スリーター(三輪=スリー+スクーターを合わせた略語)と呼ばれるジャイロXやジャイロキャノピーなどの三輪スクーターを、ノーマルの原付一種から利便性が高まるミニカーに変更するには、具体的にどうすればいい? 神奈川県横浜市にある三輪バイクのエキスパート「HVファクトリー」に聞いてみました。


REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)


取材協力●HVファクトリー https://hvfactory.com/

ノーマルの「ホンダ・ジャイロシリーズ」を詳しく知りたい人へ!

ミニカー=49ccのまま「トレッド」を500m超に拡大

 ノーマルのジャイロシリーズは、49ccの原付一種(白ナンバー)。しかしトレッドを500mm超に広げれば、ミニカー登録も可能(水色ナンバー)です。




 ミニカーとは、「総排気量20cc超50cc以下のエンジン」「定格出力0.25kw超0.6kw以下電気モーター」を備え、トレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離。輪距とも呼ばれる)が500mm超の三輪以上の車両のこと。ナンバープレートのカラーは水色。




 ジャイロシリーズのトレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離 / 軸距とも呼ばれる)は、年式によって違いがあり、360mm(2スト)・430mm(2スト)・495mm(4スト)の3種類があります(下記の表A参照)。

初期型のジャイロX(2スト)。ノーマルのトレッドは360mm。
4ストのジャイロX(2021年モデル)。ノーマルのトレッドは495mm。
↑ ホンダ ジャイロXの大まかな種類。

↑ ホンダ ジャイロキャノピーの大まかな種類。

↑ ホンダ ジャイロUP(アップ)の大まかな種類。

「2スト」のジャイロシリーズを、ノーマルの原付一種 → ミニカーにするには?

 トレッドが360mmもしくは430mmに設定された2スト車の場合、原付一種からミニカーに変更するには、ホイールスペーサーの装着+ワイドホイール(リム幅を拡大したタイプ)・ワイドタイヤの変更により、トレッドを500mm超に拡大するのが定番。現在も各社から、2ストのジャイロシリーズをミニカーにするための様々なキットがリリースされています。

写真左)2スト用純正リヤホイール(6インチ4J) 写真右)2スト用純正リヤブレーキハブ
2スト用ワイド型リヤスペーサー(40mm / HVファクトリー製)。トレッド430mmのジャイロシリーズは、40mmワイドスペーサーを左右に組むと510mmになり、ミニカー登録可能。しかしトレッド360mmのジャイロシリーズは、360mm+40mm+40mm=440mmなのでミニカー登録は不可(ミニカーは500mm超)。
2スト用ワイド型リヤホイール(8インチ7J / HVファクトリー製)

「4スト」のジャイロシリーズを、ノーマルの原付一種 → ミニカーにするには?

 トレッドが495mmに設定された4スト車の場合、左右のホイールに市販の3mmスペーサー(1個2000円前後)を設置(左右3mmずつ拡大することで、トレッドが501mmになる)。この手法は、「ブレーキのライニングがズレる」「ベアリングが押されて潰れる」などの不安要素が残りますが、ホイールスペーサーやワイドホイールが必要な、トレッド360mm&430mmの2スト車に比べ、安価で、しかも簡単にミニカーに出来るのが利点です。




 HVファクトリーでは、上記の3mmスペーサー装着に比べて高額ですが、「ブレーキのライニングがズレる」「ベアリングが押されて潰れる=潰れた場合は修理費がかさむ」というリスクを省いた、ワイドホイール(4スト用ならではのブレーキハブ一体式)の装着をおすすめしています。

4スト用純正リヤホイール(8インチ4J)。4スト用は2スト用とは異なり、ホイールとブレーキハブ(ブレーキドラム)が一体式となっているのが特徴。4スト車(ノーマル)のトレッドは495mm。
HVファクトリー製4スト用8インチ5Jブレーキドラム一体型チューブレスアルミホイールワイドホイール。取付時のトレッドは524mm。価格は1本1万3750円~(10%消費税込)。材質はアルミでブレーキドラム部はスチール。写真のシルバーのほか、マットブラックメタリックもあり。HVファクトリーでのホイール組み換え工賃は1本1000円~。
ワイドホイール(8インチ5J )とワイドタイヤを装着し、トレッドを495mm→524mmに拡大してミニカーに変更された、HVファクトリーがカスタムしたジャイロキャノピー。オーバーフェンダーも装着済み(※2021年4月1日以降の新規登録車は、オーバーフェンダーの取り付けが義務化)。

☆☆粗悪ホイールに要注意☆☆


HVファクトリー製の4スト用ワイドホイールは、ドラム式ブレーキシューが接続するブレーキハブの内部に「スチール」を圧入して十分な耐久性を確保しています。しかし2021年3月現在、ブレーキハブの内部が素地のアルミのままの(スチールが圧入されていないと、ブレーキシューとの摩擦でアルミ部分が削れてしまう)、粗悪なコピー製品が出回っているのでご注意ください。

原付一種からミニカーに変更する時の、ホイールとタイヤのサイズ

 ジャイロシリーズのリヤホイールは、2スト車の場合、ホイールとブレーキハブが分割式のため(上記、「2スト」のジャイロシリーズを、ノーマルの原付一種 → ミニカーにするには? の項目の写真を参照)、ワイドスペーサーをかませば超ワイド&超大径ホイールが装着可能。HVファクトリーでも、かつては四輪用ホイールを加工流用するなど、自由自在にカスタムできました。

写真左)2スト用純正リヤホイール(6インチ4J) 写真右)2スト用純正リヤブレーキハブ。ホイール本体とブレーキハブはボルト固定式の別体式となっているのが特徴。
ホイールとハブが別体式だった2スト車は、スペーサーの幅の調整等により、ホイール幅選択の自由度も高かった。写真は超ワイドホイール+バギータイヤを組み合わせた、ミニカー仕様の2ストジャイロX。
HVファクトリー製ワイドホイール(8インチ5J )。ノーマルは8インチ4J。4スト車のリヤホイールは、ホイール本体とブレーキハブが一体式となっているのが特徴。

 しかしエンジンが水冷4ストロークに変更されてからは、装着されたラジエターが邪魔になる等のため、大径タイプのホイール装着はNG。また、4スト車はホイールとブレーキハブが一体式になったため、自由度が低下しました。




 4スト車のリヤホイールは、ノーマルの8インチのほか、10インチも装着可能。なお10インチホイールの場合、30扁平タイヤをチョイスするのが定番です(2021年3月現在、HVファクトリーでは10インチ30扁平タイヤの取り扱いなし)。

「原付一種」から「ミニカー登録」の手続き方法

 ノーマルの原付一種からミニカーへの登録変更は、各自の住民票のある市区町村役場で手続きを行います。千葉県某所(筆者在住)の場合。ジャイロシリーズなどの原付一種をショップでミニカー仕様にカスタムしてもらい、自分でミニカー登録する場合は、ショップに「改造証明書」を発行してもらい役所に提出。




 なお、自分でミニカー仕様にカスタムするなど、「改造証明書」がない場合は、自身で「申立書(申立書は窓口にあり)」を作成し、併せて車輪の幅が確認できる写真や画像を提出すればOK。




 登録に必要なものは、




・標識交付証明書


・使用中の原付一種の白ナンバープレート


・改造証明書、もしくは申立書


・車輪の幅が確認できる写真、もしくは画像を印刷したもの(実際にスケールを使い、トレッドの寸法=500mm超であることを分かりやすく撮影すること)


・本人確認できるもの(免許証・保険証等)




 上記はあくまでも千葉県某市の一例。各市区町村によって異なる場合があるので、事前に電話でよく確認しておきましょう。

三輪バイクにまつわる疑問点、一問一答

情報提供元: MotorFan
記事名:「 「原付のジャイロを水色ナンバー(ミニカー登録)にする方法は?」|三輪バイクにまつわる疑問点、一問一答