モーターファン・イラストレーテッド(MFi)176号は最新サスペンション事例を大特集
いまやクルマのパワートレーンには何らかの制御が必須だ。そしてサスペンションにも減衰力の電子制御に加え、駆動力との連携など新しいトライが散見されるようになった。いっぽうで、コンベンショナルな作動原理を持つサスペンションの機能アップも続けられている。MFi最新号ではサスペンションの現在と未来を探った。
サスペンション制御が未成熟な時代は運動力学に則ってジオメトリーを検討し、車両の安定性や駆動力の伝達性能を高めてきた経緯がある。その過程で乗り心地と操安性を両立させるべく、日産/トヨタは1989年にアクティブサスペンションを実用化した。状況に応じて積極的にストロークを作り出す意欲的な試みであったが、油圧を発生させるためのエンジン損失とコストによってその後に一般化することはなかった。
そして現在、電動をメインとするハイブリッドが続々と登場し、モーターの高応答性を活用して車両の姿勢制御を行なうモデルが現れ始めた。ベストセラーとなった日産ノートe-POWERの二代目となる現行モデルでは、4WD車の後輪駆動用モーターを大型化。前後の駆動力を最適に制御することで安定した姿勢を作り出すだけではなく、減速時には前後の回生量をコントロールしピッチングの中心をドライバーに近づけ快適性を高めている。
またマツダはエンジントルクの微小な増減でステアリングレスポンスを向上させるG-ベクタリングコントロールを2016年に導入。現在では同社のほぼ全モデルに搭載されている。MX-30EVモデルではさらに踏み込んだ駆動力制御による姿勢コントロールの領域に突入した。
こうした「新たなアドオン制御」をサスペンションに用いたモデルが生み出されるいっぽうで、従来技術の延長線上にあるサスペンションのブラッシュアップも続けられている。新型レクサスISサスペンションはばね下の重量低減のために国産車では非常に珍しいハブボルト締結のホイールをサイン採用。締め付けトルクのアップによってハブ周りの剛性アップも果たした。
4月にデビューしたホンダの新型ヴェゼルでは、プラットフォームを先代から流用しているため前後サスペンション形式も基本的には同じ。しかしフロントのストラットサスはスプリングの高応力化でコイル全体の小型化を進め、ロワシート位置を最適化し横力を低減。リヤのトーションビームサスも液封ブッシュの細かな見直しで操安性を高めつつつ乗り心地も向上させるなど、多くのノウハウの蓄積から生まれた見直しと品質熟成が図られている。
5月14日に発売されるモーターファン・イラストレーテッドvol.176は「制御時代のサスペンション」のタイトルのもと、基本的なサスペンションの仕事、新たな制御を活用し始めたサスペンションの実例、従来型サスペンションをブラッシュアップする数々のモデルの狙いと特徴などを特集。マツダがトーションビーム式リヤサスを選んだ理由、油圧ではなく電動制御を用いたまったく新しいアクディブサスの提案、振動/騒音を語るうえで避けて通れない共振周波数の解説など、サスペンションというメカニズムを多方面から分析した1冊だ。