キャブコンは投影面積が多く、それだけ空力的には不利だ。高速道路では、風を受けてフラつくこともある。さらにベース車両がカムロードやキャンターなどのトラックシャシーの場合、ラダーフレームで頑丈な反面、車重が重くなってしまう。
しかし、車両後部に家さながらの“箱”を背負っているのだから、それも仕方がないと言える。だが、諦めるのは早い。今回紹介するバンテックの「アストラーレ CC1」は、そうした弱点を解消したキャンピングカーと言えるのだ。
まずご覧いただくと分かるが、ベース車両は日産・NV350キャラバンなのだ。この車種はバンコンに使われることが多いのだが、ハイエースも含めてキャブコンのベースになった例がないわけではない。NV350の車両後部を切り取って、そこにキャンパーシェルを載せているわけである。
シェル部分は一般的なキャブコンのそれに比べるとルーフが低く、フロントウインドウからのラインがそのまま後部に伸びたスタイリッシュな形状が特徴だ。Vモーショングリルをコアとしたフェイスデザインも、スポーティな印象を与えるだろう。また見た目から、一般的なキャブコンより空力面でも有利なことが分かる。後輪以降のオーバーハングも一般的なキャブコンより短い。これは小回りがきくことを意味している。
さらにNV350キャラバンはモノコックボディのため、車重も軽量だ。トラックシャシーベースのキャブコンに比べると、かなりの軽量化を実現している。ラダーフレームでないため、剛性を心配する人もいると思うが、アストラーレ CC1はシェル部に4本のサブフレームを内蔵。バンテックのスタッフによれば、同社の他のキャブコンよりも剛性感が高いと感じるということだった。
動力性能面でカムロードと比較すると、ガソリン、ディーゼルともスペックでは若干劣るが、軽さが補って余りある。運転席の着座位置も、カムロードベースに比べると自然で、普段使いの乗用車とさほど変わらないのも美点と言えるだろう。
さて、気になる居住部分だが、同社の人気キャブコン「ZiL」シリーズに劣らず豪華で快適だ。まずエントリー助手席後ろにあるドアから行うが、ワンボックス車ベースという利点とも言える、スライドドア式となっている。ウッド調パネルとファブリックというシンプルなカラーアレンジの室内は、長く乗っても飽きが来ないものだ。室内レイアウトは一般的で、エントランスのすぐ前にダイネット、その対面にギャレーがインストールされている。
前方を見ると、バンク部にはサラウンドシステムが埋め込まれている。普通ならここにバンクベッドがあるのだが、同モデルは運転席上のシェルを低く設計しているため、人が寝られるほどのスペースは確保できない。そこで、スピーカースペースとして活用しているわけだ。
下段ベッドの下はラゲッジルームに当てられており、オーバーハングを短くしたことを補っている。この空間は外からのエントリーが可能なので、荷物も出し入れも容易だ。
ちなみに価格は979万円〜となっており、ZiLシリーズの方が安いグレードが存在する。しかし、FFヒーターやパーキングクーラー、ソーラーパネル、リチウムサブバッテリー、そして車両の安全装備を考えれば、決して高い買い物とは言えない。
さらにスタイリッシュで、ドライブフィールもいいとなれば、キャンパーとしては十分に魅力的だと言えるだろう。ひと味違ったキャブコンを...という人は、選択肢のひとつに入れていただきたい。