編集部の地下駐車場で対面したMAZDA2のボディカラーは、新色のポリメタルグレーメタリック。光の当たり方で表情を変えるなんとも言えないいい色だ。上の2枚の写真を見比べればずいぶんとニュアンスが違うことがわかるだろう。
MAZDA2に改名したときに変更された、凝ったデザインのフロントグリルも「ちょっと高級な感じ」の醸成に貢献している。とはいえ、もともとのプロポーションの良さがこのクルマが古くさくならない理由だろう。
全長4065mm×は、このクラス(ヤリスが3940mm、フィットが3995mm)としては、やや長い。その長い分をデザイン代に使っているわけだ。
ドアを開けて室内を見ると、おしゃれで上質なシートが目に飛び込んでくる。白(といっても、オフホワイト)のシートのおかげで内装が明るい。グレーのインパネデコレーションパネル(これもグランリュクスが貼ってある)も相まって、「仕事に使うクルマ感」はゼロ。このクルマのオーナーになったら、毎日ドアを開けて乗り込むときにうれしさを感じるだろう。ここ数年のマツダは、内装の作り方が上手い。
いつものようにドライビングポジションをとる。マツダはどのモデルに乗ってもポジションがとりやすい。とにかく、すべてがあるべきところにちゃんと配置されているのがいい。今回の試乗車にはコンバイナー式のヘッドアップディスプレイ(HUD)が標準装備されていたが、HUDの表示、タコメーター、アクセル&ブレーキペダル、ステアリングホイールのセンターが一直線になっている。当たり前のようだが、いろいろなクルマに乗せていただく機会があると、それが当たり前ではないことがわかる。ここは、マツダの美点だ。
ついでに言うと、ここのところのマツダのクルマはオーディオの音がいい。CDスロットがあるクルマに乗るときにはお気に入りの一枚を持ち込んで素人なりの試聴をすることにしている。
MAZDA2もこのクラスとしてはとてもオーディオの音がいい。音のバランスを調整してジェフ・ベックのアルバムを聴いたのだが、やや高音がキンキン、ザラッとした(イコライザーで高音を押さえてみたけれど)のが気になったけれど、クラス標準は充分にクリアしている。
室内の静粛性も高かったから、音楽を楽しむことができた。
なぜ、静粛性が高いのか。90km/h巡航時のエンジン回転数は約1600rpm、100km/hで約1750rpmと低いのだ。そう、今回のホワイトコンフォートはディーゼルエンジン搭載モデルだったのだ(いまさら言うなという話だが)。
前回、試乗したMAZDA2は1.5ℓガソリンエンジン(SKYACTIV-G1.5)搭載モデルだった。G1.5の100km/h巡航時のエンジン回転数は約2050rpmだったから、巡航時の静粛性はディーゼルの方が優れている。
では、ディーゼルとガソリン、どちらを選ぶべきか?
定評のあるマツダのディーゼルエンジン、SKYACTIV-Dのボトムラインを支えるのが1.5ℓ直4ディーゼルターボのD1.5である。最大トルク250Nmというのは、このクラスでライバルを圧倒できる数値だ。
地下駐車でMAZDA2のキーを渡されてエンジン始動して走り出したときは、ディーゼルらしい振動や音を感じなくてガソリンエンジン車かと錯覚してしまった。目の前のタコメーターを見ると、5000rpmからゼブラ、5500rpmからレッドゾーンとなっている。ディーゼルにしてはよく回るエンジンなのだ。前日まで乗っていたCX-3の1.5ℓガソリンエンジンモデルのそれは、ゼブラが6500rpm、レッドが7000rpmだからもちろん、ガソリンの方が高回転まできれいに回るのだが、1000rpmしか差がないのには驚く。
SKYACTIV-D1.5は相変わらずとてもいいエンジンだった。高速道路での追い越しも右足にちょっとだけ力を入れればいい。一回、このフィーリングを味わってしまったら、「ああ、やっぱりディーゼルはいいな」と思う。
SKYACTIV-Dは、D1.5、D1.8、D2.2の3機種がある。現在、D1.5を積むのはMAZDA2だけだ。D1.8は、D1.5の代替の役割がある。この場合の排気量+300cc(正確には258cc)は、出力ではなく排ガス対策に使われている。
となると、いつかわからないが次期MAZDA2には、ディーゼルエンジン搭載車がなくなってしまうかもしれない。コンパクトカークラスで1.8ℓディーゼルというのは、税制面(販売面)で不利になるから、なかなか載せにくい。将来的にはMAZDA2はガソリンエンジン+電動化技術(欧州仕様のガソリンモデルは24VのM-Hybridが採用されている)で対応するはずだ。だから、いまあえてディーゼルを選んでおくのも、アリかもしれない。
ちなみに、今回190kmほど走った燃費は21.0km/ℓだった。デミオ時代に800km走った際の燃費も20.9km/ℓだった。モード燃費は
WTLCモード燃費:21.6km/ℓ
市街地モード18.1km/ℓ
郊外モード21.3km/ℓ
高速道路モード23.8km/ℓ
だから、ほぼWLTCモードの燃費性能があると言っていい。
一方のガソリンエンジンは、前回、G1.5を400kmドライブした際の燃費は17.9km/ℓだった。こちらのモード燃費は
WTLCモード燃費:19.0km/ℓ
市街地モード15.2km/ℓ
郊外モード19.4km/ℓ
高速道路モード20.9km/ℓ
ガソリンエンジン搭載の15S White Comfort(FF)の価格は216万6700円だから、G1.5とD.15の価格差は32万4500円にもなる。
この価格差は燃料代では埋め切れない。ディーゼルのトルキーな走りに抗いがたい魅力を感じ、そして年間、相当な長距離を走るユーザーはD1.5を選ぶ価値はあるが、そうでないならガソリンエンジン車を選ぶ方がいい。30万円あれば、楽しい旅行、おいしい食事にたっぷり使える。
燃費だけを考えれば、いま新型トヨタ・ヤリスハイブリッドに勝てるモデルは存在しない。ヤリス・ハイブリッドの最上級グレードZ(FF)の価格は229万5000円だ。
最近試乗したヤリスZ(コンベのガソリン仕様)の車両価格は192万6000円だったが、MAZDA2 ホワイトコンフォートと同程度の装備にしようとオプションをつけていけば、価格はほぼ同程度だろう(ヤリスZの広報車は、HUD/ブラインドスポットモニター/パノラミックビューモニター/合成皮革+ツイード調ファブリック/AppleCarPlay+Android Autoなどのオプションがついて254万2000円だった)。
だから、MAZDA2の15S White Comfort(FF)の216万6700円という価格は充分競争力がある。
ヤリスの1.5ℓ+CVTモデルで同じコースを走った際の燃費が18.4km/ℓだったから、MAZDA2のG1.5は、ヤリスのエンジン車に勝てないまでも燃費では近い線まではいけるはず。
マツダMAZDA2 XD White Comfort
全長×全幅×全高:4065mm×1695mm×1525mm
ホイールベース:2570mm
車重:1150kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:S5-DPTS(SKYACTIV-D1.5)型
排気量:1498cc
ボア×ストローク:76.0mm×82.6mm
圧縮比:14.8
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:250Nm/1500-2500rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:44ℓ
駆動方式:FF
WTLCモード燃費:21.6km/ℓ
市街地モード18.1km/ℓ
郊外モード21.3km/ℓ
高速道路モード23.8km/ℓ
車両価格○249万1500円