らっきょう」の中に含まれる中毒成分は、「有機チオ硫酸化物」です。この「有機チオ硫酸化物」という成分は、ワンちゃんの体内に入ると血液中の「ヘモグロビン」を変化させます。
結果として、赤血球を破壊する作用があります。赤血球が破壊されると、肺から取り入れた酸素を身体の細部に届けることが難しくなるので、「溶血性貧血症」を引き起こす可能性があります。
これまで、「らっきょう」の中に含まれている中毒成分は「アリルプロピルジスルファイド」であると言われてきました。しかし、厳密に言うと「アリルプロピルジスルファイド」は、犬の体内において物質の吸収を促進する作用がある成分です。
それでも、この「アリルプロピルジスルフィド」が、真の中毒物質である「有機チオ硫酸化物」の吸収を促進してしまうので、間接的には犬の体にとって悪い影響を及ぼす成分となるのです。
「らっきょう」の中には、この「有機チオ硫酸化物」と「アリルプロピルジスルフィド」が両方含まれているため、少量であっても「有機チオ硫酸化物」が愛犬の体内で急速に吸収されやすくなり、非常に危険です。
愛犬が発症する「ネギ中毒」とは
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名前の通り「ネギ中毒」とは、ユリ科ネギ属に分類される野菜をワンちゃんが食べることによって生じる中毒症状のことを言います。
ネギ属に分類される野菜は全般的に、動物が中毒症状を引き起こす危険があるので、「らっきょう」だけでなくたまねぎやにんにく、生ネギなどにも注意が必要です。ニラやわけぎなどもネギ属の食材なので、「ネギ中毒」を引き起こす危険があります。
特に注意が必要なのは、こうした「ネギ中毒」の症状は、ワンちゃんが「らっきょう」を食べてしまってからある程度時間が経過して出現する場合があるからです。
もちろんすぐに異変があらわれるケースもありますが、数日過ぎてからようやく症状があらわれて、愛犬が「ネギ中毒」であったということが判明するケースも多くあります。
食べた直後に目立った症状があらわれないので、愛犬の健康に悪い食事を与えていることに飼い主が気づかず、手遅れになってしまうという危険性もある食材なのです。
愛犬が「ネギ中毒」を発症するとどうなる?
ワンちゃんが「ネギ中毒」を発症すると、先ほどもご説明した通り、赤血球の中の「ヘモグロビン」が損傷して、赤血球を通して体内の細部に酸素を届けることができなくなります。その結果「溶血性貧血症」や「血色素尿症」が引き起こされてしまうことにつながります。
犬が発症する「溶血性貧血症」とは、血液中に含まれる赤血球の数や、血液の濃度が低下することによって生じる貧血のことです。
ワンちゃんが「溶血性貧血症」を発症する原因には、「ネギ中毒」(正確にはハインツ小体性溶血性貧血)だけでなく、遺伝的な要因や、免疫機能が誤って赤血球を破壊してしまう「自己免疫性溶血性貧血」といったものがあります。
また稀なケースではありますが、母親の母乳に含まれる抗体(特殊なタンパク質)が、子犬の赤血球にある抗原を異物とみなして攻撃してしまう、「新生児溶血」という病気もあります。
犬が発症する「血色素尿症」とは、溶血性貧血症によって破壊され、血液中に遊離した「ヘモグロビン」がおしっこに混じって出てきてしまう病気です。血液中に遊離した「ヘモグロビン」が腎臓にある糸球体を通過してしまうと、尿に混ざってしまいます。
愛犬が「ネギ中毒」を発症した時の治療法について
ワンちゃんが「ネギ中毒」を発症した場合の治療法は、大きく分けると「内科的治療」と「外科的治療」の二種類に分けられます。
基本的には、「内科的治療」が優先的に実施されます。症状の変化を見極めながら、経過観察を行います。一般的には1週間程度の経過観察が行われ、症状が快方に向かっているか、他の積極的な治療が必要かが判断されます。
その間に貧血による症状が悪化した場合には、輸血処置が施されるケースもあります。しかし人間とは異なり、犬の輸血はまだまだ一般的ではありません。獣医が輸血が望ましいと判断しても、適合する犬用の血液が入手しづらいため、実施できないケースも多いようです。
内科的な治療を行っても長期間にわたって症状に改善が見られない場合、外科手術が必要であると判断されるケースもあります。
「ネギ中毒」の症状によって赤血球の破壊が行われるのは、主に脾臓や肝臓です。そのため、赤血球の損傷を抑制するため脾臓を摘出する手術が行われます。