はじめに

台湾島の西方約50kmに位置する台湾海峡上の島嶼群・澎湖(ポンフー)群島。台北からは飛行機で約50分とアクセスも上々で、春から夏にかけてのハイシーズンは、古い街並みを散策したり、マリンスポーツを楽しむ人で賑わいます。冬場は冷気と雨をもたらす季節風 “東北季風”の影響を受けますが、涼しく過ごしやすいので、街をじっくり観光するなら、これからの季節が狙い目。農業体験やDIYが楽しめる「南寮社區」、軍事マニア必見の要塞跡地「龍門閉鎖陣地」、美しい砂浜が広がる「林投公園」など、注目すべきスポットをご紹介!

南寮エリアには歴史を感じる古民家多数。農村ならではのDIYも。

澎湖で人気上昇中の奎壁山ビーチ。干潮時に出現する砂州を渡ると赤嶼島に行けることから、その現象はモーセの十戒になぞらえ “奎壁山分海”と呼ばれています。この奎壁山ビーチの南、県道202号線脇にあるエリア「南寮社區」もまた、近年のホットスポットとなっています。漁村が多い澎湖には珍しい農村で、ピーナッツ、さつまいも、カボチャを栽培。ここ数年はエリア再生のためにアーティスティックな装飾が加えられたことが奏功し、世界のサステナブル観光地100選『グリーン・ディネティネーション・アワード・トップ100』に2年連続で選ばれています。

このエリアの見どころのひとつ、1959年に戴福記氏が造った魚用のかまど“福記魚灶”は、初期の経済生活の重要な源でした。また、大樹に覆われた“南寮樹屋”は、探検心をそそる神秘的な雰囲気が魅力。清朝の咸豐時代(1851〜1861年)の歴史的建造物“許返古宅”は、伝統的古民家ならではの美しさ。澎湖に残る古民家といえば、二崁エリアが有名ですが、ここ南寮の古い集落の規模もかなりのもので、時の変遷を経た石垣と回廊の間を歩くと、歳月がもたらす美しさを目の当たりにすることでしょう。

圧巻の浮き玉アートの登場で、話題の映えスポットに。

目の前がぱっと明るくなる浮き玉のインスタレーション“浮球裝置藝術”は、海洋ゴミのひとつである漁業用の浮き玉を地元の年輩の職人が作品に仕上げたもので、外せないSNSのチェックインポイントとなっています。

砂で炒るピーナッツ“海砂炒花生”など、昔ながらの手法を体験。

「南寮風車有機農場休息站」で申し込みできる農村体験は、専門ガイドの解説のもと、地元農民に扮して、牛糞の燃料を作ったり、澎湖式のかまどを使ったり、ピーナッツを熱した砂で炒ったり、石臼で豆乳を作ったり…さまざまな体験が可能です。

珍しいハーブティーや海鮮など、ご当地グルメは必食。

ご当地グルメも見逃せません。新鮮なイカ入り素麺“小管麵線”、滑らかな口当たりの豆乳プリン“豆花”、セリバノセンダングサのハーブティー“風茹茶”、野生のサボテンジュースなど、ここでしか味わえない名物の数々は、南寮の旅をより充実したものにしてくれることでしょう。 澎湖には、非常に興味深い伝統があります。それは“擼魚栽”と呼ばれる三角の網を使った漁法で、1人で操ることができ、初期の居住者にとっては、この方法での漁が重要な収入源となっていました。湖西鄉成功村は、この伝統的な漁法が徐々に廃れていくことを嘆き、近年、レジャーと観光のエリアを設けて、潮間帯(高潮線と低潮線との間の帯状の部分)で、観光客自ら漁師体験ができるように整備。これは挑戦する価値大です。

成功村を訪れたなら、天軍殿という廟も立ち寄りたいスポット。また、窯焼きピザのDIYや素朴なカフェ“豬舍咖啡”も人気です。

◆南寮風車有機農場休息站
住所:台湾澎湖縣湖西鄉200號
電話:+886-6-992-0561

軍事ファンならずとも見ておきたい、いにしえの要塞の姿。

軍事マニアにとっては、澎湖のかつての軍事要塞は期待感が高まるものであり、初めての観光客にとっては、斬新で得難い体験といえるでしょう。2020年に開放された「龍門閉鎖陣地」は、いまやホットなチェック・イン・スポット。日本統治時代に造られた全長705m、幅約60〜80cmの坑道は、ガイドの誘導で入ることができ、まるで迷宮を探検するような気分が体験できます。ガイドツアーでは、砲台、弾薬庫、作戦室などを見られるほか、沿岸砲、M14ライフル、砲弾などに触れることもでき、暗闇のなかで武器を操る難しさを知るなど、約50分間の行程はとても興味深い内容となっています。

かつての軍備に迫力を感じるのは、平和な時代ならでは。

1864年に造られた「馬公金龜頭礮臺文化園區」(天南鎖鑰)は、国定古蹟で、見晴らしがよく、兵舎や倉庫、トーチカや砲台、馬公港の大海までをも見下ろすことができます。深緑色のアーチ型の兵舎は主要な建築様式であり、また澎湖砲台の主な特徴でもあります。周囲は玄武岩を積んだ石垣で囲まれており、最高地点には、今は退役したM1式40対空砲があります。秘密の地下坑道は開放時間にチケットを購入すれば立ち入り可能で、ガイドによる解説を聞くことができます。

◆龍門閉鎖陣地
住所:台湾澎湖縣湖西鄉龍門村龍門港旁
電話: +886-6-927-4400#566
※ガイドツアーは事前予約のうえ、チケットの購入が必要です。

◆馬公金龜頭礮臺文化園區
住所:台湾澎湖縣馬公市莒光村10-2號
電話:+886-6-926-2180

澎湖きっての美しいビーチ。のんびりするなら林投公園へ。

「林投公園」は、海を眺めるのに最も立ち寄りやすい立地。園内の林投ビーチの東には丘のある尖山村、西には隘門ビーチがあり、この公園を拠点に、澎湖最長の金色の砂浜を散策できます。付近には海を望むブランコ、貝殻の教会、白灣景観レストラン、林春カフェがあり、コーヒーを飲みながら美しい景色を飽くことなく眺める…そんな贅沢な時間が過ごせます。

◆林投公園
住所:台湾澎湖縣湖西鄉龍門村龍門港旁
電話:+886-6-927-4400#566

科挙の登第者・蔡廷蘭の住居で、清朝時代へタイムスリップ。

遺跡好きなら、県の三級古蹟に認定されている「蔡廷蘭進士第」がおすすめ。清朝の道光26年(1846年)に建てられた澎湖式の四合院づくりの伝統住宅で、清代では澎湖出身で唯一という科挙の登第者であり、ベトナム漂流記『海南雑著』で知られる蔡廷蘭の住まいとして保存されてきました。ここでは、古代の衣装のレンタルができ、清朝時代へのタイムスリップ気分が楽しめるほか、日本の“選び取り”に似た生後1年の子どもの行事“抓周”体験サービスも実施しています(要予約)。

◆蔡廷蘭進士第
住所:台湾澎湖縣馬公市雙頭掛29號

篤行十村では、澎湖を代表する歌手をしのぶ展示や古民家を見学。

このエリアで、もうひとつ忘れてはならないのが「篤行十村文化園區」。澎湖出身で代表曲『祖母の澎湖湾』で知られる歌手・潘安邦氏の紀念館、同じく澎湖出身の歌手&プロデューサーの張雨生氏の故事館があり、彼らの偉大な功績に触れることができます。また、このエリアは完全な状態で保存されている日本家屋と眷村(外省人居住地区)も見どころで、書店、カルチャーショップ、茶屋など、特色あるお店が軒を連ねています。

◆篤行十村
住所:台湾澎湖縣馬公市新復路二巷22號

あれもこれもと欲張りたいDIY。澎湖の思い出づくりにぴったり。

澎湖群島では、たくさんのDIY活動が催されていて、例えば、伝統菓子メーカー「澎福」では一口揚げ団子“古棗味”の手作り体験、ワークショップ「O2 Lab海漂實驗室」では、海洋廃棄物を使ったアート制作、魚教育ブランド「年年有鰆」では魚の干物づくり、魚拓、標本制作などが体験でき、澎湖旅行がより思い出深いものとなることでしょう。
見どころ満載で、一泊二日ではとても回りきれない澎湖観光。ゆったり過ごせるよう、余裕をもったプランづくりが肝要といえそうです。次の長期休暇は、この離島で、ノスタルジックなひとときを。

◆O2 Lab海漂實驗室
Facebook:O2 Lab海漂實驗室-澎湖

◆年年有鰆
Web:fish-says.com

◆交通部觀光局澎湖國家風景區管理處
Web:https://www.penghu-nsa.gov.tw/
情報提供元: 旅色プラス