ガソリンエンジンの熱効率50%超えの道筋を作った、内閣府が主導した産学官プロジェクトSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)では、開発したエンジン燃焼室解析ソフト「火神(HINOKA)」によって精密な解析ができるようになりました。そのHINOKAが捉えた吸排気の詳細は、まるで生き物のようです。特集のテーマである「ガスの気持ちになって、エンジンの呼吸における構造とその工夫」について解説しています。
空気流動を巧みに利用している最新エンジンの実例を紹介。まず最初に、ガソリン、ディーゼルそれぞれの課題を解決するために、先入観にとらわれず原理原則に従ってブレークスルーを実現した「マツダのSKYACTIVシリーズ」。次に、理論空燃比をはるかに超える領域まで混合気の高希釈化を進めながら、一般的なプラグ点火を用いて安定的な燃焼を実現した「スバルのCB18型エンジン」。そして最後に、量産エンジンへの実装を前提に、タンブル流を精密に作り込み熱効率50%を射程に捉えた「日産のe-POWER向け次世代燃焼技術“STARC”」を取り上げています。これらには、日本が世界に誇るエンジニアの叡智が結集しています。
巻頭企画として、2021年をもってF1からの撤退を発表したホンダのパワーユニットを紹介しています。最高出力が120kWに規定されているMGU-Kの出力を足すと、現在のF1パワーユニットは950ps前後の総合最高出力を発生しています。エンジン単体で800ps近い出力を発生していることになり、最大熱効率は現行規定が導入された2014年の段階ですでに40%を超えています。2015年からパワーユニットサプライヤーとして参戦を始めたホンダによる、F1パワーユニット開発の事例をまとめました。