同時に、欧州で厳格化されるCO2排出量規制(95g/km規制)をクリアするために、ある一定量は売りたいモデルでもある。
欧州では2021年から「自動車メーカーごとに販売される新車のCO2排出量が、販売台数を加味した加重平均で95g/km以下」という規制が始まったからだ。達成できなかった場合の罰金は、目標を超過したg/km値ごとに、95ユーロかける販売台数となる。1ユーロ=130円で換算すると1g超過するごとに1万2350円の罰金を支払わなければならない。
2020年は1台のEVを売ると、2台分で計算するという優遇政策があった。2021年は、1台が1.67台相当、2022年は1.33台相当、2023年移行は優遇がなくなる(1台が1台としてカウントされる)ことになっている。つまり、2021年は欧州で1万台EVを売ったら、1万6700台売れたことになるわけだ。CO2排出量0gのクルマがプラス6700台になるのだ。
したがって、Honda eもMX-30も、そこそこは売れてくれないと困るモデルなのだ。
それでは、それぞれの販売台数を見ていこう。
Honda eは、2020年4月、MX-30は6月から販売データが出ている。
21年の2月までに
Honda-eが4263台
MX-30が10194台
がヨーロッパで売れた。
これは、どういう数字なのだろう?
これは、2020年の欧州でのBEVの販売台数ランキングTOP30だ。これを見ると、まずこれだけバラエティに富んだ車種が選べることに驚く。
そして、ランキングトップのルノーZOEは、2021年に9万9432台も売れている! 2位のテスラModel3も8万3979台、3位のVW ID.3も5万4495台、売れた。MX-30、Honda eとは桁違い…とまではいかないが、かなり販売台数に差を付けられていることがわかる。
正直言って、マツダMX-30のセールスは、おそらくほぼ期待通りだろう。対して、Honda eはやや期待外れ、と言わざるをえない。電気自動車といえば、三菱iMiEV、日産リーフで世界に先駆けたはずのニッポン。なのに、いまや欧州で見ると完全に劣勢である。
なぜか?
まずは、価格。
ドイツでの価格を比べてみよう。
■ルノーZoe ZE50 R110 31990ユーロ(415万8700円)
■VW ID.3 Pure Performance 31495ユーロ(409万4350円)
■ホンダHonda e 33850ユーロ(440万500円)
■マツダMX-30 34490ユーロ(448万3700円)
というように、売れ筋のモデルよりやや高価である。Honda eもMX-30も日本で生産して、欧州に輸出されるモデルだからEUの自動車関税7.5%がかかるので、ライバルよりやや高価にならざるを得ない。
次に、バッテリー容量(=航続距離)を比べてみよう。航続距離は、WLTP、WLTCの複合モードである。
■ルノーZoe ZE50 R110 54.7kWh(395km)
■VW ID.3 Pure Performance 48.0kWh(352km)
■ホンダHonda e 35.5kWh(222km)
■マツダMX-30 35.5kWh(200km)
となっている。そう、明らかにバッテリー容量が少なく、ゆえに航続可能距離が短いのだ。高価で航続距離が短いとなれば、なかなか選んでもらえない。マツダ、ホンダともに、「セカンドカー需要」を狙っているのだろうが、「ファーストカー」として選ばれないと、なかなか販売台数を伸ばすことは難しい。
ちなみに
日産リーフ(40kWhモデル)は、3万1177台で7位。
リーフのドイツ国内価格は、29990ユーロ(389万8700円)。バッテリー容量は40kWhで航続距離は270kmである。
欧州でのBEVのあり方では、Honda eとMX-30の「35.5kWh」というバッテリー容量は小さすぎると考えられているようだ。関税の関係もあるが、ほぼ同じ価格帯のルノーZoeが50kWh以上のバッテリー容量で395kmの航続距離を持っている。デザインとキャラクターで200km+αのEVを同じ価格で売るのは、かなりハードルが高いと言わざるを得ない。
走りもデザインもいい。Honda eとMX-30が欧州で成功するには(とくにHonda e)、価格を少し下げてセカンドカー需要を明確にするか、バッテリー容量を増やすか、だろう。欧州のEV市場は、想像より早く拡大している。ニッポン勢の巻き返しに期待したい。まずは、日産アリアがどう受け入れられるか。注目だ。