語り:津田洋介/TDF、まとめ:宮崎正行
【津田】いきなりなんで?
【編集部マルコ(以下、編)】説明しましょう。津田さんの膨大なカタログコレクションを、原付だけに限定するのがもったいないからです!
【津田】「もったいないおばけ」って知ってる?
【 編 】小学生の思い出です!
──原付と違って、おいそれと手に入れられなかった250ccは当時から憧れの存在でしたからね。たまには近所の同級生の女の子からジャンプアップして、年上の制服お姉さんで妄想を走らせてもいいですよね!
【津田】それはユーがだいたい中学生くらいという前提の比喩かな?
──イエス! 中2!
【 編 】宮崎さんは今も昔も一貫して年上好きですからね。あのカテゴリー分けで言えば「熟女モノ」。
──イエス! 熟女!
【津田】熟女って言われるとぜんぜん違う気がするけど、今回のカタログはFZ250だよね。フェザーじゃなくて〝フェーザー〟のほう。ここ大事。ヤマハ初の250cc直4エンジンを搭載したレプリカでもネイキッドでもない、未来志向のハイパフォーマンスモデルがこれだった。
──250cc直4エンジンはスズキのGS250FWが先でしたよね?
【津田】うん。でもGSは2バルブで、こっちはよりハイメカな4バルブ。でもヤマハの若手開発陣が大切したのはハイメカであることではないし、ましてや自主規制値いっぱいの最高出力45psでもない。「高性能って何(のためにあるの)だろう?」の答えをヤマハなりに具現したのが新コンセプト「ジェネシス」だったんだよね。それはFZ750と共有、デビューイヤーも同じ85年だった。
──そもそもスペック(数値)至上主義ではないということ?
【津田】そう。高性能=サーキットのラップタイム、ではない! と高らかに宣言したんだ。あらゆるライダーが、モーターサイクルならではのバランス感覚を、より高いアベレージで何の不安もなく満喫できる、そのためのポテンシャルであるべき……という新思想。ハイテクだけどアンチ・ハイテク、みたいな。
【 編 】カタログより全部抜粋。
【津田】うるさいよ!(笑)
──ジェネシス思想を暗唱できるライダーがいたら、そりゃ相当のヤマハ信奉者でしょうね。ちなみに僕は極真空手の道場訓をソラで言えます。
一同 で?
──ふん。カタログの文言にも「高性能ではなく『好』性能」って謳ってます。そういえば「有機体」って言い方も当時いろんなところで流行りましたね~。
【津田】マスの集中化のために4本のシリンダーを45度前傾させてダウンドラフトを実現させたのも、フロントカウルとフューエルタンクカバーを一体化させた〝ハイブリッドシェイプ・カウル〟も、両方ともジェネシス思想に端を発したコンセプチュアルな新設計&新デザイン。たしか小糸製作所製だったウインカーデザインがまたカッコいいんだ!
──えーと、宮崎、発売当時の85年はまさに中2でした。それでもってフェーザーの、めちゃエッジの効いたフォルムにたいへん憧れました。前後16インチと乾燥138㎏の軽量ボディ、まだ身長が伸びる前だった自分にも乗れそうな気がしたし!
【津田】今日はなんだか、めずらしく意見が合うね~♪
──初代カタナが長刀だったら、フェーザーは短刀ってカンジ。……いいコト言っちゃいました?(笑)
【津田】まあまあだね! でもあのころのジェネシス思想に心を震わせたのはオレもおんなじ。フェーザーのスタイリングを見て「なにこれ、カッケー!」って高校生のオレも憧れたもの。甲高い、いかにも高性能4発ってカンジの排気音も強烈に印象的だったしね。ヒュイーーン! っていうジェット機みたいな斬新な高周波サウンド、これが初体験だった。
【 編 】いい響きですねえ、初体験♥
【津田】でも残念なことに、あのジェット音は2型になったときにマフラーの仕様変更で失われちゃうんだ。音だけがやたらと速かったぜ(笑)
──音速マシン欲しい! 編集長、長期インプレさせてください!