そのブランドのファンや関係者ならずとも、そう憤慨したくなるような日本未導入モデルは、グローバル化がこれだけ進んだ今なお、数え切れないほど存在する。
そんな、日本市場でも売れるorクルマ好きに喜ばれそうなのになぜか日本では正規販売されていないクルマの魅力を紹介し、メーカーに日本導入のラブコールを送る当企画。今回は、フォードのフルサイズピックアップトラック「F-150」を紹介したい。
TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●FORD
983万4000平方キロメートルという広大な国土面積を持ち農業も盛んなアメリカでは、乗用車のようなキャビンとトラックならではの大きなベッド(荷台)を併せ持つフルサイズピックアップトラックの人気が根強い。そのけん引役となっているのが、約40年にわたり販売台数No.1の座に君臨しているフォードFシリーズ、中でも比較的コンパクトかつ乗用車的なデザインと質感を併せ持つ「F-150」だ。
2020年6月にフルモデルチェンジし14代目となったF-150は、先代と同様に高張力鋼板を多用した閉断面ラダーフレームと“ミリタリーグレード”を謳うアルミニウム合金製ボディを採用し、アクティブグリルシャッターやアクティブエアダムなどで空気抵抗の低減にも配慮。先代では2017年モデルより設定されている10速ATを全車標準装備とするなど、軽量化と燃費低減に寄与する最新技術を積極的に採用している。
そして、3.5L V6ツインターボエンジンと10速ATに、35kWのモーターと1.5kWhのリチウムイオンバッテリーによる新開発のハイブリッドシステムを組み合わせた「3.5Lパワーブーストフルハイブリッド」を全グレードに設定。エンジンはラインアップ中最も高性能な436ps&773Nmながら、30.6ガロン(約116L)の燃料タンクを搭載して、EPAモード航続距離は最高で700マイル(約1127km)を確保する見込み。けん引能力も1万1000~1万2700ポンド(4989~5760kg)と充分に高い数値だ。
新型F-150の新技術はこれだけではない。OTAアップデートや新世代のインフォテインメントシステム「SYNC4」を標準装備したほか、ADAS(先進運転支援システム)「Co-Pilot 360 2.0」にレーンキープアシスト、オートハイビーム、衝突被害軽減ブレーキ、ACCなどを実装。さらに高速道路ハンズフリー運転システム「アクティブドライブアシスト」や「アクティブパークアシスト」に対応する準備キットをオプション設定し、2021年第三四半期より有償のOTAアップデートでソフトウェアを提供する予定としている。
内外装はより一層洗練され、その質感は最早乗用車と言っても過言ではないレベル。上級グレードにはさらに、前席の背もたれがほぼ水平に倒れるだけではなく座面もリフトアップすることで仮眠を取りやすくする「マックスリクラインシート」を新たに用意するなど、まさに至れり尽くせりの1台だ。
そんな新型F-150だが、フォードが2016年に日本での新車販売を終了し、それ以後も復活の兆しを見せていないことから、近い将来に正規モデルを購入できる可能性は限りなくゼロに近い、というのが現実だろう。ボディサイズも狭い道では持て余し、外出先で駐車場を確保するのも容易ではないが、それは他のピックアップトラックも同様だ。
また、トヨタ・ハイラックスの正規輸入が開始され、ラージサイズのSUVも数多く販売されるようになった今、4年前よりもF-150を受け入れる土壌が広くなっているのは間違いない。フォードの日本市場復活とF-150の正規販売を心から期待している!
■フォードF-150スーパークルー5-1/2'リミテッド
3.5LパワーブーストフルハイブリッドV6(F-AWD)*北米仕様
全長×全幅×全高:5885×2029×1961mm
ホイールベース:3693mm
車両重量:2503kg
エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ
総排気量:3497cc
最高出力:321kW(436ps)/6000rpm
最大トルク:773Nm/3000rpm
トランスミッション:10速AT
サスペンション形式 前/後:ダブルウィッシュボーン/リジッドアクスル
ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ 前後:275/50R22
乗車定員:5名
車両価格:7万8490ドル(約820万円)