まつもと ゆきひろ 氏が、好みの言語(Perl、Smalltalk、Eiffel、Ada、Lisp)の一部をブレンドし、関数型プログラミングと命令型プログラミングが絶妙に調和された新しい言語。それが Ruby。
Ruby は、シンプルさと高い生産性を備えたオープンソースの動的なプログラミング言語で、エレガントな文法を持ち、自然に読み書きができるということで、1995年の一般公開以来、世界中から熱心なプログラマーを集めている。
このプログラム言語 Ruby を活用し、ビジネスの領域で新たな価値を創造し、今後の発展が期待できるサービスや商品を表彰するビジネスコンテストが「Ruby biz Grand prix 2023」。
その表彰式が、Ruby の生みの親 まつもとゆきひろ 氏が拠点を構える島根県松江市で開催された。
29事例のなかから9事業を表彰
「Ruby biz Grand prix」は、プログラム言語 Ruby を活用して、ビジネスの領域で新たな価値を創造し、今後の発展が期待できるサービスや商品を表彰するビジネスコンテスト。
9回目の『Ruby biz Grand prix 2023』では、暮らしやビジネスをより豊かにするためのさまざまなサービス・商品、計29事例のなかから、事業の新規性、優位性、成長性、将来性などを総合評価し選ばれた、大賞2点と特別賞3点、ソーシャルインパクト賞4点を表彰した。
そこで、その各賞を受賞したビジネス事例と担当者コメントを、ここで紹介しよう。
ソーシャルインパクト賞 ヴァル研究所/タイミー/ファインディ/Yoom
◆ヴァル研究所【駅すぱあとWebサービス】山崎恭史氏
「駅すぱあとWebサービス」は、「駅すぱあと」が持つ経路探索機能や公共交通機関データを実装でき、多くの法人向けサービスや基幹システム、乗換案内サービスに採用されている信頼性の高いAPIです。公共交通に特化した充実のAPIとサポート環境で開発運用コストを削減します。「駅すぱあと」がWEBAPIとしてローンチして今年2023年で14年目。これからもRubyとともにビジネスを成長させ、これまで以上にユーザーに寄り添った公共交通案内を提供していきます。
◆タイミー【Timee】亀田彗氏
「Timee」は、働きたい仕事を選ぶだけで、履歴書・⾯接なしですぐに働くことができ、勤務後すぐにお⾦を受け取ることができるサービスです。事業者にとっては、来て欲しい時間や求めるスキルを設定するだけで、条件にあった働き⼿が⾃動的にマッチングします。スタートアップして間もないサービスですが、すでに全国さまざまな人たちに愛され、利用されるサービスへと成長してきました。空いた時間にすぐ働けるというサービスで、この島根県でも2万人を超える人たちに利用していただいています。
◆ファインディ【Findy Team+】浜田直人氏
「Findy Team+(チームプラス)」は、GitHubやGitLab、Jiraなどエンジニア向けツールから取得した情報を自動で解析し、エンジニア組織における開発生産性を可視化・向上をサポートする、国内初のサービスです。Four Keys や開発リードタイム、レビュー状況を可視化し、エンジニア組織のパフォーマンス向上へとつなげています。今回は、大賞を狙っていたので、少し悔しいんですが(笑)、エンジニアに寄り添ったサービスをこれからも続けて展開していきたいと思っています。ソーシャルインパクト賞というスタイリッシュな賞をいただき、ありがとうございます。
◆Yoom【Yoom】石井淳史氏
「Yoom」は々なSaaSやAIを組み合わせた独自の業務ツールを作成し、業務を自動化・効率化することができるノーコードツールです。システムやAPIの知識は不要で、誰もが自分の業務の自動化・効率化をカンタンに実現できます。フロントオフィスからバックオフィスまで、々な部門で業務を自動化できるこのツールで、日本社会がいま直面している人材不足や長時間労働といった課題に寄り添って事業を運営しています。今後もRubyとともに事業を大きく成長させ、大賞に選ばれるよう、尽力します。
特別賞 ウィルポート/KabuK Style/レンティオ
◆ウィルポート【 オープン型ラストワンマイル配送プラットフォーム 】秋山亮介氏
ウィルポートは、配送システムをITで一元管理する独自のオープン型ラストワンマイルプラットフォーム(OLP)を開発しました。課題が集中するラストワンマイルシーンをDXで最適化することによって荷主とドライバーのネットワーク環境を改善いたします。今後確実に起こるであろう物流クライシスの環境下にあっても、『Polaris Navi』を通じてサスティナブルな物流環境を提供します。
◆KabuK Style 【旅のサブスク HafH(ハフ)】勢田圭剛氏
HafH(ハフ:Home away from Home)は、毎月定額で世界中の宿泊施設に滞在することができる旅のサブスク®サービスです。 2023年8月末現在、国内外30カ国、2,000以上の宿泊施設(ホテル・旅館・ゲストハウス・ホステルなど)の利用が可能です。KabuK Styleはテクノロジーの力を使い、世界中の旅をより身近なものにリデザインするというビジョンのもと、旅をもっと簡単に、より日常に、便利なものにするサービスとして、多なニーズの進化に適応した次世代型サービスへのアップデートを推進し、サプライヤー、旅行者、エージェントの3者の課題解決を実現してまいります。
◆レンティオ【レンティオ】紀見岳雄氏
レンティオは、買わずに試せる、家電のサブスク・レンタルサービスです。家電やカメラを中心とした3,500種類以上の製品を、必要な間だけ気軽にレンタルでき、試して気に入れば、返却せずにそのまま使用し続け購入することもできます。しかも全国往復送料無料。月間12万人以上が利用し、ユーザー評価は★4.7。短期間だけ使ってみたいカメラや、購入前にお試ししたいキッチン、掃除家電など幅広くお試しができるサービスです。
大賞 ウーオ/ピクシブ
◆ウーオ【UUUO】土谷太皓氏
UUUOは、水産物に特化したBtoB流通プラットフォームです。全国120港以上の産地から毎日新鮮な魚が出品されており、中央卸売市場の9割以上でUUUOを通じた仕入れが行われております。
UUUOでは鮮魚をはじめとした水産物が全国100社以上から出品されます。買い手は現在400社以上あり、手間をかけずに仕入れが可能です。
「すべての町を、美味しい港町に。」をビジョンに掲げ、売り手と買い手を繋ぐことで需給の最適化を実現します。アナログな業務が多く残る水産流通領域のDXを推進いたします。
元々Rubyを利用していなかった開発メンバーもいる中で、ユーザーさんと一緒にサービスをつくっている会社ですので、開発メンバーはもちろん、一緒に成長させてくださっているユーザーさんにも感謝したいと思います。
今回の賞はRubyを使ってUUUOを作るプロダクトチームをはじめ、事業を推進する会社の全メンバー、そして全国にいるUUUOユーザーのみなさまあってこそ得られた名誉だと思っています。
今後もRubyを活用したサービス開発を進め、コミュニティの発展に寄与していきたいと考えております。
◆ピクシブ 【pixivおよびpixiv関連サービス】道井俊介氏
ピクシブは「Accelerate creativity. 創作活動を、もっと楽しくする。」をミッションとして掲げ、2005年の創業以来、創作活動を支援するさまざまなプロダクトを生み出してきました。
イラスト・マンガ・小説作品の投稿プラットフォームpixiv は、作品を介したコミュニケーションにフォーカスしているクリエイターのためのSNSで、登録者数は9800万人を超えています。また、創作物の総合マーケットプレイスBOOTH、ファンコミュニティpixivFANBOX、3Dキャラクター制作ソフトウェアVRoid Studioなど16の事業を展開し、クリエイターを支援するさまざまなサービスを提供、世界中の人々の創作活動を応援しています。
さらに事業の拡大と共に、2018年時点では約200人だった社員数が、現在は業務委託、アルバイト含め600人近くまで増加しました。(2023年9月時点)かつては20代のエンジニアが多くを占めていましたが、現在はプロダクトマネージャーやマーケターをはじめとするビジネス職も増え、職種や年齢層の幅が広がりました。現在の社員の平均年齢は31歳で、育児や介護などライフスタイルの多化も進んでいます。
多くのサービスをこれまで運営し続けられているのは、Rubyの持つパワーとRubyを取り巻いている開発者コミュニティとともに成長できたことが大きいと思っています。これからもRubyとともに成長できるように取り組んでいきます。
まつもとゆきひろ審査委員長「ユニークさ、社会への影響力、コミュニティに対する貢献度、それぞれの軸で評価」
Ruby biz グランプリの全体の審査として、ビジネスとしてのユニークさ、社会への影響力、どれぐらいRubyを活用していらっしゃるか、それからコミュニティに対する貢献度というそれぞれの軸で評価させていただいております。
今回の9社はRubyを使った素晴らしいサービスを提供してくださっているので本当に感謝しています。
Rubyを使って世の中を良くするために様々なビジネスに果敢に挑戦してくださっていることを褒め称えたいと思います。
Rubyが未来をつくり、社会を良くしていくのを、Rubyを創造したものとしていつまでも見届けたいと思っています。
井上浩 実行委員長「まだまだ Ruby の可能性を秘めている」
コロナが明けて松江で開催されるようになり、引き続き多くのエントリーをいただいたので、主催者一同非常に喜んでおり、胸を撫で下ろしている状況で、まだまだ Ruby の可能性を秘めている表れではないかと感じております。
今回の審査にあたって審査員の皆さんは大変ご苦労されたという風に思っています。
皆さんとさらなる Ruby の広がりをいっしょに体感したいと思います。
―――審査選考委員 ※委員は50音順
委員長:まつもと ゆきひろ / 一般財団法人 Rubyアソシエーション 理事長
委員:笹田耕一 / 一般財団法人 Rubyアソシエーション 理事
委員:寺田雄一 / マジセミ株式会社 代表取締役社長
委員:中村建助 / 株式会社日経BP 技術コンテンツユニット 編集委員
委員:森正弥 / デロイト トーマツグループ 執行役員・パートナー
<Ruby biz Grand prix>
Ruby biz Grand prix は、プログラム言語 Ruby を活用して、ビジネスの領域で新たな価値を創造し、今後の発展が期待できるサービスや商品を表彰するグランプリ。
企業は Ruby を使った開発により、時代の変化に柔軟に対応し、企業・社会が抱える課題に対してスピーディーにアプローチできる。
この Ruby biz Grand prix グランプリを通して、Ruby がもたらす革新性を国内外に広く発信し、IT産業全体の振興に貢献していく。
<過去の「大賞」受賞企業一覧>
2022年度:JUKI松江、Shippio
2021年度:HIKKY、ヤマップ
2020年度:tsumug、メディカルノート
2019年度:クックパッド、GMOぺパボ
2018年度:コークッキング、スタディプラス
2017年度:あしたのチーム、Wovn Technologies
2016年度:Misoca、ラクスル
2015年度:トレジャーデータ、ユビレジ