筆者は、e-208を試乗する前に、e-2008を一週間ほどドライブさせていただいた。
e-2008とe-208は、PSAのモジュラープラットフォーム、それも電気自動車用の『eCMP』を共用しているので、電池容量はどちらも50kWhだ。一充電航続距離は、なぜか日本のカタログには次世代自動車振興センターのCEV補助金算定基準でもあるJC08モードしか記載がない。e-208が403km、e-2008が385kmとなっている。ちなみに欧州のWLTPの数値は、e-208が339km、e-2008が331kmだ。
東京目黒・碑文谷のPSAジャパンでe-2008を返却して、e-208に乗り換えたとき、もちろんバッテリーはほぼフル充電状態で、航続可能距離は308kmと表示されていた。e-2008で経験済みだったから、「これなら300km走れるな」と考えた。
今回は、充電をテーマにするが、その前に、1週間生活をともにしたe-208の印象を記しておこう。
まず、乗り心地がいい。ホイールベースがe-2008より70mm短い(2610mmと2540mm)が、悪路や段差を乗り越えたときの突き上げや収まりはe-208の方がいいように感じた。首都高の舗装の継ぎ目もe-208は不快な振動なしに軽くいなしてくれる。最小回転半径はともに5.4mだが、全長が4095mm(e-2008は4305mm)と短いe-208の方が取り回し性能が高い。
相変わらずi-Cockpitに対する違和感は消えないし、極端に扁平なステアリングホイールもどうしても馴染めない。だが、e-2008よりもe-208の方が、ベターだった。どちらもステアリングの操作性が非常に軽くて、しかもセンター付近に遊びがあるのだが、ボディが小さいe-208の方がその軽さとクルマの大きさに乖離がなくて扱いやすかった。
ついでに言うと、3Dデジタルヘッドアップインストルメントパネルとプジョーが呼ぶ凝ったメーター(さまざまなモードがあって各種情報が表示できる)は、悪くないが、「こんな凝ったことできなくていいから、ヘッドアップディスプレイにして!」と感じた。
全高1465mmは、現在日本で買えるEVで、おそらくもっとも背が低いはず。多くのEVがバッテリー搭載などの条件を考えたSUVタイプのボディ形状になっているなか、e-208は、コンパクトは2ボックスHBであるのも好印象だ。ちなみに、SUVタイプではないが、日産リーフの全高は1560mm、ちょっとしたクロスオーバーよりも高い。
208/2008に関しては、コンベの208アリュール、208GT Line、SUV2008 GT Line、EVのe-208 GT Line、e-2008 アリュールにそれぞれ1週間程度試乗させていただいている。
個人的には、EV版に乗る前は
SUV2008 GT Line>208GT Line>208アリュール
という順番でSUV2008 GT Lineが気に入っていた。
今回、EV版の試乗させていただいて、
e-208 GT Line>SUV2008 GT Line>e-2008 アリュール>208GT Line>208アリュール
という順位に変わった。
その理由は、
・まずは走り
ガソリンターボの208と2008は、エンジンの仕様が異なっていて、208(最高出力100ps/最大トルク205Nm)は2008(最高出力130ps/最大トルク230Nm)よりアンダーパワーだが、e-208とe-2008のモーター出力は(最高出力136ps/最大トルク260Nm)で同じ。それでいてe-208の方が100kg軽いから、自ずと走りは軽快だ。
・次はデザインと取り回し性
デザインの好き嫌いはともかく、本来に現状のバッテリー性能を考えるとEVがもっとも得意とするのは、いわゆるシティコミューターとしての役割だ。e-208の後席は狭いし、ラゲッジルームも大きくない。だが、街中をすいすい走るという点で言えば、やはりコンパクトハッチバックというボディサイズ、形状は魅力的だ。
・そして価格
グレード名が変わったGTになったe-208 GTの価格はe-208 GTが432万8000円だ。これをガソリンターボの208 GTと比べてみよう。
208 GTが303万8000円
e-208 GTが432万8000円
だが、ここに環境省の補助金が67万2000円)を受けると、実質365万6000円になる。
さらに、地方自治体の補助金があれば、価格差はもっと縮まる。たとえば、東京都の補助金60万円を受けると、e-208 GTの価格は305万6000円になる。
208 GTが303万8000円
e-208 GTが305万6000円
ということで、東京で買うならほぼ同じ値段になるのだ。
これはとても魅力的。「補助金アリで魅力的!」というのが、プジョーに限らずEVが置かれた現状だというのは、別の問題だと思うけれど、いずれにせよ、実際に購入を考えるときには補助金のことは考えるだろう。
急速充電に関しては、車両側の能力の問題もある。車載の充電器が対応していないと意味がない。
プジョーe-208 (e-2008も)の車載充電器は50kWである。
車載の充電器は
プジョーe-208/e-2008/Honda-e/日産リーフ:50kW
マツダMX-30 EV Model:40kW
日産リーフe+:100kW
といったところだ。
EVの急速充電は、たいてい「80%まで○分かかる」と書いてある。それは80%を超すと、バッテリーへ電流が入りにくくなるから。だから、自宅での普通充電は行なわずに走行を続けたのだ。
さて、どこで充電するか?
マツダMX-30 EV Modelを急速充電したときは、第三京浜都筑PAの40kWのCHAdeMOで充電したが、e-208は50kWの充電に対応している。せっかくだから高出力の急速充電がしたい。
遠出した際に、280km走って、30分間急速充電してさらに192km航続距離を伸ばせれば、500km弱は走れることになる。これなら文句あるまい。
今回の急速充電は文句ない性能を発揮してくれたが、急速充電器によっては相性が悪く(古いものだと特にそのようだ)思ったように充電できない場合があるようだ。急速充電器の整備とともに、「相性」だとか、「プログラムの不備」とかで、思ったように充電できないといった不具合を解消していくことがEVの普及には必要だ。
今回、344km走行して、トータルの電費は7.2km/kWhだった。
バッテリー容量が50kWhでBattery Usable(使えるバッテリー容量)が45kWh程度だと考えると
7.2km/kWh×45kWh=324km
となる。324kmがe-208の航続距離である。
デザイン、走り味、航続距離、そして価格。
トータルで考えて、いまプジョーe-208は、「いま買うべきEV」の最右翼だと言える。
プジョーe-208 GT Line
全長×全幅×全高:4095mm×1745mm×1465mm
ホイールベース:2540mm
車重:1510kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式
駆動方式:FF
駆動モーター
形式:交流同期モーター
定格:57kW
最高出力:136ps(100kW)/5500pm
最大トルク:260Nm/300-3674rpm
バッテリー容量:50kWh
総電圧:395V
交流電力量消費率(JC08モード):131Wh/km
一充電走行距離(JC08モード):403km
車両本体価格:423万円
試乗車はオプション込み469万3350円(パノラミックガラスルーフ10万2000円 ナビゲーションシステム24万5300円/ETC2.0 4万4550円/パールペイント塗装7万1500円)