TEXT:畑村耕一(Dr. HATAMURA Koichi)
Cクラス用ボアピッチ97mmの2.0-2.3ℓの古くて大きな4気筒エンジンに代えて、Aクラスと共通のボアピッチ90mmの小型1.8ℓ4気筒エンジンに全面的に切り替えるために、2002年に登場したエンジン。排気量は小さくなったがスーパーチャージャーで過給することで、出力トルクとも向上している。圧縮比と過給圧を変えることで、C180/105kW(圧縮比10.2)、C200/120kW(同9.5)、C230/141kW(同8.7)の三つのスペックを同じエンジンから生み出している。ここでは120kWのエンジンを中心に紹介する。
ダイムラーはそれ以前に142kWの2.3ℓ KompressorをCクラスに搭載していたが、圧縮比も8.8と低く、ダウンサイジングによる燃費向上を狙ったものとは言えないものであった。1.8ℓのC200 Kompressorエンジンはトルク240Nm(平均有効圧16.8bar)を応答遅れなく発生するので、2.5ℓクラスのエンジンの代替が可能で10%程度の燃費向上効果を得ているはずである。
エンジン本体が小型軽量になっただけでなく、ダイレクトからローラーフォロアーの動弁機構に吸排気VVTを備え、燃費向上に寄与している。一方、電磁クラッチを持たないベルト駆動のイートン製スーパーチャージャーをスロットルの上流に置いて、過給が不要な場合は余分な空気をバイパスさせているが、燃費的には有利な構成とは言えない。吸気系には至る所で騒音対策に苦労した後が見て取れるように、あまりスマートな設計とは言い難い。
このエンジンシリーズの最大の狙いは、下から大きくなってきたAクラスと、燃費向上のためにダウンサイジングが必要となるCクラスのエンジンを共通化して、生産台数の少ない高級ブランドのベンツのエンジンの製造コストを大幅に低下させることにあったと思われる。さらに、エンジンが小型軽量化されることで、車の操縦安定性に大きく貢献しているだろう。その次に燃費も向上すると言うので、良いことずくめである。ただし、8ℓ/100kmを超える燃費は当時の同クラスエンジンと比較して優れているとは言い難い。生産性という社内事情を反映してできたエンジンの限界を示しているのではないか。