TNGAのGA-Bプラットフォームベースの都市型クロスオーバー、ヤリスクロス。ジャストサイズにして、世界的な最激戦区となったBセグ・クロスオーバーへ後発モデルとしてトヨタが投入したモデルが、ヤリスクロスだ。そのヤリスクロスの、「ガソリンFF」「ハイブリッドFF」「ハイブリッドe-Four」モデルを試乗した。


TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

全長×全幅×全高:4180mm×1765mm×1590mm ホイールベース:2560mm

車名が示すとおり、ヤリスクロスはヤリスをベースにしたコンパクトSUVだ。トヨタのクロスオーバー/SUVのラインアップでいうと、ライズとC-HRの中間に位置する。ヤリス、ヤリスクロス、ライズ、C-HRのサイズと車重を比較してみよう。




ヤリスZ(2WD ガソリン)


全長×全幅×全高3940×1695×1500mm


ホイールベース2550mm


車重1020kg




ヤリスクロスZ(2WD ガソリン)


全長×全幅×全高4180×1765×1590mm


ホイールベース2560mm


車重1140kg




ライズZ(2WD)


全長×全幅×全高3995×1695×1620mm


ホイールベース2525mm


車重980kg




C-HR G-T(2WD CVT ガソリン)


全長×全幅×全高4385×1795×1550mm


ホイールベース2640mm


車重1400kg

エンジン 形式:直列3気筒DOHC 型式:M15A-FKS 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:ー 最高出力:120ps(88kW)/6600pm 最大トルク:145Nm/4800-5200rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:42ℓ

室内長×幅×高:1845mm×1430mm×1205mm

ターゲットとする層は別にして、ヤリスは運転を能動的に楽しむクルマ、ヤリスクロスはクルマを使って行動範囲を広げ、生活を豊かにするイメージだ。

後席の乗員はヤリスに比べると少しアップライトに座らせるパッケージングだ。

ヤリスクロスのプラットフォームはヤリスと共通で、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)のコンパクトカー向け、GA-Bを採用する。ドライバーの座らせ方はヤリスと共通だ。フロアからヒップポイントまでの高さ、かかとからヒップポイントまでの高さ(ヒール段差)、ペダルやステアリングの位置関係、インパネの高さもヤリスと共通だ。




ただ、フロアがヤリスよりも60mm高くなっている。そのぶん、乗り降りはしやすい。フロアの位置はタイヤの外径の違いで25mm高くなり、サスペンションメンバーを専用にすることでボディを35mm持ち上げているという。SUVらしさを持たせるため、ヤリスクロスはフロントセクションに厚みを持たせている。そのため、力強い造形の長いボンネットがしっかり視界に入る。

リヤサスペンションはトーションビーム式。
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式
215/50R18サイズ
ダンロップのエナセーブを履く

先代にあたる従来型ヴィッツは足首の角度が急できつかったとの意見を受け、ヤリスを開発するにあたってヒール位置を後方に移動させると同時にヒール段差を低くし、より楽な姿勢で座れるようにした。ヤリスクロスは改善されたその着座姿勢を受け継いでいる。ヤリスの場合はドライバーの着座姿勢を優先した影響で後席の居住性が犠牲になった。身長184cmの筆者が運転席に座った状態で後席に移動すると、脚が前席シートバックにめり込むほど窮屈だった。

トランスミションは発進ギヤ付きCVTであるDirect Shift-CVTを使う。パーキングブレーキは電動タイプ。

ヤリスクロスは後席のヒップポイントをフロアに対して20mm上げ、よりアップライトに座らせるようにした。その効果もあり、同じように筆者が後席に座った場合、わずかながらも膝頭とシートバックに隙間が生まれる。さらに、ヤリスクロスはサイドウインドウの倒れ込みを緩くしているため、頭まわりにも余裕が生まれた。ヤリスよりも断然快適だし、閉塞感の強いC-HRよりも開放的で居心地がいい。

後席の膝周りはヤリスよりだいぶ余裕がある。

運転席に話を戻すと、パワートレーンを問わず最上級グレードのZには、6ウェイパワーシート(前後スライド/リクライニング/上下)を標準装備とした。通常は複数のモーターを使って各機能を成立させるのだが、コストと重量を低減するため1モーターで各種機能を成立させたため、レバーの動きとシートの動きがリンクしていない。例えば、スライドさせるにしてもレバーに回転方向の動きを加える必要がある。ポジション調整の度に試行錯誤する様子が目に浮かぶ

1モーターによる電動パワーシート。使い方にはやや慣れが必要かもしれない。

ヤリスのパーキングブレーキは手でレバーを引き上げるタイプだが、ヤリスクロスは電動式だ。シフトレバーをPに入れると自動で作動し、ブレーキを踏みながらDに入れると自動で解除するので、基本的にはスイッチに触れる必要がない(自動機能をオフにすることもできる)。パーキングブレーキのかけ忘れや、解除のし忘れによるストレスから解放されるのはありがたい。

ヤリスのパーキングブレーキは機械式だが、ヤリスクロスは電動式だ。

荷室が広いのもヤリスクロスの特徴であり、魅力だ。一見して、広々としている。荷物を載せる前に積み方を考える必要はなく、無造作に放り込めばいい。そんな使い方を許容する広さだ。バックドアは電動開閉式だし、足を出し入れするだけで開閉するハンズフリー機能も備えている。クルマのサイズは小さいし、サイズに比例して価格もリーズナブルだが、高級感に欠けるにしても、機能はケチっていない。

トランクスペースは容量、使い勝手ともに優れている。

最低地上高:170mm 最小回転半径:5.3m

トヨタ・ヤリスクロス G


全長×全幅×全高:4180mm×1765mm×1590mm


ホイールベース:2560mm


車重:1140kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式


駆動方式:FF


エンジン


形式:直列3気筒DOHC


型式:M15A-FKS


排気量:1490cc


ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm


圧縮比:ー


最高出力:120ps(88kW)/6600pm


最大トルク:145Nm/4800-5200rpm


燃料供給:DI


燃料:レギュラー


燃料タンク:42ℓ


燃費:WLTCモード 19.8km/ℓ


 市街地モード15.0km/ℓ


 郊外モード:20.8km/ℓ


 高速道路:22.2km/ℓ


トランスミッション:Direct Shit -CVT(ギヤ付きCVT)


車両本体価格:202万円


試乗車はオプション込み244万4875円

トヨタ・ヤリスクロス HYBRID Z(FF)車両本体価格:258万4000円 試乗車はオプション込み319万9285円

燃費:WLTCモード 27.8km/ℓ  市街地モード29.4km/ℓ  郊外モード:29.9km/ℓ  高速道路:26.1km/ℓ

ヤリスクロスはヤリスと同様、1.5ℓ直3自然吸気エンジンにCVTを組み合わせた仕様と、CVTの代わりにモーターを組み合わせたハイブリッド仕様があり、それぞれ2WDと4WDの設定がある。ガソリン、ハイブリッドともに4WDを用意している点が、このクルマのセールスポイントだ。行動範囲を広げる車両コンセプトの一環である。

エンジン 形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ 型式:M15A-FXE 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:ー 最高出力:91ps(67kW)/5500pm 最大トルク:120Nm/3800-4800rpm 燃料供給:PFI 燃料:レギュラー 燃料タンク:36ℓ フロントモーター:1NM型交流同期モーター 最高出力:80ps(59kW) 最大トルク:141Nm

ガソリンは多板クラッチを内蔵したカップリングユニットによる制御(プロペラシャフトがある)、ハイブリッドはリヤにモーターを搭載するE-Fourだ。どちらも、空転するタイヤにブレーキをかけることで反対側のタイヤにトルクを伝え、悪路からのスムーズな脱出を助けるモードを備えている(ガソリンはROCK &DIRT、ハイブリッドはTRAIL)。いざというときに心強い機能だ(が、基本的には都市型SUVであることを忘れないようにしたい)。

トヨタ・ヤリスクロス HYBRID Z(FF)


全長×全幅×全高:4180mm×1765mm×1590mm


ホイールベース:2560mm


車重:1200kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式


駆動方式:FF


エンジン


形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ


型式:M15A-FXE


排気量:1490cc


ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm


圧縮比:ー


最高出力:91ps(67kW)/5500pm


最大トルク:120Nm/3800-4800rpm


燃料供給:PFI


燃料:レギュラー


燃料タンク:36ℓ


フロントモーター:1NM型交流同期モーター


最高出力:80ps(59kW)


最大トルク:141Nm


燃費:WLTCモード 27.8km/ℓ


 市街地モード29.4km/ℓ


 郊外モード:29.9km/ℓ


 高速道路:26.1km/ℓ


車両本体価格:258万4000円


試乗車はオプション込み319万9285円

トヨタ・ヤリスクロス HYBRID G(e-Four)車両本体価格:239万4000円 試乗車はオプション込み286万3945円

ヤリスはアクティブに運転を楽しむクルマ、ヤリスクロスは行動範囲を広げるイメージということだが、運転した際のフィーリングも、車両開発の狙いを裏付けるものだった。ヤリスクロスはヤリスよりひとまわり大きくて背が高く、重たい。本格オフローダーほどユサユサと揺すられる感じではないが、キビキビ動くヤリスに比べるとゆったり動く印象だ。

リヤには最高出力:5.3ps(3.9kW) 最大トルク:52Nmを搭載する。つまり電気式AWDだ。

ガソリン(2WD)は車重が軽いこともあって軽快。非力さは感じないが、強めの加速をしようとアクセルペダルを踏み込むとエンジン回転が跳ね上がり、同時にノイズが容赦なく車室に進入してくる。遮音材をおごれば抑えられるのだろうが、車格を考えればそこまで望むのは贅沢かもしれない。燃料消費面のメリットが薄いからと、最近のトヨタ車はアイドルストップ機能を廃している。だから、信号などで停車中もエンジンはかかりっぱなしで、3気筒に特有の振動がステアリングやシートから伝わってくる。後席に座っていても、ブルブルする。そんなの気にしない、ならそれでいい。

車重1270kg 前軸軸重730kg 後軸軸重540kg

いっぽう、ハイブリッドは燃費のいいガソリンより圧倒的に燃費が良く(それぞれ1時間の短い試乗で4割違った)、静かで、力がある。停止時はエンジンが止まっているので静かだし、振動もない。走り出しはモーターのみで駆動するので静かだ。エンジンが始動するシーンではロードノイズや風切り音にまぎれてしまうので、エンジンの存在が気にならない。ユーティリティの高さを優先して細かいことは気にしないと割り切るならガソリン、上質さもほしいならハイブリッドという選択だろうか。

燃費:WLTCモード 28.1km/ℓ  市街地モード28.5km/ℓ  郊外モード:29.9km/ℓ  高速道路:26.7km/ℓ

トヨタ・ヤリスクロス HYBRID G(e-Four)


全長×全幅×全高:4180mm×1765mm×1590mm


ホイールベース:2560mm


車重:1200kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式


駆動方式:FF


エンジン


形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ


型式:M15A-FXE


排気量:1490cc


ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm


圧縮比:ー


最高出力:91ps(67kW)/5500pm


最大トルク:120Nm/3800-4800rpm


燃料供給:PFI


燃料:レギュラー


燃料タンク:36ℓ


フロントモーター:1NM型交流同期モーター


最高出力:80ps(59kW)


最大トルク:141Nm


リヤモーター:1MM型交流誘導モーター


最高出力:5.3ps(3.9kW)


最大トルク:52Nm


燃費:WLTCモード 28.1km/ℓ


 市街地モード28.5km/ℓ


 郊外モード:29.9km/ℓ


 高速道路:26.7km/ℓ


車両本体価格:239万4000円


試乗車はオプション込み286万3945円

情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタ・ヤリスクロス | ガソリン(2WD)は車重が軽いこともあって軽快 ハイブリッドは圧倒的に燃費が良い。AWDの実力も侮れない