これまでの人生において、所有したり試乗したりした輸入車のなかからベスト3を業界人に選んでいただく本企画。ホンダの元開発責任者だった繁浩太郎さんは、最高の輸入車にフォルクスワーゲン・ビートルをチョイス。1930年代に開発されたクルマだというのに、その基本設計の秀逸さには驚かされたという。




TEXT●繁浩太郎(SHIGE Kotaro)

第3位:BMW M2クーペ(2016年-/F87型)

日本では、道路インフラや交通法規等の関係でクルマの動力性能を使い切る走りはできない。




そういう日本で人生最高のクルマとなると、普通は「走り」以外の理由での選別になるが、私にとって、BMW M2は日本でも「駆け抜ける喜び」を感じられる、人生最高のクルマだ。




まず、クワ〜ンという加速音が官能の極致。タイヤが丸く、クルマが走りたがっている感じ。ドライバーの気持ちをリニアに反映するステアフィール(高額なスポーツカーでも、その性能を主張するように切れすぎるモノが多い)。コーナリング時、カーブの接線方向に車体が正対するので、走り抜ける感覚を味わえるのだ。




こういうドライバーが感じる感覚的性能は、絶対的な性能より達成が難しい。M2は入念に造り込まれた最高のクルマだ。

第2位:MG MGB(1962年-)

私は40代で単身赴任をしたが、その時の相棒としてMGBを選び、古いクルマで屋根なしガレージだったにもかかわらず、8年程一緒に過ごした。




夏は、クーラーが無いので、強い日射の中でも幌を開けるしかなかった。夕立などが来ると、幌は閉めるしかなかったが。一方、冬はすきま風で凍えた。




一般的にイギリス車は錆びやすい、さらにオープンカーの雨ざらしは良くない、と言われるが、MGBは違った。




MGBの幌は、傘のようにガラスの外側までカバーしていたので、幌が破れない限り雨漏りは無かった。走行中もスピードが80km/h以下なら、雨は室内に入ってこなかった。ボディの錆びも私の保有期間中は進行しなかった。




走行性能は、板バネ、ローダウンということもありドタバタしたものだった。しかし、暑さ寒さから雨風に耐えることも含めて、クルマの原点を思い起こさせてくれる走りは楽しく最高だった。

第1位:フォルクスワーゲン・ビートル(1938年-)

約30年前、バリバリで新車開発の仕事をしていたが、古いクルマをレストアして乗るという価値観に感動して、ピカピカになった約20年落ちの1967年式のフォルクスワーゲン・ビートルを購入した。




CAL-LOOKを目指し、ラジオアンテナをルーフに着けたが感度が悪かった。取り付け時に室内側からギザギザのワッシャで締め付け、塗装を剥がしてアースする構造だったが、そのギザギザで塗装が剥がれていなかったのだ。それで、ドライバーで塗装を剥がしにかかったが、中々剥げない程の高密着度の塗装だった。一事が万事、すべてにわたって高品質だった。




小型軽量の空冷エンジン・ミッション、しっかりしたシャシーにデカタイヤの走行性能、広くてドラポジがしっかり取れるパッケージングの凄さ。全く基本設計と品質の高さに感動させられた、最高のクルマです。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【毎日更新・輸入車ベスト3(繁浩太郎編)】第1位:フォルクスワーゲン・ビートル/第2位:MG MGB/第3位:BMW M2クーペ