その中井氏はそもそもAE86カローラレビンでサーキットを走り続けてきた。グリップからドリフトまで自由自在にマシンをコントロールするテクニックは、彼が手掛ける車両同様に有名なところ。 ウルトラモーターフェスティバルの会場には、このラウヴェルト・ベグリフ(頭文字からRWBと呼ばれる)が手がけたポルシェ911が3台も展示されていた。今回はそのうちの1台にスポットライトを当てよう。
シルバーのボディに黒いストライプが入れられたポルシェ930ターボには二桁の非常に古いナンバープレートが付けられている。これはと思ってオーナーである青木さんに話を聞くと、なんとこのクルマは中井氏が仕事として初めて製作した車両だという。 青木さんはポルシェ911専門誌にも度々登場する、ポルシェ乗りの間では有名な方。このクルマの前にもRWBによるポルシェ964に乗られていた。のちにRWB964を手放すことになってしまうのだが、2020年に「この930ターボを引き継いで欲しい」と前オーナーから要望されたのだ。
前オーナーからの申し出に何かの縁を感じた青木さんは、躊躇うことなく930ターボを引き継ぐことにした。それというのも、このクルマが中井氏の個人所有車とは別に、初めて仕事として製作したポルシェだったからだ。 とかくボディのカスタムは流行に左右されて形状を変えていくものだが、この930ターボは現在RWBが製作するボディパーツとほぼ変わらない。いわば普遍的なスタイルであることも理由の一つだろう。特筆すべきは前後のオーバーフェンダーで、RWB中井氏が手作業により組み付けている。海外から要望があれば数週間単位で海外へ飛び、自ら製作しているほどのこだわりなのだ。
肝心の走りもスタイルに負けない仕様になっている。ベースの930ターボエンジンはポルシェのチューニング界で知らないものはいないといってもいいフロントロウが製作したフルチューニング仕様だ。フロントロウといえば湾岸や最高速ブームの頃からあらゆる車種のフルチューンを手掛けてきた。巨大なインタークーラーが視界を遮って細部まで確認できないが、猛烈なパワーを手に入れている。 またRWBがサーキット出自であることをうかがわせるのが室内。ロールケージが張り巡らせてあり、シートはレカロ製フルバケットが2脚装備されている。この存在感は別格といっていいだろう。