TEXT●塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)
自動車雑誌の編集者時代、会社が契約していた駐車場の隣に止まっていたのがこちら。
ビークロスのコンセプトカー「ヴィークロス」は、もう少しフロントエンドが低く落ち込んでいて、フロントフェンダーアーチとの対比が印象的だったけれど、市販仕様でもコンセプトカー感は十分に残っていた。まるでリベット留めのようなフェンダーの処理は、何度もまじまじと見た記憶がある。市販化されなかったオープン仕様のコンセプトカー「VX-O2」も出てれば合わせ技で1位にしたかも。
レンジローバーの初代イヴォーク/イヴォーク・コンバーチブルが出る前に強烈な先駆者がいたのだ。日本からこんなSUVはもう出てこないかもしれない。
「美しいクルマ」で思い浮かぶのがプジョー406クーペ。そのベースとなった406セダンは社内デザインによるもので、映画『TAXI』で疾走する姿はスポーツセダンそのもの。クーペはピニンファリーナの手によるもので、キリッとした顔から流れるような弧を描くCピラーまでとても美しい。フランスの貴婦人ってこんな感じかも。
白眉は、フロント斜めからの眺めとサイドビュー。ボディカラーとの組み合わせでイメージが結構変わった印象で、とくに気に入っていたのは「ルクソア・イエロー」と「リビエラ・ブルー」。前者はオーナーでもないのに色あせしそうだな...なんて夢想したのを思い出した。
RV、ミニバン専門誌の編集者人生の中でも忘れられない1台だったのが、フィアットの2代目ムルティプラ。
初代の600ムルティプラは写真で見たことがあるだけだったが、30年ぶりに復活した2代目はヘッドライト(目)が思い切り離れていて、深海魚がモチーフか!? と思わせるほどのインパクトがあった。しかも、フロント3人掛け、リヤ3人掛けというレイアウトは、ほぼ同時期に登場した日産ティーノ、後にリリースされるホンダ・エディックスといったMPV(ミニバン)のフロント3人掛けと共にちょっとしたムーブメントを巻き起こしていた。
2004年のマイナーチェンジで普通の顔になってしまい、買いもしないのに妙にガッカリした。
『美しすぎるクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
どんなに走りが楽しくても、どんなに乗り心地が良くても、ブサイクなクルマには乗りたくない。そう、デザインはクルマの命。ということで、これまで出会ったクルマの中からもっとも美しいと思ったベスト3を毎日、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。