ホテル、旅館、民泊といったあらゆる宿泊施設を比較できる「WithTravel(ウイズトラベル)」をローンチした、WithTravel。8月にはiOSアプリ、9月にはAndroidアプリ、10月にはウェブ版を立て続けにリリース。各オンライン旅行代理店(OTA)との連携も急ピッチに進めており、国内の主要民泊予約サイトとのシステム連携を終えている。
WitiTravelでは、行き先や日付、人数といった条件に加え、価格帯や施設種別、設備内容を細かく指定することができ、宿泊先のお気に入り登録や検索履歴の閲覧などの機能も搭載している。代表取締役社長の春山佳久氏に、今後の展開について聞いた。
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WithTravelでは、東京の宿泊施設を検索すると、ホテルや旅館、民泊がすべてランダムに表示される。こだわり条件から、施設の種類、価格帯、サービス、アメニティなどを選択することで、より目的に近い施設を探し出すことができる。
例えばこだわり条件には、「空港へのシャトルバス」、「Pocket Wi-Fiの貸出」、「浴衣」といった項目もある。空港周辺の宿泊施設を比較する際に、うっかり民泊を予約して、深夜に施設にたどり着くことができないということも避けることができるし、訪日外国人の浴衣で過ごしてみたいという要望も叶えることができるだろう。これらの項目はOTAや施設によって「プール」と「スイミングプール」など記載事項に差があり、「すり合わせることが結構大変(春山氏)」だという。
「タトゥーでも入れる温泉」、「中華の朝食」、「ハラール認証取得」といったニッチだがニーズがありそうな項目が増えれば、今後より差別化もできるはずだ。民泊では、宿泊料金のほかに清掃費用が別途必要になるのが一般的であることから、短期滞在ではホテル、長期滞在では民泊が安くなることが多い。これらを一括で比較することができれば利便性も高まる。今後は利用者の反応をみて、表示方法を検討していくという。
楽天LIFULL STAYが運営する「Vacation STAY」や、旅館予約サイト「ゆこゆこ」などともシステム連携を行うなど、より多くの物件の比較検討ができるようになった。今後はアジアで100万軒の取扱を目標とする。
WithTravelが他の宿泊比較サイトと大きく違うのは、民泊施設を一括検索できるという点。日本では住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月に施行し、これまでグレーゾーンだった民泊施設をオープンに運営できるようになった。一方で、Airbnbは民泊新法の施行に合わせて、許可を得られていない施設の宿泊予約を一斉にキャンセルするなど、混乱が広がった。春山氏は訪日旅行者にアンケート調査を行ったところ「結構焦って、ホテルもすぐ見始めたという傾向があった。民泊とホテルの両方を一緒に検討できる環境ができるとより一層スムーズに宿泊先が探せるということに、好意的な反応も多かった」という。
春山氏は日本での民泊は、今後制限を緩和していくとの見通しも示した。「日本は特に賃貸とかに住んでいる人だとお金払って静かなところに住んでいるんだっていう人もいるので、その辺のケアも必要になる」という。
春山氏は現在の旅行ビジネスを、「実は2000年くらいからあんまり変わっていない。オンライン上で予約ができる形になったが、そこから凄く変わったかというと実はなかなか変わっていない」と指摘する。
DiDiやUberのような配車アプリ、ポケトークのような翻訳デバイスといったこの数年で生まれたツールや、ApplePayやクレジットカードの普及によって、「テクノロジーで旅行中のストレスを解消できるようになった。ストレスになるところをどう解決するかというところを考えると、いい答えが見えてくるかもしれない(同)」と話し、WithTravelでは、フィルターの設定状況や閲覧している宿泊施設の種類、親しいユーザーの傾向等から判断し、民泊をたくさん見ている人には民泊を優先的に上位表示するといった検索結果のパーソナライズ化を展開していく。価格が安くなった際に通知する「プライスアラート」機能のローンチも近日中を予定する。年明けにもビッグデータを活用した展開も見込み、テクノロジーを活用した利用者に優しい機能の実装を行っていくという。
オフィスは日本のほか、シンガポールにも置いており、今後は接続するサイトの増加を図るほか、アジア進出を本格化する。「旅行者が便利に旅を楽しんでくれるようなツールを提供し続けていきたい(春山氏)」と意気込んでおり、11月中にも資金調達を完了する。
春山佳久(はるやま・よしひさ)
株式会社WithTravel 代表取締役社長
UCLAで航空宇宙工学を学んだ後、電通、Google、二度の起業を経て、動画配信サービス「Hulu」にてデジタルマーケティング責任者として日本の事業立ち上げ初期メンバーとして参画、その後、Skyscannerにて日本を含む北アジアマーケットのマネジメントやSkyscanner Japanの立ち上げを経験し、株式会社WithTravelを2018年3月に創業。