TEXT●まるも亜希子(MARUMO Akiko)
2005年に三菱アウトランダーが登場した時に、最初に試乗したのがなぜか地方のミニサーキットだったのです。
「SUVなのに、なぜサーキット?」と不思議だったものの、走りはじめて最初のコーナーの進入で、「おおっ!」とビックリ。減速時の姿勢変化といい、4輪がしっかり自分の仕事をして路面をかき出していく感覚といい、そのあとにグイっと向きを変えてコーナー出口まで一瞬で持っていくあたりまで、これはまるでランエボ! SUVだからと大人しく走るつもりだったのに、気がつけばバリバリにサーキットを攻めている自分がいたのでした。
開発者に聞けば、アウトランダーの4WDはランエボで培った「速く安定して走るための4WD技術」がふんだんに盛り込まれていたり、ルーフを軽くして重心を低くするなど、SUVだからといって走りの楽しさを諦めないゾ、という意気込みがすごいなと、感心したのを思い出します。
もちろんその想いは現行の2代目にも受け継がれており、ミドルSUVとしてはやっぱりアウトランダーは走って楽しいナンバー1。でも、初代のこの衝撃がが大きすぎて、忘れられない私です。
15年くらい前に、中古でメルセデス・ベンツCクラスクーペを買おうとショップに探してもらっていたところ、なかなかコレという個体がなく、「ちょっと違うけど、同じく2+2シーターのクーペだし、これはどう?」と勧められたのが、10年落ちくらいのポルシェ968でした。
軽量化されたクラブスポーツではなく、ミッションもティプロトニック。助手席側のドアヒンジがバカになっているという理由で、価格は激安。大丈夫かな〜と不安になりつつも、モノは試しにと購入してみたところ、いやいや驚きましたね。「腐っても鯛」とはこのことです(失礼!)。
まず、3.0L直4エンジンがスコーンと気持ちよく回る回る。ポルシェ独自のバリオカムという可変バルブタイミング機構が採用されていたんですよね。フロントにエンジンを搭載したFRですが、トランスアクスル方式により前後重量バランスが最適化されていたのでしょう、そのハンドリングは小気味よく、思った通りにカーブをトレースしてくれて、リアが滑り出すギリギリのところで踏ん張ってグイっと加速しはじめる! これがもう楽しくて楽しくて、箱根の山道が「もっと続けばいいのに」と思わせてくれた初めてのクルマになりました。
そんな話をしたところ、当時「ミスターポルシェ」と呼ばれていた広報の方が、「実は僕もベストハンドリングポルシェは968だと思ってます」とこっそり伝えてくださったのも嬉しかったですね。
ホンダの初代シティが現役の頃はまだ学生だったので、初めて乗ったのは2005年頃のこと。「トールボーイ」と呼ばれた独特のスクエアボディに丸目のヘッドライトは、誕生から20年以上経っていてもカッコ可愛くて、「ついに乗れるのか〜」と嬉しく思ったものでした。しかもそのステージとなったのは、冬の北海道。凍った湖に氷上コースを作って、なんと試験的にスパイクタイヤを履いたシティを走らせてもらったのです。
エンジンは1.2Lターボで、今思えばスペックも100ps程度と大したことはないのに、現在の軽自動車より短くて軽いボディに載せたものだから、その加速は氷上でさえも爆発的。あっという間に吹け切って、前転するんじゃないかくらい前のめりに減速し、クルクルと軽やかにカーブをこなしていくと、まるで遊園地のコーヒーカップに乗っているようなGの連続。こんな楽しさを味わったのは、シティが初めてでした。きっとこの先もないんだろうなぁと、大切にしたい思い出です。
ただ、現行モデルではプジョー208に、シティのような楽しさの片鱗を感じることができたので、気になる方にはぜひ試乗してみてほしいなと思います。
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