TEXT●生方聡(UBUKATA Satoshi)
当時「水中メガネ」の愛称で親しまれていたホンダZ。このクルマが現役のころ、私はまだ小学生で、そのユニークな後ろ姿がとてもカッコよかった。当時、円谷プロの特撮で『ジャンボーグ9』に変形したことも、好きな理由のひとつだったのだろう。
中学に入学すると、理科の先生がこのクルマで通勤していたが、マットブラックのボディカラーがとても印象的だった。 “がたい”のいいその先生とはクラブ活動を通じて親しくさせてもらったが、特撮ヒーローを思い浮かべるたび、ふたりのギャップが可笑しくて吹き出していたのは秘密である...O先生、ゴメンなさい。
シトロエンといえば、DSを筆頭に、圧倒されるほど素晴らしいデザインのクルマがたくさんある。それに比べると、このBXは控えめなほうだと思うが、それはあくまで「シトロエンとしては」の話で、当時の日本車に比べたら、かなり尖ったデザインだったと思う。
ベルトーネのマルチェロ・ガンディーニの作で、直線的なボディに、角張ったフロントのホイールハウス、半分タイヤが隠れたリヤのホイールハウスなどがとくに好きなところ。また、くるくるまわる“ボビンメーター”や、ワイパー本体から出るウォッシャーなど、ユニークなところは数え切れない。
クルマを駐めて時間が経つと、ハイドロニューマティックのサスペンションが沈み込み、ご主人を待つ忠犬のような姿になるのも素敵だった。ウチのBXは、沈んだまま起きてこないこともあったが。
同じジウジアーロが手がけてフィアット・パンダと、どちらを1位にしようか迷ったが、最終的に選んだのがフォルクスワーゲンの初代ゴルフ。当時、時代遅れとなった空冷ビートルの代わりになる新型車を模索していたフォルクスワーゲンが、ジウジアーロとともに生み出した初代ゴルフは、水冷エンジンをフロントに搭載し、前輪を駆動するという新しい考え方で、ビートルとは対照的なクルマに仕上げられた。
その直線的なデザインと、太いCピラーを持つ2ボックススタイルはとても新鮮で、いまだにその特徴が受け継がれているというのもすごい話だ。
私も過去にゴルフ1を2度所有したことがあるが、2台目をゴルフ7のプレス発表会に展示させてもらったのは良い想い出。そのとき来日したジウジアーロが、イベント会場をまわった際に、知人のゴルフ1にサインしたのだが、たまたまその時間、会場を離れていた私はサインのチャンスを逃してしまった。その悔しさといったら……。
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