TEXT●青山尚暉(AOYAMA Naoki)
わが家は結婚して子供ができて、それまで乗っていたフェアレディ280Zを手放し、84年型VWゴルフIIに乗り換えた。以来、BMW325i、マセラティ・ビトゥルボ、メルセデスベンツEクラスに乗り継いだ後は、犬たちとの暮らしを優先し、国産ワゴン、国産ミニバン、そして今はVWゴルフ7ヴァリアントに乗っている。わが家としてはゴルフに始まり、そしてゴルフに戻ったというわけだ。
ヴァリアント購入時、GTIと迷ったものの、犬たちの意見に押され、ヴァリアントになった経緯があるけれど、ゴルフファンとしてはGTIに乗らずに終われるか!!というのが本音。Rは過剰すぎで、GTIの実用的な元祖ホットハッチというところが決め手だ。歳をとると、大きなクルマを転がすのがおっくうになることもある。そうそう、かつて、徳大寺有恒さんも、最後の愛車はゴルフGTIと、おっしゃっていたように記憶する。
犬と暮らしている人なら分かるかもしれないが、愛犬を乗せるには、乗せ場所のバリエイションに自由度のあるワゴンが適切。それも、10年から15年でしかない犬生、寿命の犬たちに1回でも多くの家族とのドライブ旅行の思い出を作ってあげるには、季節、天候、路面を問わないクルマがいい。悪天候だから、雪が積もっているからと言って、楽しみにしているドライブ旅行をあきらめたくはない。
そこで、ドッグフレンドリー度極まるボルボエステート(ワゴン)のV60をベースに、AWD、クロスオーバー化したクロスカントリーが真っ先に候補に上がる。「T5 AWD Pro」グレードなら、前席マッサージ機能もあり、ジジイでも快適に心地よく移動できるに違いないのである。世界最先端の先進安全装備も、頼りになる。その電動車、マイルドHV、あるいはPHVが登場すれば、個人的には愛犬とドライブするのに最高、完璧な1台となる。
80-90年代、輸入車を多く扱う自動車専門誌で仕事をしていたことがあり、空冷911(964)などを試乗する機会も多かったのだが、当時から、イタリアンスーパーカーより911のほうが自身の肌に合っていたように思う。生粋のスポーツカーでもどこか、堅実なオーラ!?を発散していたからかもしれない。クルマ好きで愛犬家の友人は、犬のためにあえてパナメーラを選択しているが、なあに、国産ワゴンとの2台持ちなら、昭和のクルマ好きの合言葉、”男は黙って”911でもよかろう。
華美さのない整然としたコクピット、高性能スポーツカーにして、運転疲れのない乗り味や扱いやすさも、人生最後のクルマ遍歴、贅沢として相応しいのではないか。911は若者ではなく、渋くカッコいいジジイが乗ったほうが似合う...そんな記事を、若いころ、書いた記憶がある。それをこの先、かなえることができれば、幸せである。
■青山尚暉(あおやま・なおき)
モータージャーナリスト/ドッグライフプロデューサー/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員 自動車専門誌の編集を経てフリーに。新車の試乗レポートのほか、小学館PETomorrowなどで愛犬との幸せなライフスタイル、クルマ旅を提案。国産、輸入車を20台以上乗り継ぐ。
人生で、あとどれだけクルマに乗れるだろうか。一度きりの人生ならば、好きなクルマのアクセルを全開にしてから死にたいもの。ということで、『乗らずに後悔したくない! 人生最後に乗るならこの3台』と題して、現行モデルのなかから3台を、これから毎日、自動車評論家・業界関係者の方々に選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)