塚田勝弘さんが選んだ「美しすぎるクルマ」、その第1位はフィアット・ムルティプラだ。まるで深海魚のような不思議なフェイスだが、3人掛け×2列の6人乗車を全長4mのコンパクトなボディで実現した、画期的なパッケージングの持ち主でもあった。




TEXT●塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)

第3位:いすゞ・ビークロス

1993年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカーのデザインが好評だったため、ビッグホーンのシャシーを使って市販化された1997年にビークロス。デザインはサイモン・コックス氏で、のちにGMを経てインフィニティのロンドンスタジオに移籍した。

自動車雑誌の編集者時代、会社が契約していた駐車場の隣に止まっていたのがこちら。




ビークロスのコンセプトカー「ヴィークロス」は、もう少しフロントエンドが低く落ち込んでいて、フロントフェンダーアーチとの対比が印象的だったけれど、市販仕様でもコンセプトカー感は十分に残っていた。まるでリベット留めのようなフェンダーの処理は、何度もまじまじと見た記憶がある。市販化されなかったオープン仕様のコンセプトカー「VX-O2」も出てれば合わせ技で1位にしたかも。




レンジローバーの初代イヴォーク/イヴォーク・コンバーチブルが出る前に強烈な先駆者がいたのだ。日本からこんなSUVはもう出てこないかもしれない。

第2位:プジョー406クーペ

1998年に日本導入が開始されたプジョー406クーペ。デザインを担当したピニンファリーナのダビデ・アルカンジェリ氏はほかに、フェラーリ360モデナも手掛けている。

「美しいクルマ」で思い浮かぶのがプジョー406クーペ。そのベースとなった406セダンは社内デザインによるもので、映画『TAXI』で疾走する姿はスポーツセダンそのもの。クーペはピニンファリーナの手によるもので、キリッとした顔から流れるような弧を描くCピラーまでとても美しい。フランスの貴婦人ってこんな感じかも。




白眉は、フロント斜めからの眺めとサイドビュー。ボディカラーとの組み合わせでイメージが結構変わった印象で、とくに気に入っていたのは「ルクソア・イエロー」と「リビエラ・ブルー」。前者はオーナーでもないのに色あせしそうだな...なんて夢想したのを思い出した。

第1位:フィアット・ムルティプラ(2代目)

2003年に日本上陸を果たしたフィアット・ムルティプラ。通常の位置にあるライトがロービーム、フロントウインドウ下がハイビームとなっている。

RV、ミニバン専門誌の編集者人生の中でも忘れられない1台だったのが、フィアットの2代目ムルティプラ。




初代の600ムルティプラは写真で見たことがあるだけだったが、30年ぶりに復活した2代目はヘッドライト(目)が思い切り離れていて、深海魚がモチーフか!? と思わせるほどのインパクトがあった。しかも、フロント3人掛け、リヤ3人掛けというレイアウトは、ほぼ同時期に登場した日産ティーノ、後にリリースされるホンダ・エディックスといったMPV(ミニバン)のフロント3人掛けと共にちょっとしたムーブメントを巻き起こしていた。




2004年のマイナーチェンジで普通の顔になってしまい、買いもしないのに妙にガッカリした。

全長は4m程度だが、全幅は1875mmとワイド。3人掛けシートはそれぞれ独立しており、真ん中席はちょっと後ろにずらすと大人でも意外に座れる。

こちらは後期型。すっかり普通のフロントマスクに様変わりしてしまった。

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どんなに走りが楽しくても、どんなに乗り心地が良くても、ブサイクなクルマには乗りたくない。そう、デザインはクルマの命。ということで、これまで出会ったクルマの中からもっとも美しいと思ったベスト3を毎日、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 【美しすぎるクルマ・ベスト3(塚田勝弘)】この顔にピン!と来たら「フィアット・ムルティプラ」