TEXT●吉川賢一(YOSHIKAWA Ken-ichi)
デリカD:5は、外見はミニバンですが、中身はほぼクロカン。運転すれば、そこらのミニバンとはまったく違う操縦感覚で、最初はちょっと戸惑うほど。バウンド側もリバウンド側もサスペンションのストロークが長く、どんなに荒れた道でもタイヤは接地し続けられるような、安心感があります。ただその分足回りはソフトで、まるでクルーザーに乗っているかのような浮遊感があり、慣れないと運転しにくいところはあります。でも、その癖のあるクルマを上手く操縦するのが楽しかったなあ、と思う一台です。
S15(日産シルビア)を初めてみたときはまだ学生でしたが、「こんなにカッコよいクルマがあるのか!!」と衝撃をうけて以来、憧れたクルマです。背が低くてシャープなボディデザイン、ヘッドライトやテールランプの造形、6速マニュアルトランスミッション、インテリアに至るまで、運転するまでは理想のクルマでした。でも乗ってみると、ステアリングは重くて渋いし、大して速くもなく、マフラー音の迫力もなく、ロードノイズもまあまあうるさい。「ああこんなクルマだったのか」とショックをうけたのを覚えています。
でもそのおかげか、「いじりたくなる衝動」にかられたクルマでした。タイヤ、サス、エアロ、マフラー、エンジンもちょっといじって馬力を上げて...、など、運転をしながらあれこれ妄想をすることができる、という楽しみがあったクルマでした。
初めて触れたBMWがE46型3シリーズ(330i)だったのは、筆者にとって幸運でした。某国内自動車メーカーのテストコースで、日産V35スカイライン、メルセデス・ベンツCクラス、アウディA4などと乗り比べたときのことです。
330iは、普通の4ドアセダンに見えるのに、パワステが壊れたかのような重たいハンドル、路面にあるすべての段差の大きさが分かるほどに絞められたサスペンションが印象的。外見は地味で、インテリアも木目調でオジサンくさい。
でも、圧倒的に高い高速直進性とコーナリングの正確さ。そしてストレート6の滑らかなエンジンフィーリング。これには驚きをこえて感動をさせられました。
BMWのクルマは、ハンドリング、乗り心地、NVH、燃費に至るまで、道具としてはパーフェクトなクルマばかりです。おそらく、ライバル車とデータを比べれば、トップベンチでしょう。誰が乗っても「凄いなー」と思うはず。しかし、誤解を恐れずにいいますが、昨今のBMWは「楽しくないモデルが多い」というのが、個人的な感想です。感動がない。
昔のクルマは、ダメなところはあったけれども、そのおかげで良いところがより際立っていた。「個性」が強烈だったので、そこにクルマ好きがときめいていたんじゃないかなあと、BMWに乗るたびに、思い出します。
『最高に運転が楽しいクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
クルマ好きにとって、クルマ選びの際に大きな基準となるのは、
「運転が楽しいかどうか」ではないでしょうか。
とはいえ、何をもって運転が楽しいと思うかは、人それぞれ。「とにかく速い」「速くないけど、エンジンが気持ち良い」「足周りが絶品」などなど、運転を楽しく感じさせる要素は様々です。
本企画では、自動車評論家・業界関係者の方々に、これまで試乗したクルマの中から「運転が楽しかった!」と思うクルマのベスト3を挙げてもらいます。
どんなクルマが楽しかったか。なぜ楽しいと感じたのか。それぞれの見解をご堪能ください。
明日の更新もお楽しみに!