昨今、自動車において注目されているのはそうした何度かのプロセスを経る間接的な変換ではなく、物質の「ゼーベック効果」による「熱電変換素子」を用いて熱を直接電気に交換する方法である。
自動車の走行には、一定の熱量は必要とされるものの、あるレベルを超えればあとは余剰となる。燃費向上の機械的な方策もきわめて複雑高度化し、すでに手詰まり感さえもあるいま、厄介ものとして手を焼いていた「廃熱」を、「排熱」としていかに有効利用するかが、今後の鍵として期待される。
2004年にアメリカ・エネルギー省の施策として始まった「Thermoelectric Waste Heat Recovery Program(廃熱熱電変換プログラム)」。同プログラムは「10%の燃費向上」「エミッション低減」「商業化ならびに実現の可能性」などを目標とし、その実行部隊として4チームが結成されている。
そのうちのひとつがBSSTと北米BMWを主体とするチーム。彼らは2006年9月、530iへの熱電変換システムの搭載を想定し、実車にThermoelectric Generator(TEG)を装着してテストを行なった。シミュレーションによれば、8%の燃費向上が確認できたという。高速走行時で最大1kW、市街地走行で最大500Wの出力、熱電変換効率12%、1ポンド(約454g)以下の重量、1ドル/Wの価格を数値目標としていた。
GMはゼネラル・エレクトリック(GE)と組んだチームを結成。こちらは、排気ルートとラジエータールートのふたつのTEGシステムを備える。しかし予想されるように、冷却水側の温度は排気側レベルを見込めず、当然効率は劣る。
BMWと同様、分岐した排気ルートの片方にTEGシステムを介し、もう片方はバイパスルートとしている。平均で350W、最大で914Wの出力をマークした。350Wの出力は現状のオルタネータと照らし合わせれば、高速/市街地走行でおよそ3%の燃費向上に相当する。GMは2009年にもテストを重ね、三年以内の製品化を目標としていた。