そこで、EV普及のための政策が「優遇策」である。
さまざまな優遇策がある。エコカー減税もそのうちのひとつだが、本稿のテーマは、「新車購入時の優遇措置=補助金」について、だ。
これまでもクリーンエネルギー自動車の新車購入時には政府からCEV(クリーン・エネルギー・ビークル)補助金が支給されてきた。このCEV補助金のほかに
■環境省の再エネ電力補助金
■経産省V2H(ビークルtoホーム)、V2L(ビークルtoロード)補助金
が新設された。
CEV補助金 or 環境省の再エネ電力補助金 or 経産省V2H/V2L補助金
という意味で、3つの補助金のうち、どれかひとつを選んで申請することになる。
金額的には
CEV補助金<経産省補助金<環境省補助金
となるから、新規に追加になった環境省補助金を受けるのが一番お得だ。
環境省補助金とは
環境省補助金とは、「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボン・ライフ・ワークスタイル先行導入モデル事情」
のことである。
これは、
○EV購入時に加えて自宅/事務所等の電力を「再エネ100%」電力に変えること
○政府が実施する調査にモニターとして参画すること
が条件になる。新車を購入して「4年間」はモニターとして参加することが求められるから、4年間は原則として保有しないと、補助金の返還対象になるから注意が必要だ。
「再エネ100%電力調達」の要件については、こちらを参照してほしい。
東京電力/北海道電力/東北電力/中部電力/北陸電力/中国電力/四国電力/九州電力などの電力会社はもちろん、いわゆる新電力会社にも再エネ100%のプランがあるから、自宅/事務所の電力をそれに切り替えればいいだけだ。
車両への補助金のほかに、V2H、V2Lのための機器を導入する場合の本体や工事費用の補助もあるが、ここではあくまでも車両価格への補助金をテーマにする。
また、補助金は、予算分を受け付けるとそこで絞め切られる。今回の環境省の補助金だが、おそらく年内いっぱいくらいで予算を使い切るのでは、ということなので、補助金ありの購入を考えている人は、あまりのんびりしてはいられない。
ということで、現在車両価格500万円以下の主な電気自動車をリストにしてみた。(編集部調べ)
現在もっともリーズナブルなEVは(トヨタC+podなどもあるが)、
日産リーフS 車両価格332万6400円
である。
これを購入するとして、自宅の電力を「再エネ100%」に変えると、環境省の補助金が73万6000円受けられる。すると
259万400円で購入できるわけだ。
これはなかなか魅力的である。
さらにいうと、各地方自治体の補助金もある。
東京都の場合は、環境省の補助金を受けた場合(つまり再エネ100%に切り替えてEVを購入した場合)は、60万円(従来は45万円)の補助金が出る。
すると
リーフS:199万400円
となり、なんと200万円を切った価格でリーフが買えるのだ!
マツダのMX-30EV MODELを例にとると
マツダMX-30のBasic Set
車両価格は458万7000円(税込み)
環境省CVE補助金は46万6000円
東京で買う場合、
東京都ZEV導入補助金(令和3年度):通常個人は45万円、環境省補助併用時は60万円
つまり再エネに乗り換えて環境省の補助金を申請すれば、補助金総額は106万6000円になる。
実質車両価格は352万1000円ということだ。
MX-30EVの場合の残価率は4年で43%となっている(補助金を得るためには4年間の保有が条件)。
つまり、4年後の残価は197万2410円ということだ。
4年間で車両にかかる費用は154万8590円ということになる。
38万7148円/年間
3万2262円/月
ということになる。
車両価格が100万円以上安い
MAZDA3ファストバックのSKYACTIV-X搭載モデルの上級グレード、Xバーガンディセレクション(車両価格345万1963円)とさほど変わらない負担額で4年間乗ることができるわけだ
地方自治体のEV購入補助金はそれぞれ金額、条件が異なるので、ぜひお住まいの自治体(県市町村)の情報を調べてほしい。
EV購入をためらう最大の要因は、一充電の航続距離の短さだろう
今度は、それを入れて表にしてみた。
補助金受給後の購入価格をWLTCの一充電走行距離(テスラはWLTPの数値、プジョーは欧州のWLTCの数値)で割った数字が
「1kmいくら?」の欄にあるものだ。
もっとも安いのは、
テスラModel3のAWDロングレンジ(509万円なので、500万円を少しオーバーしているが)。
テスラModel3AWDロングレンジ:1km=7397円
日産リーフe+ X:1km=7884円
テスラModel3RWDスタンダードレンジプラス:1km=7902円
日産リーフS:1km=8045円
というところが、もっともコストパフォーマンスが高いということになる。
車両価格500万円と聞くと、ちょっとした高級車だが、補助金を受けたあとの金額を見ると、250~450万円になる。地方自治体の補助金(東京都の60万円は破格だが)まで考えると、350万円程度の予算があれば、選択肢はかなり拡がっていることがわかる。