TEXT●生方聡(UBUKATA Satoshi)
実をいうと、自動車雑誌の編集部に入るまでは、左ハンドル車を運転したことがなかった私。そこで、慣れるためによく借りて乗ったのが編集部にあったルノー・エクスプレスだった。日本で人気のカングーの前身で、ルノー5に四角い荷室をくっつけた、いわゆる“フルゴネット”である。
1.4リッターのガソリンエンジンに5速マニュアルの組み合わせはお世辞にも速いとはいえなかったけれど、見た目から想像できないほど動きは軽快。しなやかな動きのサスペンションは実に気持ちの良いハンドリングを見せてくれて、下り坂では下手なスポーツカーをカモれるほどの実力だった。
乗り心地も快適で、フラットライドのおかげで遠出もラク。何度か路上で止まり、JAFのお世話になったのも、いまとなっては懐かしい想い出である。
私にとって初めて所有したポルシェが987前期のボクスターS。911よりも身近だし、オープンカー好きの私には、ミドシップの2シータースポーツという潔さが刺さった。どうせ買うならマニュアルが欲しいということで中古車を探していたら、たまたま出逢ったのがパワフルなボクスターSで、試乗したら3.2リッター水平対向6気筒に一目惚れ。自然吸気の緻密なフィーリングや独特のボクサーサウンドにノックアウトされたかたちだ。
真夏の昼間と雨の日以外はソフトトップを開けて走ったが、スピードを上げなくても背後のフラット6の存在を感じながらのドライブは最高の気分。もちろん、ワインディングロードを飛ばすのも楽しいが、ふだんの一般道でも爽快な気分にさせてくれるボクスターSは、最高の相棒だった。
コンパクトカーのお手本といわれるゴルフのなかで、いつの時代もクルマ好きの注目を集めているのがスポーツモデルのGTI。ゴルフ7の時代にはGTIとさらにスポーティなGTIパフォーマンスが用意され、そのGTIパフォーマンスにゴルフR譲りのハイパワーエンジンを積んだのがGTIクラブスポーツだった。
このクルマを中古で手に入れ、約3年間付き合うことに。スポーツモデルであってもそこはゴルフ、ふだんのアシとして、とても機能的で快適な一方、その気になって飛ばせば、フォルクスワーゲンきってのハンドリングマシーンとしての本性を見せてくれる。265psというパワーは使い切れる安心感があり、吸気系を少しいじった愛車はエンジンのレスポンスも鋭く、回転域を問わず、気持ちの良い加速を味わうことができた。
まさに万能のコンパクトスポーツだったGTIクラブスポーツ。ついつい遠出がしたくなるクルマで、オドメーターの数字が3年で約46,000km増えたのは、運転が楽しい表れである。
『運転が楽しいクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
クルマ好きにとって、クルマ選びの際に大きな基準となるのは、
「運転が楽しいかどうか」ではないでしょうか。
とはいえ、何をもって運転が楽しいと思うかは、人それぞれ。「とにかく速い」「速くないけど、エンジンが気持ち良い」「足周りが絶品」などなど、運転を楽しく感じさせる要素は様々です。
本企画では、自動車評論家・業界関係者の方々に、これまで試乗したクルマの中から「運転が楽しかった!」と思うクルマのベスト3を挙げてもらいます。
どんなクルマが楽しかったか。なぜ楽しいと感じたのか。それぞれの見解をご堪能ください。
明日の更新もお楽しみに!