TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)
カムシャフトの回転運動をバルブに伝える仕組みとして最もシンプルなのは「直動(直打)式」だ。バルブ側が備えるリフター(バケットタペット)をカム山が直接押し込むことで、バルブを開いた状態にする。カムとバルブの間に介在する要素がないので、バルブはカムプロファイル通りにリニアに上下動し、高回転域での追従性に優れるとされることから、高回転高出力型エンジンでの採用例が多い。バルブクリアランスは、タペット部に備わるラッシュアジャスターで自動的に調整することが一般的である。
これに対して、カム山がアームを介してバルブを駆動する構造を、広く「ロッカーアーム駆動式」と呼んでいる。バルブ駆動用のアームは支点、力点、作用点を持っており、カム山が力点を押すと作用点がバルブを押し込むように動く。アームのレバー比によってリフト量を調整しやすいなどの利点を持つ。正確には、支点が端部にあって反対側の端部が作用点となるものを「スイングアーム」、支点が中間部にあるものを「ロッカーアーム」と呼ぶ。
最近の主流は、力点にニードルベアリング内蔵のローラーを備えた「ローラーロッカーアーム」によるものだ。ローラーはカムフォロワーとして機能し、カム山に押されながら回転することで接触面の抵抗を軽減するため、摩擦損失低減に寄与する。ローラーロッカーアームのうち、長さがごく短く、レバー比よりもローラーの効果を最優先したような構造のものを「ローラーフィンガーフォロワー」と呼ぶこともある。